伝 説

















 「じゃ、ちょっと行ってくるわね」と。

 到着したばかりの宿屋からリナが一人で出て行く。

 ここはマーデルという町の宿屋で時刻は夕方。

 普段ならこんな時間に出かけたりしないで、夕食に何を食べようかと
 思いを馳せている頃。

 それなのにリナが出かける理由は、急な魔道士協会からの呼び出し。

 何でも、俺達がこの町に入った所を見かけた奴がいて、
 その報告が魔道士協会のお偉いさんの耳に届いたらしく。

 「高名なリナ=インバース殿にぜひ頼みたい事がある」と、
 わざわざ『今日中に協会まで出向くように』と伝令が来たのだ。

 ・・・まったく、明日にしてくれりゃいいものを。

 内心リナだって面倒くさいと思っていたはずだが、さすがに協会は
 敵に回したくないらしい。

 「ついて行こうか?」と尋ねた俺に、
 「あんたはすぐ寝ちゃうからいいわよ」と、にべもなく断られ。

 結果、リナだけが出向いて俺は留守番。

 もし帰りが遅くなりそうなら先に飯を食べておくようにと。

 ・・・協会のお偉いさんと一緒に食事。

 さぞかし高級メニューが出るんだろうな。

 そこだけはうらやましいぞ。







 「ただいま〜っ!! あーっ、疲れた!!」

 リナが宿に帰ってきたのは食堂のラストオーダーギリギリの時間。

 「えっ、もうラストオーダーなの!? 
 なら、メニューのここからここまでぜーんぶ持って来て!!」

 いつもなら一応何を食べるか迷って決めるのに、注文のチャンスは
 一度きりとあって即断即決。

 あーあ、ウェイトレスのねーちゃん固まってるし。

 「ガウリイは何食べたのよ?」

 「俺は普通にディナーセット7人前」

 「ちぇ、あたしも食べたかったな〜」

 「また明日にでも食えばいいじゃないか」

 その顔はどうせ仕事を引き受けてきたんだろうに。

 なら、明日もここに泊まる事になりそうだな・・・。

 「ううん、明日は駄目なの」

 依頼が入っちゃったから、と、言いながら手は運ばれてきたばかりの
 料理を片付けるために、忙しなく動いている。

 「駄目って、ここを発つのか?」

 「そ。 依頼受けちゃったから。
 後で詳しい事を説明するから、今はご飯を食べさせて〜っ!!
 あたしもうお腹ペコペコなんだから〜っ!!」

 すでに二皿目の料理に手をつけながら、リナが絶叫してみせた。








 食事を終えるのを待って、二人で部屋に戻る。

 この場合、俺がリナの部屋の方に行くのはお約束という奴で。

 「じゃ、説明するわね」

 防具のみを外した格好でベッドに腰掛けて、今日自分が
 呼び出された理由を話し始める。

 「まず、あたしが呼び出された理由はね、協会に来ていた
 依頼の条件にピッタリだったからなの。
 依頼主はここから2日ほど掛かる村の村長で、内容はあたしにしか
 出来ない事をして貰いたいんですって」

 「出来ない事って・・・盗賊いぢめとかか?」

 すっぱ〜ん!! と、間髪を置かずスリッパが飛んできた!!

 いつも思うのだが、普通のスリッパが何故にこんなに痛いのだろうか。

 当たった顔をスリスリとさする俺には頓着せず、リナは話を進める。

 「あのね、これは魔道士協会を通じてきた話なのっ! 
 あたしの容姿と実力を見込んで頼んできたんだから!!
 それに依頼料も結構良かったし・・・」

 そこで思い出し笑いをするって事は、よっぽど実入りのいい依頼のようだな。

 「で、今回はあたし一人で受けるつもりなんだけど」と。

 あっさりと言う。

 一人で・・・って、何っ!! 俺は置いてけぼりなのか!?

 「何でだよ!! リナ一人って、何かあった時はどうするんだ!?」

 確かに魔法の事は解らんが、もし魔族の襲撃とかに遭ったら!!

 「一応依頼内容を聞いてたら、そういう心配は無さそうなのよ。
 それにネックがあってね、その村にあと2日で着かなきゃいけないの。
 あたし一人なら明日の朝からレイ=ウイングでかっ飛ばしたら期日までに
 余裕で辿り着けるんだけど。
 あんたも一緒なら、明日の早朝から馬車でも出してもらわないと
 絶対間に合わないの。
 だから、今回は留守番!! って事でどう?」

 「どうって・・・。
 んな、お前を一人で行かせる様な恐ろしい真似できるかよ!! 
 もし何か遭った時に止め役の俺が居なきゃその村に何が起こるか・・・」

 ああ恐ろしい、と心の中で呟いた声が聞こえたのかどうか。

 「なぁーに失礼な事ほざいてくれてるのよっ!!!!!」

 リナの怒号と共に、ダブルでスリッパが飛んできた!!!

 それは軌道を違える事無く、べしこん!! と再び俺の顔面に命中!!

 実は何か細工でもしてるんじゃないだろうかと思うほどの破壊力。

 う〜ん、リナ、恐るべし。

 「ま、とにかく俺はリナに付いていくからな。 
 俺にでも手伝える事位あるんだろう?」

 「ま、正直ガウリイが居てくれたら安心だと思うんだけどね、あたしも」

 てへへ、と笑うリナは可愛いんだがなぁ。

 「じゃ、依頼は二人で受ける。 これで決まりだな?」

 「そういう事。 でも途中で別行動も有り得るからそのつもりでね」

 「へいへい、りょーかい」

 「じゃ、評議長に連絡取って、馬車の用意をしてもらうわ。
 きっと明日の早朝出発になると思うから、早めに寝ておいてね」

 そう言いながら、リナが部屋を出て行く。

 早速評議長とやらに連絡を取りに行くのだろう・・・。

 「お休み、リナ」

 「お休み、ガウリイ」

 窓からリナを見送って、ある事に気が付いた。

 「依頼内容、何にも聞いてないぞ、俺・・・」










 次の日の早朝、静かに宿の前に一台の馬車が乗りつけた。

 「リナ=インバース殿とガウリイ=ガブリエフ殿をお迎えに来た。
 お二人を呼び出して頂きたい」

 宿の主人に話しかけているのは評議長の使いか。

 コンコン。

 「ガウリイ、準備はいい?」

 「ああ、いつでも出れるぞ」

 昨日のうちに荷物を纏めておいたから、あとは部屋を出るだけだ。

 「なら、行くわよ。 今からすぐ出発するから」







 俺が下に降りると、ここの払いをそいつがしているのが見えた。

 リナの奴、ちゃっかりここの宿代も依頼料の中に含めたな・・・。

 そして、大きめの弁当まで受け取って、俺達は馬車に乗り込み
 何たらって言う村を目指して出発したのだった。








 「で、リナ。俺達はどこに向かってるんだ?」

 ゴトゴト、馬車が揺れる。

 「だから、さっき説明したでしょ、もう忘れたの?」

 ゴトゴト、がくんっ!!

 「んっ、痛てっ!!いや、さっきから馬車が揺れて、あっちこっち、
 ガンガンぶつけるからっ、記憶が飛んじまって、なっ!!」

 リナより図体のでかい俺は、必然的に頭を打ち付ける回数が多くなる。

 ガクンっ!!

 「いった〜い!!あたしまで頭打っちゃったじゃない!!
 あのねっ、うわっ!!
 もう一遍だけ言うから、耳の穴かっぽじって聞くのよ!!
 今から向かうブルサムの村で、2日後70年ぶりのお祭りがあるのよ。
 で、ムグッ!
 今回の依頼はっ、その祭りの準備と巫女の代役を頼む、って」



 ・・・リナ・・・あんまり喋ると舌噛むぞ。



 ・・・先程から、会話の所々に悲鳴が混じるのは俺達の乗ってる馬車が
 全力疾走しているのと、道が悪くてものすごく揺れるからだ。

 御者が馬車の手綱捌きに自信があると言っても、この悪路では
 どうしようもないような位、凸凹だらけのガタガタの道。

 おまけに道幅は馬車の幅とほぼ同じ。

 一歩間違えれば、あの世行きってとこか。

 ちなみに馬車を操っているのは依頼主の評議張本人。

 最初見かけた時は、てっきり使いの人だと思ったんだが・・・。

 途中何度か休憩を挟みつつ、期限に間に合うようにと、
 日暮れまでひたすら馬を走らせ続けたのだった。









 「クラウス評議長、それでは一足先に失礼いたします」

 「ああ、よろしく頼む」

 「じゃ、ガウリイ。あたしは先行くから後から来てよ♪」

 夕飯の弁当を食った後、一息入れる間もなく。

 浮遊の呪文を唱えて、リナが宙に舞い上がる。

 「ああ。 リナ、あんまり無茶苦茶するなよ」

 ・・・なるべく早く行くからな。

 「一言多いっ!!」

 ベーッと舌を出してこちらを睨んだあと、ヒラヒラと手を振りながら
 暮れゆく空に舞い上がり、飛び立つリナを見送った。






 「さてと、ガウリイ殿。 私達はそろそろ寝る準備に掛かろうか」

 評議長が俺に言う。

 「今夜の見張りは俺がやりますから、評議長はゆっくりと身体を
 休めてください。 一日手綱を握って疲れたでしょうから」

 「そうさせてもらうよ」

 返事をしながらも、彼は焚き火の近くに腰掛けたまま。

 「寒くないですか?」

 まだ春というには程遠い季節、しかもここは山の中。

 夜ともなれば結構冷える。

 「なーに、ガウリイ殿は私も魔道士だというのを忘れているようだね。
 私はほら、この通り」

 差し出された手の中には紅い、あったかそうな光玉が握られていた。

 「これは私の魔法で作ったカイロだよ。中々ぬくくて重宝しとる」

 ふと、それをを両手で包んで小さく呪文を唱え・・・。

 「ほい」

 ポン、と投げられたのはさっき見たのと同じ光の玉。

 しかし評議長の手の中にも同じ物が。

 「ガウリイ殿も使いなさい。 風邪を引いたらいかんからな」

 「ありがとうございます」

 俺はそれを大切に懐に入れた。

 程よいぬくもりが伝わってきて、何故かほっこりとした気分になる。









 「時にガウリイ殿」

 もう寝たと思っていた評議長が、俺に話しかけてきたのは真夜中ごろ。

 「リナ=インバース嬢とガウリイ殿の関係とは・・・
 一体いつからなのかね?」

 ブッ!!

 いきなり何を聞いて来るんだ!! このじいさんは!!

 突然の問いかけに、忍び寄っていた眠気も一気に退散する。

 「私のように魔道士協会の中でもそれなりの位置に就くと、
 他地方の色々な話を聞く機会が多くあってね。
 そういう時に、ここ最近世間を騒がせている君達の話を聞く事も多い。
 我々と同じ、魔道士の彼女に関しては、特に、ね。
 数多くの傑物を輩出する事で有名なゼフィーリアでも、
 屈指の天才魔道士リナ=インバースが共に旅をする人物とは、
 一体どういう男なんだろうと仲間内で常々噂になってはいたんだよ。
 巷の評判だけを聞いてると、リナ嬢には極悪非道なドラまただの何だのと、
 あまり芳しくない話の方がよく聞こえて来る。
 まぁ、その殆どが彼女に倒された盗賊や何やの流言と思ってはいるが。
 わしら魔道士仲間の間では、多少やんちゃな所はあるが、
 魔術の構成力も理解力も抜群で、若いのにかなりの凄腕。
 と、まぁ、功績の方がより多く取り上げられてるがね。
 ・・・とにかく彼女は若く、そしてとてつもない才能の持ち主だ。
 しかし今は旅の魔道士という事で、その実力の片鱗を垣間見る機会に
 皆あまり恵まれなくてね。
 とにかくリナ嬢に関しては我々魔道士仲間の注目の的、と言った観がある。
 その彼女が、信頼できる相棒として君を側に置いている、と来れば。
 二人が一体どういう関係なのか、私で無くとも興味のある事だよ」

 おいおい、魔道士協会の偉いさんともあろう人が
 ゴシップ好きってのもどうかと思うぞ。

 「それに、君は超一流の剣の使い手と聞き及んでいる。
 ・・・光の剣の勇者の末裔とも。
 確かに魔道士と剣士の組み合わせは最高のコンビと言ってもいいが、
 リナ嬢の周りには、常に常識では考えられないような
 危険が伴っているとも聞く。
 それこそ魔族が関わって来る様な事件がポコポコとね。
 普通の神経の持ち主なら、とっくに逃げ出していても良さそうなものだ。
 それは側にいた君が一番判っていると思うが?
 それでも変わらず共にいると言う事は・・・ずばり、恋人なのかね!?」

  〜っ、げっほげほげほっ!!

 「お、俺はあいつの保護者ですよ!!
 一人にしておくと危なっかしくて見ていられないから・・・」

 突然の事に驚いてむせる俺を尻目に、
 「何を言っておる。 
 どう見てもリナ嬢の方がしっかりしている様にしか見えんわい」と。

 そして続けられた言葉。

 「・・・実は大まかながら、二度のサイラーグでの事件や
 ディルス、クリムゾン、セレンティアなんぞの報告が入って来とる。
 殆どはたまたまその場に居合わせた者の証言や、後から
 現場に駆けつけた人間の報告書だがね。
 ただ、当事者たるリナ嬢からの報告書が一向に提出されていないんだよ。
 それも我々の憶測を呼ぶ一因となっているんだが。
 それと、余りにも事件の内容が現実離れしている、という事もある。
 唯一クリムゾンの時の報告書はリナ嬢自身の物だったらしいが、
 私の手元に渡ったときには半分以上が紛失していた。
 その時の担当者が本気にしていなかったらしく、
 ずいぶんいい加減な扱いをしていたようだ。
 もちろんその担当者は後に処分を受けたが、失われた報告書は戻らん。
 で、去年のレッサーデーモン大量発生事件の折に
 各魔道士協会の代表が集まる機会があってね。
 その時、リナ嬢の事が話題になった。
 彼女こそ、ここ数年の大きな事件の真実を知る人物だと。
 そのうち彼女には正式に、魔道士協会全体からの出頭要請が来るだろう。
 その時にあいまいな報告だと此方としても困るんじゃよ」

 「・・・その話と、今回の依頼とは何か関係でもあるんですか?」

 かなり剣呑な声になってしまったが。

 今日会ったばかりの人間にあれこれ話してやる義理も無い。

 しかし、評議長は顔色一つ変えずに。

 「いや、まったく関係ない。 ・・・これは純粋な私の好奇心だよ」と。

 そして。

 「今回依頼を受けてもらったこと対する私なりの感謝の気持ちだね」

 と抜かしやがった!!

 「感謝の気持ちとやらで、あいつのいない所で根掘り葉掘り
 情報を聞き出すんですか!?」

 はっきり言って、不愉快極まりない。

 が、その後の彼の言葉に俺の印象はガラリと変えられた。

 「なに、一目彼女に会った時から後ろ暗い事は何もしていないと
 確信しておるよ。
 依頼の話をしている時は、輝くような表情で嬉々として
 依頼料の上増しを狙っていたが。
 ふとした瞬間、垣間見える表情を見つけてね。
 彼女の目は濁る事無く、深い経験を積んだ者の思慮深さを持っていた。
 ・・・かなり辛い経験もしてきたのだろうね、君達は」

 「ええ」

 俺は言葉少なに答えた。

 まだ、こいつの目的が読めないからだ。

 「なら、今私が少しでも事情を聞いておけば、審問会の時に少しでも彼女の
 有利に働くように動く事も出来るだろうから」

 しかし、評議長は思いもかけない言葉を述べた。

 「・・・何故ですか? 昨日会ったばかりのあいつに、そこまでの好意を
 示して頂く理由が考え付きません」

 何か、下心でもあるのか!?

 「何、長い事生きてきた者のカンと、知り合いから来ていた手紙でね。
 彼女に非はなく、ひたすら事態の改善に尽力したことを証明すると。
 もし彼女に何か困った事があったなら、力になってやってくれと」

 真摯に話を続ける評議長の言葉には、嘘は無い様に思われた。

 「・・・俺は、リナみたいに上手く話せません。
 でも、これだけは言える。
 リナはいつも前向きに、困難に立ち向かって行くすごい奴です。
 俺達を導き、最善を尽くす事を躊躇わない奴。
 それが、リナ=インバースです。」

 だから、俺は思ったままを告げた。

 今まで共に歩んだりナとの日々。

 確かに危険と隣り合わせの道だったが、後悔した事は一度だって無い。

 「で、君はそこに惚れたのかい?」

 「な、何でそこに話が行くんですかっ!!」

 やっぱりこの爺さん、只のゴシップ好きか?

 「知り合いからの手紙に『あの二人はラブラブですから引き離さないように』
 と注意書きがあったのでな」だって!?

 「誰なんですか!!その知り合いって奴は!!」

 そこまで俺達のことに詳しい人物・・・!?

 「ま、そこは言わぬが花と言う奴だろう? 今回の依頼はリナ嬢にとって
 ちょうどいい息抜きになると思うよ。
 今回の依頼に危険は無いし、彼女に依頼したのも溢れる若さと
 この辺りには稀な容姿に因る所が大きいのだから。
 ・・・それに彼女ならきっと最後までやり遂げてくれるだろうし。
 私も彼女の美しい舞を見られるのが楽しみだよ」と。

 にこりと笑った彼の顔に、俺はすっかり毒気を抜かれてしまった。

 「さ、正直に言いなさい。 君とリナ嬢の関係は?」

 外見こそロマンスグレーという印象なのに、まるで好好爺と
 言うに相応しい顔で笑う評議長。

 ・・・俺は『負けた』と思った。

 「参りました・・・お察しの通りですよ。 
 ただし、俺はまだ気持ちを伝えてもいませんが」

 そして、日頃胸の内に抱えた気持ちをぶちまける。

 「俺は全力疾走で走るリナを見守りたい。
 リナ一人じゃ重たすぎる物を、一緒に抱えて生きて行きたい。
 人の身には過ぎた力を持っていようが、常人には考えられない様な
 修羅場を潜り抜けて来ても。
 ・・・あいつはやっぱり、女の子、なんです。
 傷つけば痛いし、悲しい事があれば、胸を痛めるような。
 巷で言われるような噂話なんて、リナの本質をちっとも判っちゃいない。
 まぁ、盗賊殺しというのは、俺も何度かつき合わされたから認めますが。
 確かに金に汚い所もあるし、普通よりは大食らいで。
 誰よりも仲間を大事に思ってる癖に、それを素直に出さない天邪鬼だけど。
 一度でも、あいつと共に戦ったなら判る筈です。
 誰だって、あいつの虜になるほど魅力的な奴で。
 本当に、自分よりも弱い奴にはトコトン甘くて、自身には
 滅茶苦茶厳しい奴なんです。
 そんなあいつだから、俺は。
 辛くても、哀しくてもどこにもやり場がないのなら。
 俺に何が出来るかは判らないけど、彼女を護りたい。
 戦いからでも、そうでなくても。
 いつも側で支え、見守るものでありたい。・・・それが俺の本音です」

 今まで一度だって、本音を口に出した事は無かった。

 あいつの前ではのほほんとしたクラゲな保護者で在りたかったから。

 そんな俺に、
 「いつまでも女の子だと思っていたらしっぺ返しを食らうぞ」と
 意味ありげに笑う評議長・・・???

 「さて、寝ようか。どうせ明日は早くから出発するんだろう?」

 「ええ、一刻も早くリナと合流したいですから」