compromise heart |
「何だ!?」 突然の事に慌てて背中の剣を構え、ファルリーアを庇うように彼女の前に立つゼリアス。 「・・・・・・・これは、狼?しかし・・・何とゆう大きさなんじゃ!?」 目の前に突然現れた黒いモノの正体に、同じく剣を構えながらも戸惑いを隠せないジーマ。四人の前に現れたのはかなり体が大きい黒い狼だった。 「敵・・・ですか?」 ファルリーアは黒い狼が何も仕掛けてこない事を疑問にしながら口を開いた、すると突然狼はリナに向かって飛び掛ってきた。 「クッ、ディル・ブランド!」 リナは唱えていた魔法を狼に向かって発動させるが、黒い狼はその攻撃をアッサリと避けてリナの背後に回る。すぐに振り返るリナの目の前に狼の顔が在った。 「えっ!?何時の間に、しまった避けられない!」 「リナ!」 「リナ殿!!」 ゼリアスとジーマがリナを助けようとして、動きを止めた。と言うより固まってしまったのだった。 「ちょ・・・ちょっと、擽ったい、な・・・何この狼?」 黒い狼はリナの上に覆い被さり、大きな舌でリナの顔をペロペロ舐めていた。 「・・・リナ殿、狼に知り合いでも居るのか?」 「居るわけ無いでしょうがぁ!!」 「否、リナの事だから・・・どんな知り合いが居ても不思議じゃ無いもんなぁ。」 頭を掻きながら答えるゼリアスに、ジーマもウンウンと頷く。 「リナさん・・・随分変わったお友達が居るんですね?」 「だからぁ〜違うって言ってるでしょうがぁ!!」 『ファーちゃん、私のこのメッセージを聞いてるって事はこの子と会えたのね。悪いけどこの子に解除の呪文掛けてくれる?じゃあヨロシクネ』 リナが叫んだと同時に、黒い狼から涼やかな女性の声が聞こえてきた。余りのギャップにリナは言葉を失い、残りの三人は別の意味で言葉を失っていた。 「姉様の・・・声」 「えええぇぇぇぇぇぇぇぇ!?じゃ・・じゃあ、この狼があんたのお姉さんなのぉ!?」 「・・・・・・・・・・・・・・・それは無い・・・と思う」 リナの疑問にゼリアスが自信なさげに答える。 「ファルリーア様、取り合えずこの狼に術を掛けてみてはいかがでしょうか?そうすればこの狼が言っている事が本当かどうか分かると思いますが。」 ジーマの言葉にやっと落ち着いたのか、リナが溜息を吐く。 「そうね、敵の罠なら罠でそん時はそん時よ!やって頂戴ファル!」 リナに言われファルリーアは小さく頷くと狼の傍に近寄る、するとリナ程ではないが狼はファルリーアに尻尾を振って大人しく彼女を見詰めた。 「では、始めます。―――――――――」 ファルリーアが呪文を唱えると、目の前の黒い狼が黒い霧に姿を変え始める。 「これって、あの鳩と同じじゃない?」 リナの言葉にファルリーアは何も答えず呪文を続ける、すると黒い霧は見る見る内に何かの形に変わっていく。 「あ、あれ!剣じゃないか!?」 ゼリアスが声を上げる、そこには細身の剣が姿を現していた。それを見て思わずリナが大声を上げた。 「ブ・・・・・ブラスト・ソードぉ!!な・・何で?あの狼がブラスト・ソード!?何?どうして?どうなってんのよぉ?」 しかしジーマとゼリアスの二人はリナの言葉の方に驚いていた。 「ブラスト・ソードだって、あの伝説の剣の!」 「何と、ガウリイ殿はあの伝説の剣の持ち主であったのか!?」 そして二人はこう続ける。 「あのガウリイが!全然見えなかったけど・・・凄い剣士だったんだ。」 「ふーむ、あの脳味噌が皆無に等しいガウリイ殿がブラスト・ソードの継承者だったとは、世の中分からんものだ。」 (散々言われてるなぁガウリイ、これであいつが元光の剣の継承者だって言ったら二人とも卒倒する事間違いないわね) 頭をポリポリ掻くリナに、ファルリーアが頬に一筋の汗を流しながら尋ねてきた。 「あの〜、ガウリイさんってどうゆう方・・・何ですか?」 流石に自分と同じ顔の人物のとんでもない言われ様に、心配になってきたらしい。 「「「見れば分かる!」」」 「あ・・・はは、そうですか」 見事にハモル三人にファルリーアは乾いた笑いを浮かべるしかなかった。 「それよりも、あんたの姉さんって何者なのよ。こんな高度の術を使えるなんてマジでどんな人なの。」 「「「会えば分かる」」」 リナの問い掛けに、今度は溜息混じりに答える三人。 「あ・・・・そう、ま・・まぁ良いわ。つまりこれを持って結婚式場に来いって事よね。行くわよ!」 ブラスト・ソードを腕に抱えると、リナは勢い良く走り出した。それに続いて走り出すゼリアス、ファルリーア、ジーマ。 「それではこれより、ジャルアラン=デ=ラフィ=ガナンドとファルリーア=ライラ=ア=ジュアラールの結婚式を執り行います。」 礼拝堂の祭壇の前、花婿のジャルアランは純白だがレースやら何やらゴチャゴチャと纏わりつかせた衣装で立っている。その横には矢張り純白のウエディングドレスに身を包んだガウリイが椅子に腰掛けている。因みにガウリイが座っている椅子は、カルリアーナが病弱な妹の為に用意させたものである。 始終ニヤニヤしているジャルアランに対し、ガウリイは俯いたまま表情を硬くしていた。 (だぁ〜!ど〜して俺が男と結婚式をしなくちゃいけないんだぁ!!はぁ・・・勘弁してくれよ) ガウリイが思わず小さな溜息を吐くが、浮かれまくるジャルアランは気付きもしない。 しかし、二つの国の王族の結婚式だとゆうのに、この礼拝堂に居るのは主役である新郎新婦以外ではガナンド帝国国王とジュアラール国王、そして花嫁の姉カルリアーナと神父を務めるロイの他には一人も居ない。 「ジャルアラン=デ=ラフィ=ガナンド、汝はこの女性ファルリーア=ライラ=ア=ジュアラールを妻とし、健やかなる時も病める時も、これを愛し、一生を捧げる事をここに誓いますか?」 「誓います。」 即答で答えるジャルアラン、それに対しガウリイは表情を強張らせる。 「ファルリーア=ライラ=ア=ジュアラール、汝はこの男性ジャルアラン=デ=ラフィ=ガナンドを夫とし、健やかなる時も病める時も、これを愛し、一生を捧げる事をここに誓いますか?」 「―――――――っ!」 思わず言葉を詰まらせるガウリイ、それを期待した瞳で見詰めるジャルアラン。カルリアーナは隣に座る父親が心配なのか、ガウリイにまで気が回っていない。 (言えるかぁ!俺が愛してるのはリナだけなんだぞ!!・・・嘘でもこんな所で誓える訳無いじゃないかぁ!) 「どうされたのですかな、ファルリーア姫?顔色が宜しくないですぞ。さぁ・・・・お誓いなさいファルリーア姫様。」 ニヤリと笑いロイがもう一度、優しい口調でガウリイに語り掛ける。 「何をしてるんだファルリーア!僕は君に永遠の愛を誓ったんだぞ!君も好い加減に素直に僕の妻になれ!!」 思わずガウリイはカルリアーナを見る、すると彼女は小さく首を横に振った。 「さぁ・・・ファルリーア姫様、誓いなさい。あなたのお父上と姉上の為にも・・・ね」 耳元に聞こえる声にガウリイが思わず顔を上げる、何時の間にか気付かぬ内にロイがガウリイのすぐ傍に来ていた。 (何んだ、こいつ・・・・・・気配がしなかった?) 驚くガウリイ、しかし誰も何故ガウリイが驚いているのか気付く者は居なかった。 「もう一度言います、ファルリーア姫。永遠の愛を誓いなさ――――――――」 ロイの言葉が言い終わるか終わらないかとゆう時、礼拝堂の扉がバタンと大きな音を立てて開かれた。 つづく |