DREAM
〜前編〜
















『又、あの夢なのね?』

最近あたしは毎日夢を見る。とても不思議な夢。

『・・・又泣いてるの?』

あたしの視線の先には一人の子供がいた。

金髪の長い髪、晴れた青空を思わせる青い瞳、女の子と見間違える位可愛い10歳位の男の子。

そう、その男の子はあたしの自称保護者にして、旅のパートナーであるガウリイにそっくりだった。


最初に『彼』が夢に現れたのは3日前、そん時はまだ3歳位のお子ちゃまだった。

初めて見た時は可愛いってのが正直な意見。

でも、『彼』は泣いていた。今のガウリイでは想像も出来ない事だった。

声を掛けたけど、『彼』にはあたしの声は聞こえないみたい。気が付いたら、あたしは『彼』を力一杯抱き締めてた。

『大丈夫、あんたは一人じゃないよ。だから泣かないで。』

「・・・・・・・・・・!」

あたしにも『彼』の声は聞こえない。でも、『彼』はあたしに縋り付いて泣いた。

それからあたしは、毎晩『彼』の夢を見るようになった。


『今日は何やったのよ?』

あたしは膝を抱えて蹲ったまま、項垂れる『彼』に話し掛けた。

「・・・」

『彼』は何も答えない。きっと凄く辛い事があったんだって分かる、『彼』の顔がそれを物語っていたから。

あたしは『彼』の横に腰を降ろして、そっと『彼』の肩を包むように抱いてあげた。

「・・・・!――――――――!!!」

泣きたいのを必死で我慢してたんだ。『彼』は大声で泣き出した。あたしは、只『彼』の頭を優しく撫でてやるしか出来なかった。

『今日は相当辛かったんだね?あ〜、声が聞こえないんだったわ。』

何時の間にか静かになったと思ったら、『彼』は泣き疲れたのかあたしの胸の中で眠っちゃった。可愛いなぁ、何時ものアイツからは想像も出来ないや。

寝てる『彼』の頬っぺをプニプニって突付いてやる。

「・・・・〜」

先刻泣いてたとは思えない位、本当に幸せそうな顔で眠ってる。

どうして、『彼』は何時も泣いてんだろう?そんな事を考えていると、そこで目が覚めた。



「おはようリナ・・・・って、何だよ?俺の顔に何かついてるのか?」

夢の時とのギャップに、あたしは思わずガウリイを見詰めていたらしい。

「え?あ、ううん!別に、おはよう。」

ニッコリ笑って答えるあたしに、ガウリイは一瞬間を空けてからもう一度おはようって言った。

「もうお腹ペコペコ。ガウリイ早く食堂に行くわよ。」

「・・・」

「ガウリイ?」

何も答えないガウリイに訝しげに声を掛けると、やっと我に返ったガウリイがニッコリ微笑んだ。

ヤッパリ・・・コイツの笑顔は反則な位綺麗だわ。

「あ・・・あぁ、メシな?俺も腹ペコだぜ。」

ガウリイの顔を見詰めながら思う。又今夜も『彼』の夢を見るのだろうかと。





俺は子供の頃に不思議な夢を見ていた。

初めて『彼女』に会ったのは3歳の時・・・お袋が病気で死んじまった時だった。

俺自身そん時は小さ過ぎてお袋の死が理解出来なかったんだが、二度とお袋に会えない事を婆ちゃんに聞かされて、俺は部屋で泣いてた。

その夜、初めて夢で『彼女』が俺の前に現れた。

夕日のような赤い髪、炎のような赤い瞳。俺は、子供心に女神様だと思う位、『彼女』は綺麗だった。

『彼女』は何か言ってたみたいだけど、俺には聞こえない。そしたら、行き成り抱き締められた。

それからだな、俺が泣きたいと思う度に『彼女』が現れたんだっけ。

6歳の時に突然、本当に突然、光の剣の継承者にさせられた上に、本館から婆ちゃんの居る別館に移された。

俺は親父に捨てられた。そんな事を考えて悔しくて仕方が無かった時も、『彼女』は俺を抱き締めてくれた。

俺は『彼女』の胸の中で悔しさから、泣き叫んでいた。


そして、10歳の時・・・・・・・俺を可愛がってくれてた婆ちゃんが・・・・死んだ。

でも・・・俺は葬儀の時に泣かなかった。否、泣く事を許されなかった。
光の剣継承者がこんな事で泣いたら恥だ。と、親父に言われたからだ。

その晩、俺は『彼女』に会った。夢の中でも素直に泣けない俺の肩を、『彼女』は優しく抱いてくれた。

その行為が、『泣きたかったら泣けばいい』と言ってる気がして、俺は気付いたら・・・『彼女』の胸の中で泣き叫んでいた。

それと同時に、俺の中に・・・『彼女』に対する淡い感情が生まれ始めている事に気付き始めていた。



「おはようリナ・・・・って、何だよ?俺の顔に何かついてるのか?」

そして、現在俺の可愛い保護者様が、ジッと俺を見詰めている。

「え?あ、ううん!別に、おはよう。」

ニッコリ微笑むリナは、とても綺麗で・・・俺は思わず抱き締めたくなる衝動に襲われちまう。
それを振り払う為に、もう一度リナに朝の挨拶をした。

「もうお腹ペコペコ。ガウリイ早く食堂に行くわよ。」

「・・・」

「ガウリイ?」

ヤッパリリナは可愛くて、俺はそんな彼女に見惚れちまう。
そんな俺を訝しげに声を掛けるリナ。

俺はその声にやっと我に返ると、思わず苦笑いをしていまった。

「あ・・・あぁ、メシな?俺も腹ペコだぜ。」

リナの顔を盗み見ながら俺は思う。彼女に会えて本当に良かったと。








                  続く