トラウマ |
<4> 「でも!あんたと関わると、ぜぇぇぇぇぇぇったいに良いこと無いのよ!」 赤らんだ顔を、誤魔化すようにリナは大声を上げてそう言った。 でも、俺は何だか嬉しかった。 リナが嫌いなのは”俺自身”じゃないということに。 今もまだ怒りにまかせて何かを言っていたが・・・ふと目の前で揺れる髪に触れてみ たくなった。 「リナ・・・」 手を伸ばしてみた。 「・・・・な、何よ!?」 慌てて俺から遠ざかるリナ。 不信そうに俺を見ている。 「いや、べつに・・・まぁ、いいさ」 「?」 「うん、うん。」 「・・・・・・??」 益々解らないと言いたいようにリナは首を傾げた。 「さて、それより飯は?」 「は?」 全く予期していなかったのだろう。 いきなりの話の展開にリナは、そう聞き返した。 「だから、俺、腹減った・・・」 「・・・か、簡単なモノしか作らないわよ・・・」 「いいよ、それで♪」 「わかった。」 そういうと、リナはブツブツ文句を言いながらも料理を開始した。 その様子を俺はソファーに座って、じっと眺めていた。 カチャカチャ食器を出す音や、流しの水の音。 野菜を切る音に、グツグツと湯が沸く音・・・ 「結構こいうのもいいかもなぁ・・・新婚みたいで♪」 ぼそっと呟いた俺の言葉を聞き止めたのか・・・リナがキョトンとこちらを見た。 そして、ニヤニヤ顔が緩んでしまっていた俺を睨み付け 「な、なに?また変なコト考えてないでしょうね!?」 ビシッと包丁を突きつけて言う。 まぁ、変なこと・・・と言えば変なことだよなぁ・・・。 今まで、何となく気になるってだけだったリナだけど・・・よく考えたら俺ってばリ ナのこと好きだったんだよな。 昔も、今も・・・。 そんなことを考えていて、自然とまた顔が緩んでいたのだろう。 不振そうに、それでも強い口調でリナは言いきった。 「何かしでかしたら姉ちゃんに言いつけるから!!」 「え!?」 さすがに、”ルナに言いつける”・・・と言う言葉には冷や汗が流れた。 そりゃ、そうだよなぁ・・・昔のような小さな子供なら俺の脅しも、ルナのお仕置き も怖くて何も言えなかったリナだが・・・ 今なら間違いなく言いつけるな(笑) 「・・・わかったよ、何もしない。」 「本当でしょうね!?」 「・・・・・・・・」 「な、何なのよその沈黙は!?」 「別に♪」 ま、今のところは何もしないさ・・・。 だって、リナの飯が食えなくなるしな♪ 「何とか言いなさいよ!!」 「あぁ、何もしないよ」 「そう、それなら良いけど・・・」 そう言うとまたトントン包丁の音が聞こえ始めた。 「・・・ま、ルナに迷惑かけないイタズラならするかもなぁ♪」 こっそり呟いた俺の言葉はリナには聞こえなかったようだ。 「うっ!!」 俺はキャベツとベーコンのコンソメスープを口に含んだ。 「・・・なに・・・不味い?」 それっきり言葉を失ったように硬直する俺を凝視してリナはそう聞いた。 でも、今はその言葉さえ俺の耳にはかすかなざわめきとしてしか届かない。 いま俺の頭を占めている言葉はただ一つ。 ”美味い!!” いや、ハッキリ言って美味すぎる! リナの手料理を食べたのは今この時が初めてなんだが・・・こんなに料理上手だとは 思わなかった。 しかも、どちらかというとこのスープは俺でも作れるくらい簡単なモノだ・・・しか し、この味の違いと来たら・・・ 俺は、そんなことを考えつつさらに今度はミートソースのスパゲッティを口に含ん だ。 「うぉ!?」 そして、また大衝撃を受けた。 「な、なんなのよ・・・そんなに不味いかな??」 俺の反応にリナはハテナマークをいっぱい浮かべて首を傾げていた。 しかし・・・美味い。 スープも、スパゲッティもどれも簡単な料理のはずだ・・・ なのに、なのに・・・ ガツガツガツ・・・ 「あ?え?なんなのよ・・・変な風に呻いたとおもったら、ガツガツと・・・ (汗)」 呆れたリナの声が聞こえる。 そして、目の前にあったモノをたいらげた俺は・・・ 「おかわり!!」 そう叫んだ。 そして・・・ 『いい加減にしろ!!』 とリナに怒つかれるまで食い続けた。 「やっぱ・・・これは嫁さんにしないとな♪」 to be continued ... |