compromise heart

























 「さて、良く眠れましたかな。ファルリーア姫、カルリアーナ姫?」
 朝早く、ロイが二人の部屋を訪れた。カルリアーナはそんな彼に冷ややかな視線を送る。
 「えぇ、大変良く眠れましたわ。そろそろ朝食の準備かしら?」
 「はい、それは既に用意してこちらに運ばせて降ります。食事が済み次第、結婚式のご用意をよろしくお願いします。」
 わざとらしく深々とお辞儀をするとロイはそのまま部屋を出て行ってしまった。それと入れ替わりに朝食が運ばれる。
 「さ〜てと、じゃあガウちゃんいただきましょう。」
 メイド達を全員引き上がらせてから、カルリアーナはニッコリと微笑みパンを小さく千切って食べる。
 「・・・・・・・・・・・・・」
 ガウリイも食べてはいるものの表情が暗い。
 「何々ガウちゃん?そんな暗い顔して、ご飯が不味くなるじゃない。」
 カルリアーナの言葉に、ガウリイは溜息を吐く。
 「暗くもなるさ、だってよぉ・・・これよりもっと派手でピラピラしたドレス着るんだろ?男としては、そんなのは自分では着たくないぞ。」
 そして又深い溜息を吐くガウリイに、カルリアーナは楽しそうに笑う。
 「そうよねぇ〜、どうせなら今日来るあなたのお子ちゃまに着せたいんだもんね、ガウちゃんは。」
 ぶっ!と思わず口にしたミルクを吹き出すガウリイ、それを面白そうに見詰めカルリアーナが口を開く。
 「フフフ、顔真っ赤よ。本当に可愛いわね、ガウちゃんって。」
 「からかうのは止めてくれないか、こっちはこれから大変だってのに」
 ブツブツ言うガウリイに、カルリアーナは席を立ち傍に寄ると真剣な眼差しを向け口を開いた。
 「あなたの剣、ちょっと貸してくれる?」
 「おいおい、俺に素手で戦えってのか?」
 突然のカルリアーナの言葉に、ガウリイが驚きの声を上げる。それに対しカルリアーナは首を小さく横に振る。
 「そんな事言わないわよ、でも私もガウちゃんも剣を隠し持ってける?だからね、確実に手元に来る御呪いをかけて上げるのよ。」
 「・・・・・・・大切な剣だから、変な事しないでくれよ。」
 ウインクをして言うカルリアーナにガウリイが渋々ブラスト・ソードを手渡す。
 (リナが見付けてくれた大切な剣なんだけど・・・確かに隠して持ってけないもんなぁ)
 小さく溜息を吐くガウリイを横目に、カルリアーナは懐から紙を出し、そして何か呪文のようなものを書き始めた。
 「これで良し、久し振りに腕が鳴るわね。」
 書き終えた紙を剣の柄の部分に貼ると、カルリアーナは何かの呪文を唱え始めた。するとブラスト・ソードがゆっくりと黒い霧に覆われた。そしてその霧が徐々に固まり、一匹の黒い狼の姿が現れた。
 「でえぇぇぇ!?俺の剣がぁ!!カール!俺の剣どこに消えちまったんだぁ!折角リナが見付けてくれた俺の剣!?」
 慌てまくるガウリイに、カルリアーナはニコニコ笑いながら目の前の狼を指差す。
 「さぁ、良い子ね。今からママの言う事をちゃんと聞くのよ―――――――」
 カルリアーナは狼の頭を優しく撫でながら、一生懸命話し掛けている。それを唖然としたまま見詰めるガウリイ。
そして話を聞き終えた狼が、カルリアーナとガウリイの足に頬擦りをしてから壁を擦り抜けて外に出て行った。
 「いいいいいいいいい、今・・・狼、壁から出てったぞぉ!!」
 「大丈夫よ、それにしても凄く良い剣なのね、あんなにあの術を素直に聞く武器は初めてよ。とっても大切にしてるからあなたにも懐いてるし、これで何があってもあの子はあなたの元に返って来るわよ。フフフ、じゃあ次はガウちゃんの番ね。安心して良いわよ、あなたの大切なお子ちゃまが感動する位綺麗に仕上げてあげるからね。」
 意地悪な笑みを浮かべて近寄るカルリアーナに、ガウリイは思い切り顔を引き攣らせ後退りする。
 「やっぱり、嫌だぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
 逃げるガウリイの首根っこを掴むとカルリアーナは、楽しそうに微笑む。
 「私の腕を信じなさい、絶世の美女にしてあげる。」
 「うぅぅ〜〜〜リナぁ〜〜〜〜〜〜〜!!」
 情けない声を出しながらガウリイはリナの名を呼んでいた。


 早朝、リナ達はガナンド帝国の城の前に来ていた。
 「「「レビテーション」」」
 ジーマ以外の全員で城の様子を空から覗う。
 「兵士の数、少ないですね。」
 「まぁ、朝早いから普通よりは少ないだろうけど。」
 ファルリーアとゼリアスの言葉にリナがニヤリと笑う。
 「違うわ、あたし達を誘っているのよ。だから侵入しやすいようにわざと警備を手薄にしてるんだわ、降りるわよ。」
 三人がジーマの元に降り立つと、ジーマが心配そうに尋ねてきた。
 「どうであった?」
 リナはその言葉に肩を竦めながら口を開く。
 「どうもこうも、やっぱりご招待してくれてるみたいよ、あたし達を結婚式に。」
 「罠か?」
 ジーマの問い掛けに、リナは真剣な表情で答える。
 「多分ね、でもどうせご招待受けてるんなら行ってやりましょうよ。正面から堂々とね!」
 「しょ・・・正面から!?」
 リナの言葉にゼリアスが驚きの声を上げる。
 「な・・・!?正気かリナ殿?」
 「勿論正気よ、時間が無いの急ぐわよ!兵士の一人に結婚式の場所を聞きたいしね!」
 そう言ってリナは走り出した、慌てて後を追うファルリーアとゼリアスとジーマ。
 「なぁファルリーア、リナの様子おかしくないか?」
 ゼリアスがファルリーアに尋ねると、答えはジーマが返してくれた。
 「否、リナ殿の事だ。何か考えがあっての行動だろう。おかしく見えるのはガウリイ殿が心配なのであろう。」
 「・・・・・相手が誰でも、好きな人が自分以外の人との結婚式など見たくないものですものね」
 呟く様に言ったファルリーアの言葉は、他の三人に気付かれる事は無かった。

 「な・・・何者だ!?」
 門番が行き成り堂々と入ってくる四人に声を掛ける、するとリナは凄い迫力のある顔で門番に近付いた。
 「何者って失礼ね、今日の結婚式の招待客よ!命が欲しかったらキリキリ結婚式場を教えてもらいましょうか?」
 ガシッと門番の一人の胸倉を掴みながら尋ねるリナに、他の兵士達が戦闘体制に入るがそちらを完全に無視してリナは話を続ける。
 「な〜に?教える気がないんなら・・・・・これをお見舞いするだけよ。」
 言うが早いかリナの手に光の玉が生まれる。
 「ゲッ!ファイアー・ボール!?こ・・・この女正気じゃないぞ!」
 「さぁ・・・言いなさい、それとも言わないつもりかしら?」
 「リナさん・・・・・・・・・顔怖いです」
 ファルリーアの突っ込みも完全無視、流石にビビッたのか胸倉を掴まれた門番が怯えた表情で答えた。
 「い・・・・言うから助けてくれ!!この城の・・・南にある礼拝堂だ・・・・・っ!」
 聞くが早いかリナは手の平の光を空に解き放ちその場を走り去った、それに続く三人。その場に伏せた兵士達は、暫くしてから誰と無しにポツリと呟いた。
 「し・・・死ぬかと思った」

 「リナ、行き成りファイアー・ボールは酷くないか?」
 走りながらゼリアスがリナに尋ねると、リナは表情一つ変えずに言った。
 「何言ってんの、あれはライティングよ。」
 「え!あれがですか?何か凄く迫力あったから・・・・・」
 「バカね、こんな所でそんな大きな音がするものぶっ放す訳無いじゃない!それにしても何でこんなに無駄に広いのよこの城はぁ!!」
 確かにガナンド帝国の城だけあって、普通の城の三倍の大きさはゆうにある。
 「文句は後じゃ!早く行くぞ!」
 四人は全速力で庭を走り抜けるが、不思議と誰にも会わなかった。この城を守っている筈の兵士の姿も門の前以外いない。
 「変ですね、先刻は庭に少しは兵士の姿が居たのに?」
 「かえって大助かりよ!」
 (間に合って、ガウリイ!)
 「!?」
 突然リナが足を止め、頭上を見上げる。リナの行動を不信に思いその場に立ち止まる三人。そして突然、目の前に黒い影がフワリと降り立ったのだった。







    つづく