好き?
〜リナバージョン〜
























 「なぁなぁリナ今日の夜、俺の部屋に来ないか?」

 突然何を言い出すのかこの男は?花も恥らう乙女に夜男の部屋に来いって!

 「はぁ〜?何で夜なのよ、今でも良いじゃない。」

 あたしはリナ・インバース。自他共に認める超天才美少女魔道士である。そして今あたしに話し掛けてるのが顔と剣だけはピカ一、脳味噌はゼリーが詰まっているクラゲ頭ガウリイ。

 「ん〜、どうしても夜の方が良いんだけどダメか?」

 う・・・捨てられた子犬みたいな目をして言うんじゃない、全く・・・これじゃあどっちが保護者か分かんないじゃない!

 「もう、分かったわよ今夜行くわ。」

 ガウリイにとってあたしは子供でしかない、だから『もう』大丈夫。本当にしょうがないんだから。どうせ盗賊イジメすんな〜ってお説教するんだろうな。

 そうよ、あいつにとってあたしは『子供』だからあたしはあいつの前で『子供』を演じ続ける。あの日から決めた事・・・・・・・

 それがあんな大騒ぎになるなんて、あたしは想像もしてなかった。



 「で、あたしに何の用なの?」

 あたしは約束通り夜ガウリイの部屋に行った、実はこの前にお風呂に入ってパジャマ姿なんだけど。これでガウリイにはあたしが無防備なお子様に見えるだろう。

 「リナ、俺今日お前さんに言いたい事があるんだ。」

 「何よ?あー分かった!盗賊イジメすんなって言いたいんでしょう!!ダメよ、あれはあたしのストレス解消なんだから。」

 「違う違う!確かに止めて欲しいけど、今日は違うんだ。リナ、俺お前が好きだ。」

 ・・・・・・・・・・何、今の冗談?

 「全くもぉ、わざわざ夜に冗談言う為にあたしを呼んだの?そんならあたし帰るわよ。」

 本当に酷い冗談だわ、いくらあたしが子供で恋愛経験が無いからってこの冗談は酷すぎる。あたしはクルリとドアに向き直ると部屋を出ようとした時、ガウリイが焦ったように声を掛けてきた。

 「ちょ、ちょっと待てリナ!!俺は冗談何か言ってないぞ!本気だ、本気でお前さんが好きなんだ!!」

 「それなら尚更笑えない冗談だわ!!あんた、あたしの保護者でしょ?被保護者に欲情すんじゃないわよ!!このエロクラゲ!」

 だってあんたあの時言ったんだよ、どうしてそんな事言うのよ!!あんたが言った『女』はどうすんのよ!こんなに薄情な奴だって知らなかった!

 「なぁリナ、お前俺の事嫌いか?」

 「大大大大大大大大大大大大大大大大大大だぁ〜い嫌い!!!」

 そうよ、大嫌いよあんたなんか!どうしてあたしが諦める決心が付き掛けた時にそんな事言うのよ!最低な奴!

 「何でだよリナ?俺そんなに嫌われる事したのか?」

 「自分の胸に手を当ててよ〜く考えなさいよバカクラゲ!」

 あたしはガウリイにあっかんべーして部屋を出た。

 「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?全然分からんぞ、リナ〜!」

 そっか、分からないんだガウリイ。そうだよね・・・あんたクラゲだもんね、忘れてるよねあの時の事。凄く幸せそうに笑ってたのに、あたしの所為でガウリイはあの時言ってた『女』と別れちゃったんだ。

 だから、今ガウリイは寂しいんだろうな・・・・・・・。だからあたしはあの女の代わりでしかないんだ!ガウリイがあたしを『愛してる』訳じゃないんだ!

 あたしは自分の部屋で泣き疲れて何時の間にか眠ってしまった。



 「おはようガウリイ、どうしたの暗い顔して?早く食堂行こう。」

 「・・・・・・・・・・・・・」

 朝、あたしは何も無かったかのようにガウリイを笑顔で迎えた。ガウリイの奴キョトンとしてる。そりゃそうだろうなぁ、昨日の今日だから。

 「・・・・・・・・あ、あぁそうだな」

 最低なのはガウリイじゃあない、最低なのはあたし・・・・・・ガウリイの傍に居たいだけだから、何も無かった事にして又旅を続けようとしてる。

 「よし、じゃあ行こうぜリナ。俺もう腹ぺこだ。」

 ガウリイは優しい、だからあたしの我侭分かってくれた。保護者の顔に戻ってる。

 「うん!」

「リナ、聞いても良いか?」

 やっぱり昨日の事聞かれるのかな?そしたら笑って誤魔化そう。でも、ガウリイの言葉は一番あたしが聞きたくない言葉―――――――――――

「どうして嫌いな俺と旅をするんだ?嫌いなら別れ――――――――」

 気付いたらあたしはガウリイを殴って、そして自然に涙が溢れ出していた。

「本当にあんたってサイテーね!!分かったわよ、お望みどうりに別れてやるわよ!あんたがそう望んでんでしょ!バカぁ、あんたなんか大嫌い!!」

 あたしは走って宿を飛び出した。一緒に居たいから頑張ってたのに、どうして一番言って欲しくない言葉を言うのよ!

 「レビ・テーション!!」

「リナ!待てよ!!」

 ガウリイが慌てて飛び出してきた、キョロキョロしてる。あたしを探してる、でも今は顔が見れない。もう最低・・・・ガウリイも、あたしも・・・・・

 あたしは屋根の上に降りるとそのまま蹲った。こんな事望んで無いのに、只ガウリイと一緒に居たかっただけなのに。ガウリイにとって只の手の掛かる子供でも良かったのに・・・・・

 あの時あんな事聞かなきゃ、もっと素直にガウリイの気持ち受け入れられたのかなぁ?あいつとガウリイの言ってた『女』が別れる事なかったのかなぁ?ごめんね・・・・あたし我侭だから、あんたの幸せを壊しちゃったんだね。でも・・・あたしは身代わりなんて嫌、こんなにガウリイを好きなのに・・・・・・・あたしは本当に我侭だ。

 あ、ガウリイが出てきた。荷物持ってる?まさか!あたしを置いて居なくなっちゃうの?ダメ!気付いたらあたしはガウリイの後ろに慌てて降り立った。

 「ちょっと、逃げる気この卑怯者?」

 違う!そんな事言いたいんじゃない!だって卑怯者はあたしの方。

 「リナ!?・・・・・・・・そうだ、逃げるんだよ。悪いか?」

 悪くない、ガウリイは悪くない!悪いのはあたし・・・我侭なあたし。だから何も言い返せなかった。

 「悪かったな、今まで嫌いな奴と旅させちまって。もう二度と会う事は無いから安心しな。」

 ガウリイの言葉にあたしは胸が張り裂けそうになる、二度と?会えないの?安心?誰が?どうして?

 「・・・・・・・・・・・・・・して」

 声が掠れちゃう、涙が止まらない、震えが止まらない、怖い・・・・・今度こそ元に戻れなくなっちゃう。でも、もう止まらない!

 「どうして今更そんな事言うのよぉ!!やっと・・・やっとあたしが吹っ切ったのにぃ!!やっと元の関係に戻したのに!」

 そうよ、あたしがやっと保護者と被保護者の関係に2年も掛けて戻そうとしたのに!

「・・・・・何言ってんだ?お前俺の事嫌いなんだろ?元の関係ってどうゆう意味だよ?」

 「あんたがあたしをバカにしてるからよ!!」

 好きな人が居たくせに、あたしを好きだって言うの!あたしは諦めようと何度も泣いたのに何でそんなに簡単に好きなんて言えるの!

 「いくらリナでも怒るぞ!俺が何時お前さんをバカにしたよ!?」

 ガウリイが本気で怒ってる、覚えてないの?あたしはあの日からずーっと忘れる事が出来なかったのに。・・・・・あたしだけ・・・何かバカみたいじゃない。

「うっく・・・・あんた、好きな人が居るんでしょうが!?こんな子供おちょくってそんなに楽しいの!!」

 泣きたくない、こんな薄情者なんかの為に泣きたくないのに、涙が止まらない。

 「まさか・・・・・・・あの2年前の事言ってるのか?」

 覚えてた?あの脳味噌スライムのガウリイが?あの日の事を?

 『ねぇガウリイ、あんた好きな人居るの?』

 『あぁ、居るよこの世で一番好きな女が』

 『はは、そうなんだ』

 幸せそうな笑顔で、そう言ったガウリイの顔。今でも忘れない・・・・・・・悲しかったから。

 「そうよ・・・・・・・あたし、悲しかったわ。でもガウリイがあたしと旅をしてくれるだけで嬉しかったから、例えあんたが被保護者としてしかあたしを見て無くても傍に居てくれるだけで嬉しかったから。なのにあんたは、やっとあんたへの気持ち吹っ切れそうだったのに行き成り好きだって言ってきて!いくら相手に振られたからって、その女の代わりみたいにあたしを好きって言うあんたが大嫌い!そして・・・・・・・・あたしから逃げようとして居なくなっちゃおうとするあんたが一番大嫌い!!」

 違うの、嫌いなのはあたし自身!ガウリイを独り占めしたくて彼を騙した。女に返したくなくて子供の振りをして彼を繋ぎ止めていた自分が嫌い!あたしはこんなに弱くなかった筈なのに・・・・・・・・・・・・

 「リナ!」

 ガウリイに行き成り抱き付かれて、あたしは焦りの余り力一杯の抵抗をした。

 「離しなさいよ!あたしから逃げたいんでしょ?逃げればいいじゃない!!嫌い、嫌い!大嫌い!!」

 暖かい、バカよ・・・・こんな時まで優しくしないでよ。

 「嫌いでも構わない!リナ、俺が好きだった奴の名前・・・・・・知りたくないか?」

 「聞きたくなんか無いわよ!」

 聞きたくない、もしあたしの知ってる人なら辛いから。

 「そいつの名前はリナ・インバース、初めて会った時から今でも愛している俺の大事な女だ。」

 初めて?今でも?じゃあ2年前に言ってたガウリイの好きな女って、あたし!!じゃあ、ひょっとしなくてもあたしの勘違いだった訳?恥かしくて思わずガウリイの胸で顔を隠しちゃった。

 「じゃあ・・・・どうしてあん時あんな事言ったのよ?あんたがハッキリ言ってくれればあたしはあんなに悩まなくてすんだのに?」

 「済まん、俺は・・・・卑怯者だから、怖かったんだ。本当の事言ってお前が俺の前から消えるかもしれないって・・・・・子供のお前さんには、俺の想いがきつ過ぎるんじゃないかと思って。でも、今は凄く後悔してる。あの時怖がらずに本当の事言えば良かったって」

 「本当の事?」

 「あぁ・・・・・俺の好きな奴はお前だよって」

 「・・・・・・・・・・・辛かったのよ」

 辛かったんだから、あんたに好きな人が居ても好きになっちゃう自分が。

 「・・・・・・・・・あぁ」

 「・・・・・・・・・・・悲しかったのよ」

 悲しかったんだから、女として見られない自分が。

 「・・・・・・・・・・・・・あぁ」

 「・・・・・・・・・・・何度も諦めようとしたのよ」

 でも出来なかったの、だってやっぱりあんたが好きだから。

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 「・・・・・・・・・・・でも、今は凄く嬉しいの」

 そう・・・ガウリイがあたしだけを見ていてくれた事が分かったから。

 「俺もだよリナ、ごめんな・・・・・こんなに待たせちまって」

 本当よ、凄く待ったんだから。もう離したりしないだからね。

 「本当よ、こんなにあたしを悩ませるのはあんた位なんだからね。」

 全く・・・・・魔族と戦った時でもこんなに悩まなかったわよ!ある意味あたしにとってガウリイが一番最強なのよ。でも教えてあげないんだから・・・・・・・・・・

 ガウリイがあたしの顎に指を添えて顔を上げさせる、綺麗な顔が直傍に近付いてくる。あたしは恥かしいけどゆっくりと目を閉じた。少ししてから感じる温かい感触。そしてざわめき。

ん?ざわめき?

 「ヒューヒュー、若いねお二人さん!!」

 「よかったな姉ちゃん!」

 「よっ、この色男憎いねぇ!もう譲ちゃん泣かすなよぉ!!」

 そ・・・そうだった!!ここって宿屋の前じゃない!は・・・恥かしい!!!

 「うっきいいいいいいいいいいい!ファイアー・ボ〜〜〜〜〜〜〜〜」

 あたしがちょっと照れ隠しにファイアー・ボールを唱えようとした瞬間、ガウリイが後ろから羽交い絞めにしてきた。

 「落ち着けリナぁ!!!」

 「は〜な〜せぇ〜!!町ごとぶっ飛ばすんだからぁ〜!!」

 「だから止めろって!」

 こら〜!ガウリイ!!どさくさ紛れに胸を触るんじゃない!!!何か笑ってるし!

 「何笑ってんのよ!!」

 「へ?あぁ何時ものお前さんらしくなったなと思って。」

 何時ものガウリイの笑顔、何かすご〜く恥かしいんだけど・・・・・

 「うぅぅぅぅ〜地の果てまで吹っ飛べぇ!!!」

 よりによってガウリイの奴呪文を発動させない為に・・・・・キスしてきた!

 「人前でチューするなぁ!ガウリイなんか大嫌いだぁ〜!」

 「はいはい、俺は愛してるよ」

 一つだけガウリイの事で分かった事、こいつ意地悪だぁ〜!!



 あたしを見詰めて、あたしを愛して、あたしは我侭だから・・・・どんどん、あなたに欲張りなっていくの・・・・・・・・・あたしの全てをあなたに捧げるから・・・・・・・あなたの心をあたしに頂戴。

 アイシテマス・・・アタシガイキテイクタメノ・・・タイヨウ

                           


   おわり










ガウリイsideに行きますか?