Next to you


〜中編〜












んーみゅぅぅぅ よく寝たぁぁぁ!!!

しなやかな四肢をくねらせ背伸びをして、窓に映る自分の姿を見る。

はぁ……。やっぱそう都合良く戻ってないか・・・。

そう。窓に映るあたしは猫のまま。
ま、あの性悪魔族がそう易々と手を引くわけないものね。

自分の姿を写していた窓の外に焦点を合わせると、窓の外には雨がさあさあと降りしきっていた。
昨日の夜までは綺麗な三日月が出ていたはずなのに、降り出した雨はやむ気配はなく、ただ静かに窓から見える木々たちに潤いを与えていた。
どうやら今日はここに足止めのようである。

そう言えばあたし、あいつが犬になった時ゼロスの手紙の見て出てっちゃ・・・・手紙!?

もしやと思い、部屋に備え付けの安っぽいテーブルの上に飛び乗る。
……と、また芸がなく手紙が置いてあるではないか。


ふんっ二度もひっかかるもんですか!・・・どれどれ今度はなんて書いて・・・






『あたし、好きな人ができたの。
もうあなたとは一緒にいたくない。いられない・・・だからさよならしよ。


追伸、彼との結婚式にはあなたも招待するわね。』








ぜーーーろーーーーすぅぅぅぅぅ!!!!!!!



ビリ!!バリバリ!ぐしゃぐしゃ…ってい!!ふみふみ・・・・
もう念入りに破り捨て、丸めてから これでもかってほど踏みつけてやる。

あんの生ゴミ魔族はぁぁ! なに考えてこんな文面書いたのよ!!
ってか、よくも素でこんなアホらしい文面綴れたものだわ!


・・・・んふふふふふ良い根性だ・・・・
滅ぼす・・・・今度という今度は絶対滅ぼしてやる・・


「おや・・・ばれちゃいましたか」

いきなり上から声が響く。
見上げれば、ゼロスが逆さまにぷかぷか浮きながらあたしを見下ろしているではないか。

(んふふふふふふふふ。い〜所に居るじゃない)

きらーんと爪を光らし、魔族顔負けの壮絶な笑みを浮かべて爪をひと舐めする。
いまのあたしの目から感じられる感情はただひとつ。

殺ス!

である。

「ええっと・・・なんだか身の危険が・・・。お詫びにリナさんの荷物を返してあげますから、それで赦して下さいよ。」

口調こそは丁寧だが、嘲るような声音が混じって聞こえるのはあたしの気のせいではないだろう。あたしだってこの格好で凄む情けなさくらい分かってるわよ!

なにはともあれ前回の二の舞のなることだけは避けられたので、気を取り直して部屋を見渡せば、荷物もお宝も昨日のままの状態で放置されている。
うん。これならあの過保護者が勘違いしてあたしを追うことはないだろう。


と、タイミングを見計らったように役に立たない保護者殿の気配がドア越しに伝わってきた。

「おーい リナぁーもう昼近いぞー メシ食いに行こうぜ〜」

まったく・・・・なんであたしがこんなに苦労してんのに、自称とはいえ、保護者のあんたがそんなのんきな声出してんのよ。
あ゛ーなんか腹立ってきた!返事なんかしてやんないんだからね。
まぁ どーせ猫となっては「にゃぁにゃぁ」鳴くしか出来ないんだろーけどさっ

少し間をおき、ガウリイが再び声を掛けてくる。


「リナーーリナリナリナリナリナぁー!いい加減起きろよー」

だぁぁぁぁ!!あたしは犬かい!!
くっそ〜人間だったら今すぐガウリイを殴りつけられるのにぃぃぃ

「おいリナ?なんかあったのか?」

ガウリイの声に堅いモノが混じる。
そう!なんかありまくったの!!

「リナ・・・リナ!?」


               バン!!


ガウリイが勢いよくドアを蹴破り、躊躇無く部屋に乗り込んでくる。

あああああああああああああああーーーなんつーことをををを!!!

見事に鍵を粉砕させてガウリイが部屋に飛び込んでくるのにタイミングをあわせてあたしは宙を舞う。

「リナ!?どうし うわ!」

心配そうな顔をしているガウリイの顔面に怒りの肉球キックをかまし、華麗に着地。
10.00 ぱーへくと・・・って馬鹿なことやってないでっ
どーすんのよ このノーミソ筋肉男!!
ドアぶち壊して、弁償させられたらあんた身売りさせるかんね!!

「なんだいきなりって・・・ん?」

顔を押さえていたガウリイがじっと睨むあたしに気付く。

「どうしたんだ・・お前さん?」

ちょっと呆然としていたが、すぐニッコリと微笑んで、あたしの頭をわしわしと撫でてくる。いつも人間の時のあたしにするみたいに。

なんだ・・・・こうやるのあたしだけじゃないんだ・・・

「リナの奴何処いったんだぁ」

あんまり心配していないような声で辺りを見渡し、金銀財宝で目を止める。

なによ・・・これはあたしのだかんね。あげないわよ。


「また盗賊潰しにいったのか・・・・」

呆れるようにあたしに向かって言う。

ほっとけ。

「もしかして、お前さんも戦利品かぁ」

おまけにひょいっとあたしを猫掴みして持ち上げる。

「まぁ きっとすぐに戻って来るよな。お前さん 一緒にメシ食うか?」
「うみゃう」

当ったり前でしょ。
ぶらーんとしながらも愛らしく首をこくりっと縦に振った。
まっ腹にが減っては戦は出来ぬって言うしね〜
あたしはガウリイに抱きかかえられながら一階の食堂へ降りていった。
って・・・ちょっとどーして抱きかかえていくわけ!?

あたしの疑問に答える筈もなく、ガウリイは食堂へ降りていった。






じーーーーーーーーー……

あたしはテーブルに所狭しと並べられている料理を穴が空くほど見つめる。
ちなみに自分の分はもう食べた・・・・いや。飲んだという方が正しい。
このバカクラゲはあろう事か、このあたしにミルクしかくれなかったのだ。
まぁ 猫の食事はそんなもんかもしれないけど、あたしにとっては全然足りなかったする。

「なんだお前も食べたいのか?」
「みゃう!」
「じゃこっち来いよ。」

あたしの視線に気づいたガウリイがそう問いかけ、あたしを持ち上げて自分の膝に持っていく………って?
ちょっとぉぉぉぉおおおぉぉぉぉどーーーしてここに座んなきゃいけないわけ!?

「ふみゃみゃみゃ」

暴れど、もがけど、ガウリイは器用にあたしを押さえて、ウィンナーを刺したフォークをあたしの口元に差し出す。

「ほい。」

ふんっ 自分で食べるわよ。
ぷいっとそっぽを向く。

「いらないのか?じゃあオレが・・・」
「みゃうう!」

食べるわよ!!

「くっくっくっ 素直じゃないなぁ〜」

笑いながら自分の口に持ってこうとしたフォークをあたしに戻す。

くっそーーーーガウリイのくせにぃぃぃぃぃぃぃいいい!!!!!!!
戻ったら憶えてなさいよぉぉぉぉ!!!!!!ぶちのめしてやるんだから!
思いっきりウィンナーにかぶりつく。

はぐはぐはぐ・・・んぐっ・・・・もっと。
じーっと目で訴える。

「ほいほい。 でも、次オレの番な。」

そう言ってガウリイはそのフォークで目玉焼きを突き刺し、口の中に放り込んでから、ポテトを突き刺し、あたしに差し出した。

・・・・これって・・・間接キスじゃあ・・・・
かああああって顔が赤くなる。
もっとも、猫の顔が赤くなるかどうかは疑問だけど・・・・

「ほーら」

なにが嬉しいのか心底嬉しそうな顔をしてピコピコとフォークを振るガウリイ。


・・・・・・・・・・・猫よ。
そうよ猫 猫と思ってこんなことするのよ。
深い意味はないわよ。 うん。そう そうに決まってる。

あたしは食欲に負けて、ポテトをフォークごと口に頬張った。
恥ずかしくて、口に含んだものの味なんかわかんなかった。
けれど、それは初めのうちで、慣れてしまえば次にガウリイがくれたものをパクパクと口に運んでいた。




ふっ!まあ、腹八分目ってところね。
結局あたし達はランチセット8人前 あ〜んどデザート4人前をたいらげた。

「お前さん 何処にそんなに入ったんだ?」

しげしげとあたしを見ながら感心したようにガウリイが言う。
あんなだって人のこと言えないじゃないのよ・・・・ジト目で見つめ返してやる。
が、猫の愛くるしい双眸ではあまり効果が上がらない。

ってそれよりあたしを降ろしなさいよ!!

そう、食事も終わって部屋に戻ってきてからも、この男は片時もあたしを放そうとしないのだ。当然今居る位置はガウリイの膝の上だったりする。

「いてっ こら、爪立てるなよ」

そう言いながらもあたしを放そうとはしないらしい。
と、満面の笑みを絶やさぬガウリイがあたしの体を撫で始めた。
あっなんか気持ちいいかも・・・
こいつ無骨な手してる割に器用よねぇ

うみゅぅぅ……
お腹がいっぱいんなったせいか眠くなってきちゃったじゃないのよ。
こいつの膝も温かいし・・・

ふあ〜っとあくびを一つ。

「ん?眠いのか?寝て良いぞ。」

ゆっくりとあたしを撫でながらガウリイが言ってくる。

・・・・・ま、それもいいわね。

あたしはガウリイの膝の上で丸まって目を閉じると、すぐに睡魔が襲ってきてあたしの意識を奪い、闇の中に沈めていった。




「相変わらず寝付きいいな・・・お休み、リナ」


何か言ってる? まぁいいや お休みガウリイ・・・・・











あたしが目を覚ますと、もともと薄暗かった部屋に夜の闇が広がっていた。
けっこうな時間が経っているらしい。
・・・ん?
なんか動きづらいし・・・・重い。あたしの上に何か乗ってない?
もがいて抜け出せばそこはベットの上、普通、ベットならもがくなどということはしない。
あたしがもがいて抜け出したのはあたしの体を抱え込むようにして回された太い腕からだった。
それは当然のごとく隣ですぴょすぴょと眠っているガウリイの物。

ガウリイってば、あたしと一緒に寝ちゃったわけ?


ふとガウリイの寝顔を見てある考えが浮かぶ。

(もしかして、いま寝込みを襲ってキスしちゃえば元に戻るんじゃないの?)

誘われるままゆっくりとガウリイに忍び足で近づいて自分の顔を彼の端正な顔に近づけていく。

ううっハズイぃぃ!!
でもこのままじゃあたし、ガウリイの愛玩動物になっちゃうし……背に腹は代えられないわ!

意を決して自分の口をガウリイの唇に重ね ぱっと放す。




あれ? 戻らない?
どうして・・・・?キスすれば良いんじゃないの!?
・・・・ゼロスの奴騙したわけ!?


「ん?お前さん、起きたのか?」

今のでガウリイが目覚めてしまい、あたしを覗き込んでくる。

かああああああぁぁぁぁぁあああああああ(//////////////////////)
顔に血が上っていく。


「んーーっよく寝たぁぁぁぁ。もう夜か…。飯食いに行くか?っておい、待てよ。オレもすぐ行くから……」

あたしはガウリイが呼び止めるのも聞かずにドアをこじ開け、猛ダッシュで部屋から逃げ去る。

あううぅぅ ハズイハズイハズすぎるぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!
まともに顔見らんないぃぃぃいいい!!!!!!!!!!








・・・・・・・・・・・・・・・くすくすくすくす・・・・・・・・・・・・・・



あたしの姿が消えると、彼の瞳が寝ぼけ眼の瞳から悪戯を楽しむ子供のような瞳に変わる。

「ダメだぞリナ。ゼロスも言ってたじゃないか・・・・キスは相手から、ってな」

彼女の温かさを十分に味わって狸寝入りをしていた彼は悪戯っぽく笑って彼女の後を追っていった。


でもそれは、あたしのあずかり知らぬ事―――――――――…














つづく