compromise heart
























 コンコン、ガウリイがベッドで寝そべりながら考え事をしていると、突然ノックの音が聞こえてきた。
 「どうぞ。」
 ドアをノックする音にガウリイが返事をすると、入って来たのはカルリアーナだった。
 「どうしたんだカール、今日は疲れてるから早く寝るって言ってなかったか?」
 ガウリイの問い掛けに、カルリアーナは何時もの明るい笑顔で口を開く。
 「うん、でもお礼が言いたくてね。ガウちゃんには色々迷惑かけちゃってごめんね、私の我侭に付き合ってくれてありがとう。」
 「何言ってんだ、困った時はお互い様だろ。」
 カルリアーナの少し照れた謝罪に対し、ガウリイも何時もののほほんとした感じで返事を返すと、カルリアーナが躊躇しながら質問をしてきた。
 「あの賭けだけど、結局引き分けになっちゃたわね。・・・・・・ガウちゃんはどうする?お子ちゃまに告白するの?」
 意外な質問にガウリイが驚いた顔をすると、カルリアーナは失笑を浮かべてこう言った。
 「私は・・・告白しようと思ってるの、今回の事で彼の存在の大きさを思い知らされたわ。もう、ライルの時みたいな後悔はしたくない。あなたに言った言葉、私も実行する事に決めたわ。」
 「え〜と、あぁ!追い掛けるんだろ、嫌われても嫌がられても相手を振り向かせるまでって奴か!でもどうして引き分けなんだ?あの賭けはあんたの勝ちだろ、式が終わる前にリナが来たんだから?」
 ガウリイの疑問に、カルリアーナは笑いを堪えながらその問いに答えた。
 「ヤダ、覚えてないの。私の賭けは式が始まる前にあなたの大切なお子ちゃまが来たら私の勝ち、もし式が終わってから来たらあなたの勝ちって言ったのよ。でも彼女達が現れたのは式の真っ最中、つまり、式の前でも式の後でもないって事。だから引き分けよ、分かった?」
 「良く分からん、まぁ俺も今回の事でリナに告白する気だったから良いけどな。」
 ニッコリ笑い答えるガウリイに、今度はカルリアーナが驚きの表情を浮かべた。
 「あなたも決めてたの?何だ、じゃあ最初から賭けなんて詰まんない事しなきゃ良かったわ。それにしても、あなたの大切なお子ちゃまには本当に驚いたわよ。」
 楽しそうに笑うカルリアーナに、ガウリイもニッコリ笑いながら答える。
 「凄いそっくりだろ、リナとゼリアス。俺も最初にゼリアス見た時は驚いたけどな。」
 「それもだけど、噂には聞いてたけど・・・あれ程度胸が据わってるお子ちゃまだとは思いもしなかったわ。それから、実は彼女が既にガウちゃんの事、男として見てたなんて事も知らなかったわ。」
 カルリアーナの予想外な言葉に、思わずガウリイは顔を真っ赤に染めた。
 「な・・・何だよそれ?リナが俺を男として見てるなんて、どうしてあんたが分かるんだ?」
 「見れば分かるじゃない、って言いたい所だけど、皆に聞いたのよ。こっちに来る時の彼女の荒れ様は凄かったらしいわよ、特に私に対しての怒りは凄かったってジーマが言ってたわ。」
 クスクスと笑うカルリアーナに、ガウリイは小首を傾げる。
 (何でリナがカールの事を怒らなくちゃいけないんだ?)
 ガウリイの考えている事を見抜いたのか、カルリアーナが何とか笑いを堪えて口を開いた。
 「彼女が怒ったのは私とあなたが二人きりで出掛けたからよ。可愛いヤキモチじゃないの、本当にガウちゃん鈍いわね。」
 「や・・・ヤキモチ?リナが?・・・・・・・・・まさかぁ〜」
 信じようとしないガウリイに、カルリアーナはガウリイの隣に腰掛ける。そして、彼の耳元で囁きかけた。
 「今までリナっちを見てて、思い当たらない?」
 カルリアーナの言葉に、ガウリイはこれまでのリナとの旅を思い返していた。普段リナからクラゲ頭だの頭にヨーグルトが詰まっているだの散々貶されるガウリイだが、リナの関係した事に関しては忘れずに覚えている。
 そしてリナの態度を思い出す内に、ガウリイの顔がどんどん赤く染まっていく。
 「・・・・・・・・・・・・・・おいおい、マジかよ?」
 頭を掻きながら呟くガウリイに、カルリアーナがスッと立ち上がる。それを見てガウリイが口を開いた。
 「戻るのか?」
 「えぇ、あなたと話してたら私も彼に会いたくなっちゃった。それじゃあ明日ね、結果期待してるわよ。」
 ウインクをして部屋から出て行くカルリアーナを赤い顔のままガウリイは見送ったが、小さく溜息を吐くとベッドから立ち上がり、部屋を出て行った。


 「リナさんこの度はありがとうございました、あなた方にお会いしなければ私達はこうして結ばれる事はありませんでした。」
 リナの部屋にはゼリアスとファルリーアが尋ねて来ていた。
 「サンキュウリナ、あんたのおかげで俺達恋人になれたぜ。やっぱり人間素直が一番って事だよな。」
 それはそれは幸せそうな笑顔を浮かべる二人に、リナは正直あてられっ放しだった。
 「本当にリナさんにはご迷惑を掛けてしまった上に、大切な恋人を危ない目に遭わせて・・・何とお詫びをすれば良いのか分かりません。」
 「誰が恋人よぉ!?誰がぁ!!違うって言ってんでしょうがぁ!!!」
 ファルリーアの言葉にリナが顔をこれ以上無い位赤くして怒鳴ると、行き成りゼリアスがどこか楽しげな視線をリナに向けながら口を挟んできた。
 「まだそんな事言ってんのかよリナ?あんた俺達に言ったよな、本音でぶつかり合えって。どうして俺達にそう言い切ったあんたが本当の事をガウリイに言わないんだ?リナ、あんたにそっくりそのまんまあの言葉返してやるぜ。仮にもこのゼリアス=バルブス様と同じ顔してやがるんだから、ウジウジするんじゃねぇよ!」
 「・・・・・・・・・ゼリアス」
 何とも情けない表情をするリナに、ファルリーアがガウリイと同じ顔で優しく微笑んでリナに話し掛ける。
 「ゼリアスの言う通りですよリナさん、私達を結び付けてくれた張本人が自分の愛する人に対しては告白をする事を恐れるのは、私やゼリアスに失礼だと思いませんか?」
 「ファル・・・・・でも、ガウリイはあたしを子供としか見てないのよ」
 悲しそうにリナの赤い瞳が揺れる。しかし、ゼリアスはリナの顔を覗き込みキッパリ言い切る。
 「ガウリイが何だよ!ガウリイがどう思ってたってあんたに関係無いだろ?大切なのは自分の気持ち、そう俺に教えてくれたのは他でもないリナ、あんた自身だぜ。忘れちまったのか?」
 リナの肩に手を置き、笑顔を浮かべるゼリアスにリナは驚いた顔をしたが、すぐに何時もの明るい笑顔を浮かべた。
 「あ〜!!あたしとした事が、何ウジウジ悩んでたんだろー!?そうよ、あんた達の言う通り!あいつがあたしをどう思ってるかじゃなくて、あたしがあいつをどう思ってるかって事が大切なんじゃない!!あたしってバカね・・・人にはその答え出しといて、あたし自身がそれに気付いてないなんて。」
 「それでこそリナだぜ!」
 「頑張って下さいリナさん、きっとあなたなら上手く行きますよ。自分を信じてください。」
 それぞれ声援を送るゼリアスとファルリーアに、リナは自信に満ち溢れた笑顔で力強く頷いた。
 「あたし、今からガウリイの所に行って来るわ!・・・・・ありがとうゼリアス、ファル。あんた達の結婚式には絶対呼んでよね、ガウリイと二人でお祝いに来るわ!」
 「勿論、あんた達の結婚式にもちゃんと呼べよ!ガウリイに花嫁衣裳着せてやるぜ!!」
 ゼリアスの言葉に部屋から出かけたリナが立ち止まり、満面の笑顔で言い返した。
 「バカ言ってんじゃないわよ!花嫁衣裳はあたしが着るんだからね!!」
 そしてリナは今度こそ部屋から姿を消した。


 「リナ!?」
 「ガウリイ!?」
 お互いの部屋へと続く通路の真ん中でガウリイとリナはバッタリ鉢合わせた、二人の視線が絡み合った瞬間、二人は同時に顔を赤くしてあさっての方向に向いてしまう。
 「ど・・・どうしたのよガウリイ、こんな時間に?」
 「り・・・・・・リナこそ、何慌ててたんだ?」
 「あ・・あたしは別に・・・・あのさぁ、ガウリイちょっと話があるんだけど・・・・・庭に行かない?」
 「そ・・・それは奇遇だな、俺も実はお前さんに話があったんだ。その・・・行くか、庭。」
 リナとガウリイはお互い引き攣った笑顔で、仲良く並んで庭へと向かった。
 互いの想いを胸に、今二人の運命がゆっくりと変わり始めようとしていた。







     つづく