compromise heart |
「リナ、次の街まで後どれ位だ?」 ある日の昼前時の事、金髪に青い瞳、背が高い美形の青年が優しく、隣を歩く栗色のふわふわした髪、赤い瞳の小柄な少女に問い掛ける。 「う〜ん、そうねぇ・・・後一時間位かしら。どうして?」 ニッコリと微笑み尋ねる愛らしい少女に、青年が透き通るような声でこう言った。 「リナ〜、俺腹減った〜」 リナと呼ばれた少女に行き成り抱き付き情けない声を出す青年に、リナと呼ばれた少女は顔を真っ赤にしながら懐から出したスリッパで思い切り青年の頭をどつきまわした。 「だぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!いきなし乙女に抱き付くんじゃない!あたしだってお腹空いてんだから我慢しなさいよねガウリイ!」 「え〜!まぁ仕方無いか、で?今度の街は何があるんだ?」 ガウリイが尋ねると、リナは少し考えてから首を傾げる 「そうねぇ、そう目立った特産品は無いけど確か山の幸が豊富だって聞いた事あるわ。」 「ふ〜ん、そっか。じゃあ急ごうぜ。」 「うん!」 ガウリイが笑いながら街の方向に指を差すと、リナも頷いて歩き出した。暫く歩くと前方から凄まじい勢いで馬車が走って来た。 「うわぁ〜!メチャメチャ派手な馬車ねぇ。」 もうこれでもかとゆう位あちこちに金の装飾を施された馬車は突然彼等の目の前で止まる。 「うおおおおおおおお!姫ぇ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 扉が開いたと思った瞬間、銀髪に立派な髭を生やした恰幅のいい中年の男性が飛び出してきた。しかもガウリイに抱き付き、泣き出したのだ。 (このおっちゃん・・・・まさか、ホ○?) リナがそんな事考えているとガウリイが焦った声で喚き出した。 「誰が姫だぁ〜!誰がぁ!!俺は男だぁ!!」 その言葉、否、ガウリイの声に驚いて中年の男性はガウリイから慌てて離れる。 「その声は・・・・男か?」 「あのさぁおっちゃん、こいつは確かに綺麗な顔してっけどさぁ・・・どう見たって男でしょうが?」 確かに、190以上はある身長。男物のアーマーを着けて斬妖剣みたいなでかい剣を持っている女などそう居るわけが無い。しかし、中年の男性はリナを見た瞬間フッと鼻で笑った。 「フッ、そうか・・・ゼリアス、お主が姫を連れ出したのか?貴様ヴォルビィーナ様の恩義を忘れ、仇で返すとはいい度胸!しかし、姫を男の姿に変装させる方法は中々考えたが貴様も女に変装するのならもう少し胸を詰めるべきだったな!」 「ぬわんですっつてぇ〜!!言い掛かりも大概にせんかい!ディル・ブランドぉ!!」 「なあぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜」 「何で俺までぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」 リナの呪文で中年の男性とガウリイは仲良くお空の星になった。 暫くして――――――リナの目の前にはガウリイと、ボロボロになった中年の男性が座っていた。 リナとガウリイの自己紹介を終えてから、リナは指をポキポキ鳴らしながら引き攣った笑みで問い掛けた。 「すわぁて〜、おっちゃ〜ん。ちゃきちゃき話してもらいましょうか?ガウリイを姫って呼ぶ訳と、この超絶美少女のあたしを男呼ばわりする訳を?」 「・・・・・おっさん、早く言っちまった方があんたの身の為だぜ。」 リナの迫力と本気で心配するガウリイに、中年の男性は渋々話し始める。 「儂はジュアラール国の王ヴォルビィーナ様の側近で、ジーマ=トレント。ある方を探しておる。」 「それがガウリイのそっくりさん?で、そのそっくりさんはどんな人なの?」 一瞬の沈黙、ジーマは溜息を吐くとガウリイをジーっと見詰めながら静かに答える。 「ヴォルビィーナ様の第2皇女じゃ、名前はファルリーア様。」 そこまで言った時行き成りジーマはガウリイの手を取り、縋り付いて来た。 「ガウリイ殿!頼みがある。お主、姫の代わりを務めてはくれぬか?」 「「えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」」 リナとガウリイの絶叫が見事にハモった。 「勿論タダとは言わぬ、お礼はいか程でも出そう!この通り!頼むガウリイ殿!」 「そうねぇ〜、じゃあさおっちゃん、こんなもんでどうかしら?」 何時の間にかリナがソロバンで弾いた数字をジーマに見せていた。 「うぬっ!こ・・・これはちと高くはないか?」 「あ〜ら?嫌なら良いのよぉ〜、あたしはぜ〜んぜん困らないしぃ〜」 この場合ガウリイの意思は、尊重される事は無い。 「ぬ・・・、よ・・良かろう。では早速、ガウリイ殿はこの馬車で一緒においで願おう。」 ジーマはガウリイの腕を掴むと馬車へと連れ込もうとする、それには流石のリナも慌てた。 「ちょ、ちょっとジーマさん、どーしてガウリイだけなのよぉ?」 「済まんなリナ殿、お主が一緒では少々問題があるのだ。ここに宿を用意しておく、それと申し訳無いが、リナ殿には姫の捜索をお願いしたい。詳しい話は使いの者をよこす。では、又後で会おうリナ=インバース殿。」 「リナ〜!!」 「ガウリイ!しっかりやんなさいよぉ〜!!」 リナは離れていく馬車に手を振りながら見送った。 「ちぇっ・・・・やるわねジーマさん、もうちょっとふんだくれば良かったわ。」 一人取り残されたリナはゆっくり歩き出す、寂しさを胸に秘めて。 リナが街に辿り着いたのはちょうどお昼時、どこかで食事でもと考えていると広場の方が何やら騒がしい。 「どうしたの?」 近くに居る若い男に声を掛けると、意外な言葉が返ってきた。 「よ、ゼリアスじゃないか?お前ふざけてんのか?ファルリーア様のご結婚が決まったんだよ。それより何カツラ何か被ってんだよ?ははぁ〜さては仕事サボっるな。」 「ファルリーアの結婚ですって!ど〜ゆう事よそれ?」 リナの素っ頓狂な声に、若い男は気持ち悪そうに言う。 「ゼリアス・・・お前悪いもんでも食ったのか?」 「残念ねぇ、そんな名前じゃないわよ。で?ファルリーアが結婚てどうゆう事?」 若い男はマジマジとリナを見詰めると、行き成り胸を触った。 「行き成り何するんじゃあ!!」 リナのアッパーカットが見事に男に命中する。 「あてて・・・・ごめん、本当に僕の知ってる奴にそっくりだったから。君女の子だったんだ?」 「胸触らないと分からんのかい、あんたは!?」 「あはは、ごめんごめん。僕ジャンって言うんだ、よろしくそっくりさん。」 ジャンはニッコリと笑う、背はリナより少し高めの黒くて腰まである長い髪に黒い瞳のスラリとした体型の青年とゆうよりは少年と言った方が良い位の年齢である。 「あたしはリナよ、じゃあ改めてジャン、詳しく教えてくれるかしら?」 「あぁ、ファルリーア様の結婚だろ?最近ファルリーア様の調子が悪くてずっと寝込んでたらしいんだけど、今日やっと起き上がれるようになったから延期してた結婚の日が決定したんだって。」 (成る程ね、結婚まじかの姫が行方不明になったなんて相手側に知られる訳にいかないもんね。で、身代わりを見付けたから取り合えず今の内に既成事実を作っちゃおうって作戦か・・・ちょっと待って?じゃあ、ガウリイが結婚するって事!!!) 思わずリナが青褪める、ガウリイが結婚!リナの頭にはそれしかなかった、男同士とか身代わりだからガウリイ自身が結婚する訳じゃないとか、全く考え付かない。 (急いで姫様探さないと) リナは焦る気持ちを何とか押さえてその場を後にした、だから気が付かなかった。リナの少し後ろで彼女を見詰める黒いフードを目深に被った人物が居た事を。 つづく |