『遺書』 vol.9





















 いやはや。

 倒れている間に思いついた別の目的のために、地下室に来てみればいきなりのすごい展開。
 雰囲気や会話からいって、あのガウリイが!!
 まちがいなくまぐれ当たりだろうけど、犯人を追い詰めているような雰囲気だったりしているのである。
 レイスとかって名前のここの感じの悪い下男が、アルコール臭の立ち込める地下の隅っこで往生際悪く何やら喚いてるのが見えた。

(多分おっちゃんの酒樽に毒でも入れようとしたところを、野生の勘でガウリイに目撃されたってなところ?)

 ガウリイとそいつの姿を見たあたしは、すぐさまあたりをつけた。
 うみゅ、リナちゃん推理力も全快っ♪♪
 なのに、くらげな相棒に先を越されて悔しい気もするけど、まー手間がはぶけたので今回はこれもよし。
 ここに来たのは犯人探しが目的じゃない。
 ちなみに、あたしはすでに体調も良くなっている。
 倒れた時はむちゃくちゃ最悪な気分だったけど、おっちゃんの呪文とぬくい煎じ薬はききめ抜群だった。
 あの人が魔法医師免許持ってるってものどうやら本当のことなんだろう。

 さて。
 ……じゃ、とりあえず。

「眠り<スリーピング>♪」

 状況を打破すべく、この体調でも効き目抜群な初歩呪文を唱える。
 立ってるだけで酔っ払いそうな場所で、よく状況もわからないのに犯人を締め上げるのは不毛だし。
 先にガウリイの脳みそを締め上げて、あたしが寝ている間に何が起こったのか聞いとかなきゃなんないのだ。

(ふっ。決まったわね)

 ぱた、ぱたりこ。
 短い詠唱が終わった途端地下室に二回、音が響いた。

(って…………をいをい(汗))

「って、ガウリイ。あんたまで床に眠ってどーするッツ!(怒)」
「ぐはぁっ!?」
「ほら、さっさと起きてこいつ運んでちょーだい。ついでに状況の説明もお願いねっ♪」
「……あのなっ、この状況でいきなし呪文唱える奴があるかっ!」
「な、なによ。何か文句あんの?あんたがきっちり論理的にこいつを追い詰められるとは思えないし、何より知らない間に事件が解決するのはあたしがヤだし!……って、ちょっとガウリイ?」

 ほんとーに珍しく、無茶苦茶不機嫌な顔のガウリイはますます眉をひそめた。

「リナ、お前倒れた後なんだからちょっとは抑えて行動しろ」

(あ。ガウリイが……んな顔してるのって、まさか)

「こいつだって、わざわざ呪文使わなくてもオレが捕まえればいいだけのことだろ」
「あ、や、でもこれは病気じゃない……んだし……あう(汗)」

 平たく言えば生理痛というかそれに伴う体調不良というか。
 不機嫌な表情の向こうに見えるガウリイの心配に、しどろもどろになる。
 そりゃ相棒がいきなり倒れたんだから考えてみればそーか?!
 でも、あたし的にはのどもと過ぎればなんとやらとゆーか、今は全然平気だし。

「ほ、ほら。もう大丈夫よ。今回はもーすでにだんだん魔力も回復してきてるみたいだしっ……て、ぢと目したってしょーがないでしょっ!?」
「へいへい」

 諦めたのか、はーっとため息をついてガウリイにレイスを担がせる。
 床に転げたレイスの汚れた手を見て、あたしも小さく吐息を吐いた。

(さーて。じゃあ、こいつがグレイのおっちゃんの命を狙った理由を調べないとね。依頼内容とは違うけど、まぁ行きがかった船だし。この屋敷の騒動も、そろそろけりをつけていいとこでしょ)。


******


 昨日の夜、屋敷に居たのは恐らく六人。

 あたしとガウリイとグレイのおっちゃん。
 それからエイミィさん、エイミィさんが連れてきた御者さん、最後にレイス。

 ……グレイさんが度々命を狙われた状況をみれば、奥さんの遺産という動機がある彼女の実家コートランドの人々は、薄い線だと思う。
 だっておっちゃんは無用心な人だし、強くないし。
 お金とコネのある貴族が本気で殺そうと思うなら、もっと着実な方法があったはずである。
 それこそ、暗殺者を雇うとか。使えるなら、魔法を使うとか。

 それに、倉庫の配置を故意に間違えてグレイさんに毒を飲ませるのも。
 客の部屋に毒蛇を入れるのも、グレイさんの寝酒の習慣を知って、ストーブを爆発させようとするのも。
 明らかに内部犯だからこそできる仕業だ。

「全員疑ってかかるなら、アイダさんかレイスか、グレイさん自信が一番怪しいかったんだけどね」
「……本人を前にそれを言うか?嬢ちゃんよ(汗)」

 じと目をするグレイのおっちゃんに、肩を竦めてあたしは言った。

「でも、地下室の床を調べたら毒の反応があったわ。ついでに言えば、酒が染んだ個所からばかりえらい濃度でね。ちゅー訳で、アイダさん説もグレイさん自殺の線も消えて、犯人はレイス、あんたに決まりよ」
「はん、例え床にねずみ取りの毒が染み込んでいたって、一年に一度は駆除のために撒いてるんだ。何の不思議もねえだろ」

(むむ。そうきたか)

 あたしの尋問に、せせら笑うレイス。
 案外頭はいいようである。
 しかし、彼が一番簡単に犯行を行えるのは間違いない。

 倉庫のそれも、ガウリイの部屋のそれも、厨房でのそれも。
 まるで子供の悪戯のような他愛のない細工だ。
 それがたまたま人を傷つける結果にならなければ、そのまま日常に埋もれてしまい、犯罪として認識されないような。
 けれども、例えそれがどれだけ他愛なく簡単なことでも、身近な人間への悪意と殺意があってなされたのなら、どんな言い訳をしようと悪戯で済む話じゃない。

「で?きりきり吐いてもらいましょーか」
「……無実の相手に酷いことしやがる」

 レイスの何やらむかつく口答えは無視無視。

「なら質問を変えるわ。いつもならとっくに帰ってる時間なのに、あんたはこの屋敷のどこで何してたの?」
「暗くなってきたから、帰るのが面倒くさくなって居座ってただけさ」
「帰ってるはずの人間が、ここにいること自体が怪しいうんだっつーの!」
「……で?レイス、お前は今までどこにいたんだ」
「色々」
「いろいろって?」
「廊下とかそのへんの部屋とか」
「……地下室とか?」
「だから、あれはちょっとした出来心で旦那の酒を失敬してただけなんだよ。ったくしつこい」
「そ。じゃ、話は変わるけど。夜中に厨房で、ストーブが爆発したあれは……」
「爆発?なんだそりゃ。オレを犯人扱いするのは止めてくれよ。旦那もこっちのよそ者さんお二人も、自警団に訴えるぜ?」

 壁に凭れたガウリイが、小さく表情を動かした。

(そーよね。あの爆発音に、屋敷内にいて気づかないなんてことがある?)

 かなり離れた部屋の、ガウリイでさえすっ飛んできたぐらいなのに。
 レイスの言葉はそのまま流して、あたしは淡々と言った。

「あのストーブには異物が仕掛けられた痕跡は見つからなかった。かといって、誰かが魔法であの爆発を起こしたのなら必ずあたしには分かったと思う……犯人は他の方法を取ったはずよ。例えばストーブの手入れが悪かったりして、大量の煤<タール>が詰まってると爆発することがあるってのは一般家庭の常識だけど」

 昨日夕方アイダさんが料理を終えた時、珍しくレイスはストーブの掃除を買って出たらしい。
 これは今しがた料理番のアイダさんに聞いたこと。

「掃除したはずのストーブが爆発するってのも変な話よね。煤もいっぱい出てきたし……でも例えば、この状況が故意に用意されたら?」
「昨日はたまたま、ちょっとサボったんだ」
「……そんな、真っ黒な手をして。掃除しなかったって?」
「!」

 あたしだって実家で何度も掃除当番に当たったから分かる。
 どれだけ洗っても、ストーブの煤は一日や二日は爪の間から取れやしない。
 ……それに。
 綺麗好きで安全第一のアイダさんは、嫌がるレイスをせきたてて、週に一度は掃除させていたらしい。
 なら今日、一回ぐらい掃除をサボったからって、ストーブがいきなり爆発するようなことはないだろう。
 たぶん、レイスはこれまで掃除するたびに煤をためておいて……今日、その煤全部を使ってストーブの通気をふさいだのだ。

(夜中に、おっちゃんがお酒を温めるのを知っててね)

「ま、あたしは偶然巻き込まれてたって訳」
「下手すりゃ昨日の夜は何事もなく過ぎて、今朝アイダが怪我する可能性だってあったんだぜ。レイス」
「ち、ちゃんと、俺がやったっていう証拠はあるのかよ?!」
「じゃ、いつも掃除した後の煤はどこに捨てているのか、自警団の人に説明するのね」
「な……だいたい、そんなことして俺に何の得があるってんだよ?え?」

 それに関しては、ガウリイの話を聞いててちょっと思い当たるところがある。
 けれどこれは言っても仕方がないことだから、あたしは肩を竦めるだけ留めた。

「おい、人の話を聞けよ!違う違うっ……俺は昨日……」
「昨日?」
「あのひとの」

 あう……言っちゃうのか?
 ちらり、とあたしとグレイさんは視線を合わせた。レイスが、薄ら笑いを浮かべて言い募る。

「俺は、あの人の、エイミィ様のお手伝いをしてたんだ。ほらあの方は目が不自由だろ。いろいろ不便だと思ってそれで、だから、そんなことする暇なんてなかった」
「えーと」
「す、ストーブも途中まで掃除しようとして時間が遅くなりそうだからやめたんだ。旦那が怪我したのは悪かったけど」
「レイス。お前の無実をエイミィが証言すると思うか?」
「してくれるさ!!」

(本当に?)

 さっきの視線からすると、グレイのおっちゃんはあたしと同意見なんだろう。
 怒鳴るレイスは、不安を必死で否定しているように見えた。
 きっとあのひとは彼を庇わない。

 レイスも薄々知っている。自分は……利用されただけなんだと。



 部屋を出て、ガウリイがきょとんとした顔でこう言った。

「??でも、あいつにだって、グレイさんを傷つけたって何の得もないんじゃないのか」
「あー、まー……そうなんだけどさ」
「さぁな、レイスの都合はよく分からねぇ」

 言葉を濁したあたし。
 そして複雑な顔でグレイのおっちゃんが溜息をついた。
 どんな理由にせよ、顔見知りに殺されかけたと知って気分のいい人間はいないだろう。

「何にしろ、オレはレイスを街の警備隊に連れて行かなきゃな」
「旦那さま、私も行きますよ」

 外で待っていたアイダさんが、笑顔が消えたままの顔でそう言う。
 レイスを運ぶ最中にここに出勤してきた彼女は、まだ、若い同僚のしでかしたことを全部は信じられないようだった。

「……何かの間違いだといいのに。レイスの母親がどんなに辛いか……」
「えーと、アイダさん。それ本当に殺されかけた被害者の前で言う台詞ぢゃないわよ?いくらグレイさんがむさ苦しいとはいえ、実は心は繊細だったりしたら大変だしっ」
「……あのな嬢ちゃん、庇うか貶すかどっちかにしろよ(汗)」

 謝るアイダさんに苦笑しながら手を振って、グレイさんは肩を竦めた。

「まぁ、あの女がレイスとずっと一緒にいたとでも証言すれば話は変わるが……」
「なるが、何なんだ?」
「気位の高いエイミィが、うちの下男ごときとそう長い時間を過ごすとは思えねぇんだよ」
「??」
「兄ちゃん、つまり実際問題レイスのアリバイはないだろうってことだ」

 重苦しい雰囲気に、あたしは溜息をつく。

「……エイミィは、もう帰ったのかしら」
「あ〜〜、それなら!」

 突然ぽむ、と手を打ってガウリイがおもむろに言う。

「たぶん、そろそろ表の馬車のところにいるんじゃないのか??」
「ちょっとあんた。何で知ってんのよ」
「約束したからな」

 さらりと、問題発言をかますガウリイ。

「……や、約束っ?ちょっと何のよ、何の!?」
「お前さんの調子が悪かったろ。夜のうちに、街の病院まで乗せてってもらう約束をしたんだが」
「あぁ」

 グレイのおっちゃんまでが頷くのを見て、あたしは頭を抱える。
 をいをい。
 あたしを心配してくれてのことなんだろうが、男だけで勝手に話を進めるんじゃないっての。
 だいたい……『あの日』の不調でいちいち病院行ってられるかひ(汗)

「あのねっ〜〜……それに、夜のうちにって、なんでそんな時間までエイミィさんここにたのよ?帰ったんじゃなかったの」
「なんか、中庭の離れでいたぞ?」
「ありゃあ、いつものことさ」
「どーゆーことです?グレイさん」
「あいつも、勝手にうちを家捜ししてるのさ。『真の青玉<ブルー・ローズ>』の製法を求めてな」
「ひとんちを勝手にっ?(汗)」
「あいつにとっちゃ、俺の家じゃないんだろうさ。それはいいが、どうする嬢ちゃん。俺はレイスを街まで引っ張ってくが、嬢ちゃんはまだ調子が悪いか?」

 おっちゃんに問い掛けられて、あたしは答えた。

「全然平気。おっちゃんの薬が効いたわ。あんがと、も、大丈夫よ」
「リナ〜〜〜」
「うっさいガウリイ!ったく、本当にもう大丈夫だってば……し、心配かけて悪かったわねっ」
「ど、どーしたんだリナ。お前さんがそんな素直だなんて、やっぱりまだ調子が悪……」
「しつこいわぁあああああああああああああっ!!(怒)」

 調子が悪かった原因が原因だけに、恥ずかしいわ決まり悪いわでついつい口調が乱暴になる。
 今回はもう痛みの波が通り過ぎちゃったからもう平気なのよ!
 などと男相手に言えるわけもなく……ま、ガウリイにこうゆうのを分かられてもヤだけど、それとなく察してくれ。
 頼むから。

 赤くなって睨むあたしとどうも納得顔にならないガウリイを少し笑って、先にグレイのおっちゃんが動いた。

「じゃ、裏から馬車を引っ張り出してアイダと出掛けてくるさ。留守番を頼んでいいか?」
「分かったわ。……って、その前に、エイミィに断りを入れてこなきゃね。ついでに、レイスのアリバイに関しても、聞いておいた方がいい?」
「そうしてもらえりゃ有難いな。腹が立ったらあいつに何するか、俺は保証できねぇしよ」
「だだだだんなさま、そりゃ色々とまずいでしょうが!相手はコートランドのお嬢さまなんですよ?」
「はっはぁ。相手がお嬢さまだろうが、相手がいい女なら惚れるし、嫌いなタイプならならムカつくだろうよ」
「だからって、ったくしょうがないお人なんだから」

 天を仰ぐアイダさん。ううみゅ、こうゆう主人がいる家で働くのも気苦労が多かろう。
 なぐさめがてら、あたしは言った。

「だいじょーぶ、あたしに任せて……ムカついたら、やっぱし呪文の一つや二つはかますかもしんないけど♪」
「任せていいのかい、それは?あたしゃ不安だよ(滝汗)」
「リナ。お前さんはまた」

 溜息をつくガウリイの呆れた目線に、肩を竦める。

「ガウリイ。心配しなくっても、あたしだってお尋ね者になるのもヤだから加減するわよ」
「いや、オレがしてるのはそーゆう心配じゃ……いや、それも心配か(汗)」
「ん?何か言った?」
「……なあ、リナ。聞いていいか。お前さん、これからあのひと相手に腹立てる予定なのか?」

(んな心配げな顔しちゃって。女子供にゃ甘いんだから)

 でもあたしは冷たく言う。

「まだわかんないわ」


(でもあの爆発騒ぎに、あの人も……顔を出さなかったじゃない)

 話を聞けば、エイミィさんは一度、ガウリイをレイスと間違えて呼んだという。
 レイスもまた、貴族にコネがあるようなことを言ってガウリイの糾弾をかわそうとした。
 ただの推測だけれども、そこに見える線を辿れば、なんとなくレイスの犯行の動機が浮かび上がってくるような気がする。

 例えばだけれども。
 ……レイスが貴族の彼女に想いを寄せていたら?

(だから、ガウリイの部屋に毒蛇なんかが入れられていたってのはうがちすぎかしら?)

 ガウリイが彼女の腕を支えて廊下を歩いた、その夜に。

 あたしが爆発に巻き込まれたのは、そもそも厨房に行くって行為が予測できなかったのだから、本当に偶然だろう。
 そしてあたしの部屋には、妙な生き物なんか入っていなかった。ガウリイの部屋だけに突然妙なものが仕掛けられたのは何故か?となると、ひょっとするとレイスの嫉妬が原因ではないかと思われるのだ。

 そしてそんなレイスが彼女のために何かしたいと思ったら。その方法を選ぶことをしなければ。
 それは彼が勝手にしでかしたことかもしれないし、邪推するならば、エイミィさんがレイスにほのめかしたことかもしれない。 事実として残っているのはレイスの行為だけだけれど、それに彼女が影響を与えんじゃないかと考えるの、何も難しい想像じゃない。

『あの男、ジェンダルは』
『この屋敷は、青髭屋敷と呼ばれています』

 あの人は、あたし達にもそう言った。

 言葉ってものには毒がある。
 比喩的表現で嫌味のことをそう言うけれど、言葉ってのは本当に毒になりえるとあたしは思う。
 それも遅効性の毒。
 百回同じことを繰り返せば、それが本当になる……とは言わないけれど、人間それが本当のような気がしてくるのは確かなのだ。

 悪いのは、グレイさん。
 彼さえいなければ、彼の奥さんは……そんな風に。

『知らねえよ。間違えたって証拠もねぇだろ?ジェンダルの旦那がうっかりしたのさ』

 レイスは雇い主のことを一度、彼女のようにジェンダルと呼んだ。

(しかも、あたしにはエイミィさんが確信犯だったよーに思えてしょうがないのよ)
(レイスの名前まで知っていたのに、ここの使用人に知り合いはいないなんてエイミィがしれっと言った、ガウリイあんたは覚えてる?……訳ないか。くらげだしね)

 でも、この推測をいつものように披露するのは、なんとなく躊躇われた。

 彼女が女だから?貴族だから?
 ……それぐらいのことで、このあたしが悪人(かもしれない人)に遠慮するいわれはない。
 じゃ、彼女が男なら誰でも思わず鼻の下伸ばしちゃうような、儚げな美人だから?
 これは半分正解。
 別にガウリイが、相棒のこのあたしより彼女を信頼するって心配してるわけじゃないけど。

 しょーじき言ってああゆう人を責めたって、傍目には彼女が被害者にしか見えないってのが問題なんである。
 無茶苦茶可愛い小動物が、えてして肉食だったり狡猾だったりするもんだけど、人間ってばビジュアルに騙されて愛玩しちゃうのが良い例で。
 そうゆう小動物を攻撃するのは理不尽だが社会的に不利!!なのよね〜。

 そして。
 答えのあとの半分は、きっとあたしが『女』だから。
 多分大丈夫だと思うけど、保証はない。
 ガウリイが彼女をちょっとでも庇えば、きっと、あたしはもんのすごぉくムカついて腹が立つだろう。
 庇う相手が男なら全然気にも止めないし、実際そうゆうことは時々あるってのに。今回は同じように流せないだろう。
 彼女が女だから?綺麗で、貴族だから?ガウリイの実家のこと、なんか得意げに喋ってたから?
 ほんっとに下らない。
 そう思うのにコントロールの利かない感情。

 あたしの前で、別のひとに触られないで。男の顔をしないで。

(分かってる。いや、今分かった)

 あたしに、ガウリイの鈍感さを責める資格はない。
 長らく保護者をやってくれるあいつに、こんな自分を知られて……『ぎょっと』されるのを、あたしは恐れている訳だ。
 必死で隠しておいて、気付いてくれない、なんてよくも言ったもんだわ。

 らしくない、卑怯な自分に溜息を吐く。
 いつか片をつけなきゃならない問題だった。
 でもまずは目先の仕事を片付けるか、とあたしはそう思った。










to be continued …