compromise heart
























 昼を過ぎた頃、リナ達一行は未だに馬車に揺られていた。
 「うむ、どう急いでも夜にしか着けぬな。果たして間に合うか?」
 ジーマが焦りを含んだ声で話し掛けてくる。
 「・・・・・・何とかギリギリでしょうね。多分、ガウリイ達がガナンドにつくのがお昼をかなり回る位。それからガウリイに結婚式の準備をしたりとかするなら、夕方か夜になった位まで掛かるわ。まぁ、あちらさんが慌ててたらギリギリアウトって所ね。逆に大掛かりな事を考えているのなら今日中に式はしないと思うわ。」
 リナの言葉に一瞬全員が息を呑む。
 「でも、只結婚式を挙げたいだけなのか、それとも結婚式は只の口実で・・・」
 「別の何かを行なおうとしている、ですねリナさん。」
 ファルリーアの言葉にリナは力強く頷き、ゼリアスとジャンに向き直る。
 「ゼリアス、ジャン、今の内に戦略を立てておきたいからあなた達が何を使えるか教えてくんない?」
 リナの問いにジャンは首を横に振る。
 「残念だけど、僕は魔法が使えないんだ。剣でどれだけ役に立てるか・・・・」
 「儂も魔法は使えぬぞリナ殿!」
 ジーマが苛立ちながら問いに答える。
 「俺はこのバスタードソードと精霊魔法だな。」
 ゼリアスの答えにリナが再び問い掛ける。
 「どんな魔法が使えるの?」
 「あぁ、アストラル・ヴァインとかエルメキア・ランスとか後は炎系かな。」
 「私は精霊魔法と白魔法を使えます。多分少しはお役に立てると思いますよ。」
 ニッコリ笑うファルリーアの答えにリナは大きく頷いた。
 「上等よ、兎に角ガナンド帝国に着いたらご飯食べて、それから情報を集めましょう。」
 「呑気に飯食ってる場合か!?」
 リナの提案にゼリアスが文句を言うと、リナは指をチッチッチと横に揺らして答える。
 「まだまだ甘いわねゼリアス君、腹が減っては戦が出来ぬって言うでしょ。いざ戦う時にお腹空いて満足に力が入らなかったら勝てるものも勝てないわ、それにね意外と食堂って所は情報を収集するには打って付けなのよ。」
 そこには何時ものリナの姿があった。


 昼を2時間位過ぎた時、ガウリイとカルリアーナはガナンド帝国に到着した。
 「お疲れ様です、姫様方。式は明朝に行ないますので今日はごゆっくりとお休みください。では、失礼します。」
 何故かロイに出迎えられ、カルリアーナとガウリイは客室へと案内された。
 「ふーん意外だったな?」
 ガウリイが部屋に入るとうーん、と背伸びをしながら呟く。何しろ今まで中腰で歩いていたのだからかなり辛かったのだろう。
 「あら何が?」
 「うーん、痛てて・・・あぁ、俺てっきり城に着いたらすぐ結婚かと思ってたんだけどさ。まさか明日の朝とは思わなかったぞ。」
 ガウリイの疑問にカルリアーナはクスクスと笑う、そして何時もの軽い口調で話を始める。
 「まだゲストが足りないんじゃないの?それにもし今日中に結婚式をするって言っても私がさせないわよ。だ〜って疲れちゃったんですもの。」
 備え付けの椅子に腰掛けるカルリアーナに、ガウリイが頬をポリポリ掻きながら尋ねる。
「なぁ・・・あんたひょっとして、何か知ってるんじゃないのか?」
 ガウリイの鋭い質問に、カルリアーナは唇に人差し指を添えてこう言った。
 「秘密よ秘密、教えられないわ。」
 「どうして?」
 その問い掛けにカルリアーナはウインクをすると笑顔で言った。
 「あなたが優しすぎるからよ、さてと・・・随分と静かね。」
 「あぁ、殆ど人の気配はしないな。城ってこんなに人が居ないもんなのか?」
 ガウリイの問いにカルリアーナは肩を竦める。
 「さ〜あ?そのお城にもよるんじゃないの?ここの王様人気無いから皆お暇を貰ったとか、それとも―――――――」
 「父様が極度の人嫌いだからだよ。」
 突然扉を開け入って来ながら話し掛けてきたのはジャルアランだった。
 「あらあら、ここの王族は教育が行き届いていないのかしら?レディーの部屋にノックも無しに入ってくるなんて。」
 「僕はファルリーアの夫だよ、妻の部屋に堂々と入って何故いけないんい姉上?」
 ニヤニヤ笑いながら尋ねるジャルアランに、カルリアーナは冷笑を浮かべキッパリと答えた。
 「随分気の早い王子様ね、式は明日の筈ですよ。それまで妹姫はあなたの妻でも何でもない筈です。」
 ジャルアランはクッと笑うと、何時の間にか椅子に腰掛け彼に背を向けるガウリイに優しく話し掛ける。
 「ファルリーア、君の姉上は随分妹思いだね。でも君も僕と一緒になったら姉離れをしないといけないよ、では明日。」
 ジャルアランが出て行ってから、ガウリイは呟いた。
 「あいつ・・・気配を隠してか?」
 「いいえ、それだけこの城には怪しげな気配が充満しているって事じゃない。」
 確かにこれだけ瘴気が漂っていては、流石のガウリイも気配を読み取るのは難しい。
 「只の人嫌いだけじゃなさそうね」
 カルリアーナの呟きにガウリイは小さく頷いた。
 「でも・・・今動くのは得策じゃないな。」
 「えぇ、全ては明日・・・・・・・決着を付けてやるわ」
 彼女のエメラルドの瞳にはハッキリと怒りの色を映し出していた。


 「・・・・・・・・・・・・・・何これ?」
 夜、思ったより早く着いたリナ達は街を見て言葉を失ってしまった。
 「酷い!」
 リナとファルリーアが思わず言葉を漏らす、そこには餓えに苦しむ街の住人の姿があった。
 人の姿はあるものの、ゴーストタウンと言う言葉が似合いそうな街だった。街のあちこちに餓えに絶えられなかった人々の屍が転がっている。
 「・・・・・・・・・知らなかった」
 ボソリと呟くジーマに、リナが尋ねる。
 「一度も来たこと無いの?」
 「・・・・うむ、ガナンド王が嫌がりましてな。しかし・・・こんな事なら早く訪れておくべきでした・・・・・・」
 血が出そうな程拳を握り締め、言葉に詰まるジーマにファルリーアが優しく声を掛ける。
 「あなただけの所為ではありません、余り自分を責めないでジーマ。でも・・・この様子では街の人にお城の情報を聞く事は無理ですね。・・・ジャン、お願いがあります。」
 「はい、何でしょう?」
 ファルリーアの言葉に表情を強張らせながらジャンが返事をする。
 「今からジュアラールに戻って出来るだけ食糧をここに運んでください、頼みましたよ。」
 「え!?・・・・・・あ、はい!」
 ジャンは頷くと馬車に掛けよりそのまま来た道を走り去っていった。
 「これで宜しかったかしらリナさん?」
 「え!?」
 行き成りファルリーアに話し掛けられ、リナは驚きの声を上げた。
 (気付いてたんだ、流石は姫様ね)
 「何が?」
 それに問い掛けたのはゼリアスだった、何が何だか分かっていないらしい。
 「つまり、ジャンには悪いけど足手纏いになるって事よ。ガナンドにどれだけの敵が居るかは知らないけど、危険な事は確かよ。ジーマさんは魔法が使えなくても剣の腕と経験がある。ゼリアスは剣の経験は少ないだろうけど、それを補う魔法が使える。ファルリーアは白魔法で傷付いた味方の援護が出来るわ。でも、ジャンはまだ若いし魔法も使えない。だけど、彼を守りながら戦うのは難しい。出来れば無駄な犠牲を出したくないのよ、それよりジャンにはこの街の人達を助ける任務に着いてもらう。自分でもファルの言う意味が分かったからジャンも素直に彼女の指示に従ったのよ。」
 「・・・・・・・・・・」
 リナの言葉にゼリアスは俯く、自分ももし魔法が使えなかったらジャンと同じく帰されたかもしれないとゆう思いが胸に過ぎっているのだろう。
 「あれは、姉様の鳩」
 夜なのにも関わらず一羽の鳩がファルリーアの肩に止まる、彼女は以前と同様に呪文を唱えると鳩は一枚の紙になった。
 「リナさん、結婚式は明日の朝だそうです。どうなさいますか?」
 ファルリーアの問いにリナはニッコリ笑って答える。
 「今日は少し情報を収集してからどこかで休みましょう。」
 「そんな呑気な事でいいのかよ?」
 「何時襲われるか分からぬのに、休めと言うのか!」
 ゼリアスとジーマの質問に、リナはウインクしながら言った。
 「大丈夫よ、襲われる心配は多分無いから。情報も別にどんな些細な事でも構わないしね。」
 まだ納得がいかないとゆう感じの二人に声を掛けたのはファルリーアだった。
 「今はリナさんを信じましょう、きっと何か考えがあっての事だと思いますから。」
 ファルリーアの言葉に納得したのか、それから皆で見つけた今は使われていないの倉庫に集合する形でリナ、ゼリアスとファルリーア、そしてジーマがそれぞれ街に姿を消した。
 (ひょっとすると、今回の件・・・あたし達の考えは根本的に間違ってたのかもしれない)
 一人リナは考えていた。







     つづく