嫌い?
〜ガウリイバージョン〜






















 「なぁなぁリナ今日の夜、俺の部屋に来ないか?」

 「はぁ〜?何で夜なのよ、今でも良いじゃない。」

 俺はガウリイ・ガブリエフ。旅の傭兵、だった。今はリナの保護者をしている。

 「ん〜、どうしても夜の方が良いんだけどダメか?」

 「もう、分かったわよ今夜行くわ。」

 俺が情けない声で言うとリナは仕方ないって感じで返事してくれた。こいつ、本当に俺の事男として見てないのな。しっかぁし!それも今日までだ!
フフッ、覚悟しろよリナ。今日で保護者生活とはさよならだ。

 そう、俺はリナが好きだ。この世で一番大好きだ。最初は子供だったから思わず保護者を買って出たけど、実はその時からリナに惹かれていたんだ。どこがって言われると、俺も良く分からん。

 兎に角今日俺はリナに告白する!多分リナも俺の事を嫌いではないだろう、何しろ3年も一緒に旅をしてるんだからな。

 俺はこの後起こる大騒動をこの時知る由も無かった。



 「で、あたしに何の用なの?」

 夜、約束通りリナはパジャマ姿で、俺の部屋に来た。何て無防備な奴なんだ!風呂上りなのかほのかに良い香りがしてくる。

 「リナ、俺今日お前さんに言いたい事があるんだ。」

 「何よ?あー分かった!盗賊イジメすんなって言いたいんでしょう!!ダメよ、あれはあたしのストレス解消なんだから。」

 「違う違う!確かに止めて欲しいけど、今日は違うんだ。リナ、俺お前が好きだ。」

 良し言った!って、あれ?何かリナ呆れてるように見えるのは気の所為か。

 「全くもぉ、わざわざ夜に冗談言う為にあたしを呼んだの?そんならあたし帰るわよ。」

 言うが早いかリナはクルリと背中を向けるとドアへと向かって歩き出した。

 「ちょ、ちょっと待てリナ!!俺は冗談何か言ってないぞ!本気だ、本気でお前さんが好きなんだ!!」

 「それなら尚更笑えない冗談だわ!!あんた、あたしの保護者でしょ?被保護者に欲情すんじゃないわよ!!このエロクラゲ!」

 えぇ〜!ひょっとして、俺って振られたのか?

 「なぁリナ、お前俺の事嫌いか?」

 「大大大大大大大大大大大大大大大大大大だぁ〜い嫌い!!!」

 そ・・・・・・・そんなぁ〜、あぁ・・・本当だったら今頃は、ガウリイあたしも好きよ。とか言う言葉を聞いてあんな事やこんな事をってしてる筈なのにぃー!!

 「何でだよリナ?俺そんなに嫌われる事したのか?」

 「自分の胸に手を当ててよ〜く考えなさいよバカクラゲ!」

 リナはベ〜っと舌を出すと凄い勢いでドアを閉めた。

 「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?全然分からんぞ、リナ〜!」

 素直に胸に手を当てたが全く分からん?その代わり別の疑問が浮かんだ。何で大嫌いな俺と旅を続けてるんだろ?

 はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ダメだ、俺もう立ち直れない。リナに嫌いって、しかもあんだけ大を並べられて言われたら・・・・・・・・・明日どんな顔してリナに会えば良いんだろうか?俺は眠れないまま朝を迎えた。

 

 「おはようガウリイ、どうしたの暗い顔して?早く食堂行こう。」

 「・・・・・・・・・・・・・」

 朝、そこには何時もと変わらないリナが居た。俺は昨日夢を見ていたんだろうか?それともこれが彼女の答え?今までと変わらない関係がリナの願いなんだろうか?

 「・・・・・・・・あ、あぁそうだな」

 どうしてそんなに割り切れる?嫌いならどうして俺に笑い掛けてくれるんだ?どうして一緒に旅をするんだ?

 「よし、じゃあ行こうぜリナ。俺もう腹ぺこだ。」

 でも、今リナが望んでるのはきっと保護者の俺。だから取り合えず俺は保護者に戻ろう、リナが傍に居てくれるなら・・・・・・・・それだけで良しとするしかない。

 「うん!」

「リナ、聞いても良いか?」

食堂に行く途中で俺はどうしても聞きたくなってリナに聞いた、それがあんな騒ぎになるとも知らずに。

「どうして嫌いな俺と旅をするんだ?嫌いなら別れ――――――――」

パチーン!音と同時に俺の左頬に痛みが走った、その原因がリナが平手打ちしたのだと気付いたのはリナが泣いているのに気付いてからだった。

「本当にあんたってサイテーね!!分かったわよ、お望みどうりに別れてやるわよ!あんたがそう望んでんでしょ!バカぁ、あんたなんか大嫌い!!」

「リナ!待てよ!!」

 俺は宿を飛び出すリナを追って走り出したが、何処にも居なかった。どうして?俺はリナを傷付けたのか?俺は只、リナが俺を嫌うなら旅なんか一緒にしないで別れた方が良いだろうと思っただけなのに。

 俺は仕方なく宿の部屋に戻った、そうだな・・・・俺が居たらあいつは戻ってこれない。荷物は残したままだ、リナはその内戻ってくるだろう。

 だから・・・・・今旅立とう、もう俺はリナの傍には居られない。もう・・・訳も分からずにリナを傷付けるのは嫌だ!

 俺がリナに告白したのがいけなかったのか?告白しなければ・・・・お前の笑顔を見続ける事が出来たのか?俺はリナにとって保護者のままの方が良かったのか?俺は多くをあいつに望み過ぎたのか?

 「リナの・・・・言う通りだ、俺はバカだよ。一番無くしたくないものを無くしちまった」

 気付いたら俺は泣いていた、俺は泣きながら荷物を纏め部屋を出る時に涙を拳で拭った。

 部屋を出て隣の部屋のドアを見る、リナの部屋。やっぱり気配は無い・・・・俺は溜息を吐いて宿屋を出た。リナが戻ってくるまで彼女の荷物を預かって欲しいと金を宿屋の主人に渡して・・・・・・・・・・

 これから何処に行こうか?何処でもいい、何処に行っても隣には愛しい少女はもういない。出来たらリナに会わない場所が良い。そうすれば・・・・・又あいつを傷付けなくてすむ。

 「ちょっと、逃げる気この卑怯者?」

 俺が歩き出そうとした時、背後で声がした。忘れられない凛とした声、愛しくて大切で何よりも掛替えの無い存在・・・・リナ!

 「リナ!?・・・・・・・・そうだ、逃げるんだよ。悪いか?」

 嬉しかった、最後にリナに会えて。例え俺を責める言葉でも・・・・・嬉しい。

 「・・・・・・・」

 俺は振り返れなかった、リナの顔見たらもう離れられなくなる!そしたら・・・・そしたら俺は又リナを傷付けちまう、そんなのは俺が耐えられない。

 「悪かったな、今まで嫌いな奴と旅させちまって。もう二度と会う事は無いから安心しな。」

 「・・・・・・・・・・・・・・して」

 震える声で喋るリナに俺は対振り返ってしまった、リナ・・・・・泣いてる?前髪で隠れて分からないが、泣いてるのかお前?

 「どうして今更そんな事言うのよぉ!!やっと・・・やっとあたしが吹っ切ったのにぃ!!やっと元の関係に戻したのに!」

 「・・・・・何言ってんだ?お前俺の事嫌いなんだろ?元の関係ってどうゆう意味だよ?」

 リナの言ってる事が分からない、俺はどうして良いのか分からない?

 「あんたがあたしをバカにしてるからよ!!」

 ムッ!俺は一度だってリナをバカになんかした事無いぞ!流石にこうも分からないだらけだと腹が立ってきた!

 「いくらリナでも怒るぞ!俺が何時お前さんをバカにしたよ!?」

 俺の言葉にリナはキッと俺を睨む、涙が溢れたままの赤い瞳で・・・・・

 「うっく・・・・あんた、好きな人が居るんでしょうが!?こんな子供おちょくってそんなに楽しいの!!」

 何の事だ?しかもリナが自分で子供って言うなんて・・・・・・・その瞬間、俺の脳裏にある記憶が鮮明に蘇る。散々リナにはクラゲとか脳味噌スライムとか言われるが、リナの事なら何一つ忘れちゃいない。これも愛のなせる技!

 「まさか・・・・・・・あの2年前の事言ってるのか?」

 そうだ、2年前一度だけリナが俺に聞いた事があった。好きな奴は居るのかと・・・・・・俺は確か、居るって言ったんだ!勿論リナの事なんだけど、そう言えばあの時期思いっきりこいつの事子供扱いしてたからなぁ。

 「そうよ・・・・・・・あたし、悲しかったわ。でもガウリイがあたしと旅をしてくれるだけで嬉しかったから、例えあんたが被保護者としてしかあたしを見て無くても傍に居てくれるだけで嬉しかったから。なのにあんたは、やっとあんたへの気持ち吹っ切れそうだったのに行き成り好きだって言ってきて!いくら相手に振られたからって、その女の代わりみたいにあたしを好きって言うあんたが大嫌い!そして・・・・・・・・あたしから逃げようとして居なくなっちゃおうとするあんたが一番大嫌い!!」

 知らなかった、俺の言葉にそんなに傷付いていたなんて。俺がそんな風にリナに思われていたなんて・・・・・・・・・俺と居る為にあんなに元気を装っていたなんて!

 「リナ!」

 俺は荷物を放り出してリナに駆け寄り、強く抱き締めた。俺の腕の中で必死でもがくリナが今凄く愛しくて堪らない。

 「離しなさいよ!あたしから逃げたいんでしょ?逃げればいいじゃない!!嫌い、嫌い!大嫌い!!」

 「嫌いでも構わない!リナ、俺が好きだった奴の名前・・・・・・知りたくないか?」

 「聞きたくなんか無いわよ!」

 リナが俺の腕の中でピクリと振るえる、俺は抱き締める力を強くした・・・・腕の中にいる最愛の少女を逃がさないように。

 「そいつの名前はリナ・インバース、初めて会った時から今でも愛している俺の大事な女だ。」

 ピタリとリナの動きが止まった、そしてそのまま俺のアーマーに顔を押し付ける。う〜ん、可愛い反応!

 「じゃあ・・・・どうしてあん時あんな事言ったのよ?あんたがハッキリ言ってくれればあたしはあんなに悩まなくてすんだのに?」

 「済まん、俺は・・・・卑怯者だから、怖かったんだ。本当の事言ってお前が俺の前から消えるかもしれないって・・・・・子供のお前さんには、俺の想いがきつ過ぎるんじゃないかと思って。でも、今は凄く後悔してる。あの時怖がらずに本当の事言えば良かったって」

 「本当の事?」

 「あぁ・・・・・俺の好きな奴はお前だよって」

 「・・・・・・・・・・・辛かったのよ」

 「・・・・・・・・・あぁ」

 俺も辛かった、逃げるしか出来ない自分自身に。

 「・・・・・・・・・・・悲しかったのよ」

 「・・・・・・・・・・・・・あぁ」

 俺も悲しい、こんなにもリナを傷付けていた事が。

 「・・・・・・・・・・・何度も諦めようとしたのよ」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 俺も諦めきれなかった、ひょっとしたら大人になったリナは俺を選んでくれるかもしれないと思っていたから。

 「・・・・・・・・・・・でも、今は凄く嬉しいの」

 「俺もだよリナ、ごめんな・・・・・こんなに待たせちまって」

 ゆっくりと見上げるリナは何時もより眩しい笑顔だった、それだけで俺は幸せになれる。

 「本当よ、こんなにあたしを悩ませるのはあんた位なんだからね。」

 笑顔で言うなよ、もう悩ませる事はしないから・・・・・俺はリナの顎を指で摘み上げるとリナはゆっくりと目を閉じる。俺の好きな赤い瞳が見えないのは正直残念だが、静かに口付けを交す。その瞬間――――――――――

 「ヒューヒュー、若いねお二人さん!!」

 「よかったな姉ちゃん!」

 「よっ、この色男憎いねぇ!もう譲ちゃん泣かすなよぉ!!」

・・・・・・・・・忘れてた、ここって宿屋の前だって事。わぁやばっ!!
リナ完全に切れ掛かってるぅ!

 「うっきいいいいいいいいいいい!ファイアー・ボ〜〜〜〜〜〜〜〜」

 「落ち着けリナぁ!!!」

 「は〜な〜せぇ〜!!町ごとぶっ飛ばすんだからぁ〜!!」

 「だから止めろって!」

 暴れるリナを取り押さえながらも俺はつい笑ってしまう、あ・・・リナの癇に障ったらしい。

 「何笑ってんのよ!!」

 「へ?あぁ何時ものお前さんらしくなったなと思って。」

 「うぅぅぅぅ〜地の果てまで吹っ飛べぇ!!!」

 リナが照れ隠しの為の呪文を唱える前に、俺は自分の唇でリナの可愛い唇を塞いでやった。

 「人前でチューするなぁ!ガウリイなんか大嫌いだぁ〜!」

 「はいはい、俺は愛してるよ」

 分かった事が一つだけある、リナの嫌いは好きって意味なんだよな。



 もう泣かせない、悩ませない、苦しませない・・・・・・・・・ありのままの俺をお前にやるから・・・・・・・・・・・・・・お前の全てを俺にくれ。

 アイシテル・・・オレノイキルタメノ・・・ミチシルベ





                                      おわり










リナsideにも行きますか?