世界で一番欲しいモノ |
「えぇ!?リナさんナイトメアを見たんですか?どーして捕まえてくれなかったんです?こっちは大変だったんですよ!」 行き着けの喫茶店でコーヒーと大量のケーキを食べる少女に、大きな声で文句を言う少女。 「うぐ?うんがふぉこいふぁっふぇ、ふぃふぇらふぇたんだかふぁしふぁたないでしょ!」 「リナ、食べながら喋るのは止めてくれないか。何を言っているのか分からん。」 既に30個目のケーキを食べている少女リナに、ウンザリした顔で話し掛ける青年。 「だから、逃げられたんだから仕方無いでしょって言ってんのよ!良いじゃない、取り合えず宝石は無事だったんだから。」 「でも顔は見たんですよね?」 「勿論!だからモンタージュに協力したでしょ、でもモンタージュ写真にバッチシドンピシャってのが無かったんだから仕方無いじゃない。それにあんた達にも特徴を話したけどちゃんと描けなかったんでしょ、似顔絵?」 「・・・・・・・あぁ、それにしてもナイトメアってのは良く分からない奴だな。」 紅茶を一口啜り溜息を吐く青年、ゼルガディスとその隣で同じく溜息を吐くアメリア。二人は刑事であり、リナの友達でもある。 「本当ですよ、わざわざ盗んだ物を返したり、そうかと思うとあんまり高価じゃない物盗んだり、そうかと言えば宝石店の宝石を全部盗んでそのままだったり、全く手口がバラバラなんですよね。」 「うーん、それなんだけどね、あたしはあいつのマネしてる奴が居るんじゃないかって思ってんのよ。だから余計に分かんなくなんのよね。もう、本物なら本物ってプラカードでもぶら下げてれば良いのに!」 「・・・・・・・・・それもちょっと」 リナの本気とも取れるセリフに思わず苦笑いを浮かべるアメリアだった。 「模倣犯か、それは俺も考えてた所だ。しかし、多分オリジナルのナイトメアはリナが会った奴だろうな。」 「確かにね、あたしもそう思うわ。」 「どうしてですか?」 ゼルガディスとリナの話にアメリアは首を傾げながら問い掛けると、ゼルガディスが優しく微笑みながら答える。 「ナイトメアが世間で騒がれる前からの手口が、リナの会った奴と同じだからさ。」 「あぁ、成る程!流石ゼルガディスさん!でも、それもマネをしてる人も居るんじゃないですか?」 「そうね、アメリアの言う通りそこまでマネする奴は居るかもしれないからあいつがオリジナルとは断定出来ないのよ。でも・・・」 ピコピコと手にしたフォークでアメリアを指しながら話をするリナが、言葉を区切る。 「「でも?」」 ゼルガディスとアメリア、二人がリナの次の言葉を待ち侘びていると、リナはスックと立ち上がり力拳を作って力を込めて言い切った。 「アレはオリジナルのナイトメアに違いないのよ、これは女のカンよ!!間違いないわ!ん?どったのゼル、アメリア?机なんかに突っ伏して?」 「・・・・・・・・あ・・あのなぁ。」 「ははは、・・・・・流石リナさんですね。」 ゼルガディスはスッと席を立つとそのままレジに向かった。 「はぁ・・・これは依頼料代わりに俺が奢ってやる。ナイトメアはあんたに任せるよ。行くぞアメリア。」 「あ、はい!じゃあリナさんよろしくお願いします。」 こうして二人は店を後にした。 「何よ何よ、二人共!!警察が不甲斐無いからあたしが協力してあげてるんじゃない!絶対捕まえてやるんだからね、覚悟するのよナイトメア!!」 こうしてリナとナイトメアの壮絶な戦いが始まるのだった。 「あー!寒い寒い寒い寒い寒い!何でこんなに寒いのよ!」 そろそろナイトメアが動き出すと考えたリナは、次にナイトメアが狙いそうな宝石の展示されている美術館の茂みに隠れていた。 「警察なら中でヌクヌクと警備出来るのに、探偵のあたしじゃそこまで権利が無いのよね。早くこないかなナイトメア・・・寒いよぉ!」 「ほい、肉まんと熱いお茶。」 リナの頭上から降りてきたのは、コンビニの袋。その中には、アツアツの肉まんが5個と温かいお茶が入っていた。 「うわあぁ〜〜〜〜!ありがとう!!ちょうどお腹がすいてたのよ、助かるわ。いただきまーす!」 ホフホフとアツアツの肉まんを頬張るリナ、その上からクスクスと笑い声が聞こえてくる。 「美味いか?」 「うん、もう最高!はぁ〜生き返るわ。ありがとうゼ・・・・・・・な、なななな、ナイトメアぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」 上を見上げてお礼を言おうとしたリナが見た人物は、今まで待ち望んでいたナイトメア本人だった。 「よっ!」 「よっ!じゃ無いわよ!?何でこんな所にあんたが居るのよ?」 お気楽な挨拶を交わすナイトメアにリナが思わず問い掛けると、ナイトメアはニッコリと微笑み陽気な口調で答えた。 「何でって、そりゃあ宝石を盗む為だけど。リナこそこんな寒い所で何してんだ?行き倒れか?」 ナイトメアの言葉が終わると同時に、スリッパがナイトメアの頭にスパコーンとヒットした。 「いってぇ〜!リナ、そのスリッパどっから出した!?」 「乙女の秘密よ!誰が行き倒れですって?あたしはあんたが次に狙いそうなここを張り込んでたのよ!」 「そっかぁ〜、俺を待っててくれたんだ♪じゃあお姫様を待たせたお詫びに飯奢ってやるよ。行こうぜリナv」 ナイトメアは嬉しそうにニコニコ笑い、リナの腕を掴むと歩き始めた。 「ちょ・・・ちょっと?何考えてんのよ?それよりあんた盗みはどうしたのよぉ!?」 リナの言葉に、ナイトメアは一瞬首を傾げてから思い出したようにポケットから何かを取り出した。 「リナの言ってんのってこれの事だろ?」 「あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!あんた何時の間に!?」 ナイトメアの手に在ったのは、リナが守っている筈の宝石だった。 「これで問題無いよな?じゃあ行こうぜ。」 「こ・・・コラァ〜!!全然問題あるでしょうがぁ!?ちょっとナイトメア、 放しなさいってばぁ!!!!」 ズルズルと引き摺られてリナはナイトメアと現場を後にした、リナの絶叫だけがその場に木霊していた。 続く |