風の彼方から






















 0.始まり



 鳥達が一斉に翼を広げる。
 これからずっと遠くにまで飛んでいくんだ。風に乗って。

「気をつけてね」

 声をかけると答えるように一斉にさえずり返してくれる。
 みんなの声に合わせて、あたしも歌った。無事に渡りを終えられることを。また、ここで会えるよう願っていると。

 あたしとみんなの歌は、最後の一羽の姿が見えなくなるまで続いていた。










「ただいま」
「みんな出発したんだな」
「うん。
 ……次も、また会えたらいいな」

 家に戻ったあたしを迎えてくれたのはガウリイ。
 あたしを、この世界に引き留めたヒト。

「さ、冷めないうちに食べちまおう。のんびりしてたらアメリア達が来ちゃうぞ」
「うぇ〜〜〜〜。やっぱ、行かなきゃダメ?」
「うーん……俺も好きじゃないからリナの気持ちは分かるんだけどな」

 ガウリイの作るご飯は大好き。最近はあたしだって随分色々作れるようになったんだけど、やっぱりまだガウリイには適わない。
 いつか絶対追いついてやるんだから!………っていうのはさておき。
 テーブルに付いたあたしは、目の前に並べられた美味しそうなご飯さん達を見て溜息をついた。

「やだなぁ……」

 今日の夜に開かれる舞踏会とかいうものに、あたしはガウリイやアメリア達と出かけることになっていた。
 本当は、もっと前から言われていたらしいんだけど、あたしがまだ人間の世界のことが分からない事とかを考えてずっと先延ばしにしてくれていた……らしい。
 でも、そうそういつまでも延ばせないらしく、今夜出かけることになったのだ。

 ……もちろん、頭ではちゃんと了解している。
 ガウリイに迷惑かけたくないし。人間の世界って、上の立場の人に嫌な感情を持たせてしまうと大変なことになっちゃうらしいし。
 ガウリイの助けになるんなら、ちょっとくらいは我慢するのもいいんだけど。

 やっぱ、やなものはイヤなのだ。

「ドレスとかは嫌いじゃ無いけど……羽根飾り、付けてる人がいたらやだなぁ」
「……そうだよな」
「ね、ガウリイ。ちゃんと傍にいてよね?」
「あぁ。勿論だよ」

 髪を撫でられて、あたしはほんのちょっとだけ、安心した。
 ガウリイがいてくれるなら……うん。大丈夫。

「じゃ、いただきま〜〜す♪」
「どうぞ♪」