世界で一番欲しいモノ

















 「何だ、大した事無いな。」
 ビルの屋上で余裕の笑みを浮かべる一人の男、彼こそが今世間を騒がせている『ナイトメア』誰も正体を知らない怪盗だった。その場にドカリと腰を降ろし、今盗んできた宝石を月に照らす。
 「これもハズレか、それにしても警察も大した事無いなぁ。」
 「そうよね、こんな逃げてくださいって場所に一人もいないんじゃあね。
  あ、コーヒー飲む?」
 「サンキュー。」
 ナイトメアは差し出された水筒のカップを取り、アツアツのコーヒーを一口飲み思わず笑みを浮かべた。
 「これ美味いな・・・・・・・・・・・・・」
 そこで彼は初めて気付いた、ここには誰も居ない筈なのにと。
 「そう、ありがと。じゃあついでに捕まってもらおうかしら?」
 慌てて立ち上がり謎の人物に対峙するナイトメア、謎の人物はゆっくりと立ち上がるとビシッと彼を指差した。
 「フフフ、待ってたわよナイトメア。神妙にお縄を頂戴しなさい!!」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前さん何時の時代の人間だ?」
 目の前に立つ人物に思わず突っ込みを入れるナイトメアに、謎の人物は少し照れながらも口上を続けた。
 「えぇいやかましい、あんたの悪行もこれまでよ!フフ、覚悟するのね。」
 ナイトメアの前に立つのは一人の少女、栗色のフワフワした柔かそうな長髪に炎の様に燃える赤く大きな瞳、可愛い部類に入るがどう見ても中学生にしか見えない。
 そんな幼い少女が自分を捕まえようと啖呵を切っている、そんな少女にナイトメアは興味を持った。
 「随分威勢の良いガキだな、でも子供がこんな時間にウロウロするのは関心しないなぁ。お兄さんが家まで送ってやろうか?」
 「誰が子供じゃ!!!あたしの名前はリナ=インバース名探偵よ!」
 「な〜んか聞いた事あるセリフだな?」
 リナはナイトメアの突っ込みに思い切り地団駄をした。
 「うっさいよ!あたしはね、唯一警察から拳銃所持を認められた探偵なんだからね!!」
 「それもどっかで聞いた事あるような?」
 「だぁ〜!男が細かい事を気にすんじゃないわよ!!兎に角、あたしはあんたを掴まえる。覚悟しなさい!」
 ナイトメアは頭をポリポリ掻きながら口を開いた。
 「今度はじっちゃんの名に掛けてなんて言わないよな?」
 「ざーんねんでした、あたしの家は代々お店屋さんなのよ。さぁ、盗んだ物を返しなさい。」
 ビシッと指差しカッコ良く決めたリナだったが、ナイトメアから返って来た答えに思わずズッコケてしまった。
 「良いぞ。」
 「あ・・・・・・あんたねぇ、何あっけらかんと言ってんのよ?こーゆー場面では普通『馬鹿な事を、取り返せるものなら取り返してみろ』って言うもんでしょうが!?何アッサリ良いぞって言う訳?」
 「だってお前さんが返せって言ったろ?だから良いぞって答えただけだぞ。」
 キョトンとした顔で答えるナイトメア。
因みに彼は顔を隠していない。綺麗な金髪の長い髪、空のような青い瞳、整っ
た顔立ち。そんな彼が小首を傾げる姿は大の男のくせに可愛らしい。
 「胸張って言うんじゃない!!そう言えばあんた盗んだ宝石をすぐに持ち主に返してるのよね?何で?そんな面倒な事するなら最初から盗む必要無いんじゃないの?」
 「探してる物と違うからかな。」
 ニッコリと微笑むその顔はとても綺麗で、思わずリナはナイトメアに見惚れてしまった。
 「って訳で、これ返すな。じゃあリナ、又会おうぜ。」
 言うが早いかナイトメアはリナに宝石を手渡しすると、屋上から飛び降りた。
 「あぁ!何してんのよぉ!!ここは3階って・・・・ば・・・バルーン!?」
 バルーンに捕まって天高く上っていくナイトメア、一瞬固まったもののすぐに我に返ったリナは拳銃を取り出しバルーンに向けて何発か打つと、バルーンに命中したらしい。
 「おわあああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 間抜けな雄たけびを上げて凄い勢いでナイトメアは姿を消したのだった。
 「チッ、逃げられたか。」
 半分は自分の所為なのを棚に上げ、悔しがるリナの姿がそこにあった。





続く