風の向こうに










 3.人間


 身体が熱い。
 息が苦しい。


 ……どうして?
 どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないの?

 ………どうして………人間は………



 あたし達を、コロスの?







 ぼんやりと目を開けると、見たことのない物ばかり目に入ってきた。
 身体の上に何かがかけられてて重たい。
 体が石みたいに重くて、上手く動けない。それでもやっとの事で顔を動かすと、何かがあたしの額の上からぽとりと落ちた。
 左腕がずきずきする。

 ……そっか。あたし、森の上で人間に射られたんだ。

 やっとのことで姉ちゃんが作ってくれた羽衣を脱いだとこまで覚えてる。でもその後は……
「!」
 足音がする。
 誰か来る?
 慌てて目を閉じる。生きてるって事はすぐに殺す気はないのかも知れないけど……人間は何をするか分からない。
 あたし達から羽を奪い、それで着飾っている人間なんて……

 足音が一度止まり、ゆっくりと近づいてきた。
 すぐ傍で止まる。
 何かを拾い上げる気配がした。そして水の音。
 ひやりとした物が額にのせられ、思わず反射的に目を開けてしまった。

「何だ、気がついてたのか」

 人間だ。
 今のところ敵意はないみたいだけど……用心しなくちゃ。

「まだ動かない方がいいぞ。と言っても、熱が下がったばかりで動ける状態じゃないか」

 悔しいけどその通りだった。
 今だって、本当は逃げ出したいのに身体は全く言うことを聞いてくれない。

「……警戒するのは当たり前、か。まぁいい。
 お前さんを殺す気はない。安心しろ、と言っても無駄かもしれないが…ま、どちらにしろ動けるようになるまではじっとしているしかないからな。
 水でも飲むか?毒なんか入ってないぞ」

 差し出される入れ物に入った水。
 本当はのどが渇いて仕方ないけど……人間の出す物なんて信用できない。
 動かないままでいると、そいつはちょっとだけ笑いながらそれをあたしの近くに置いた。

「しょうがない奴だな。水はここに置いておく。気が向いたら飲めばいい」

 そう言い残し、人間は出ていった。







「はぁ………っ」

 苦しい。
 腕が痛い。
 のど渇いた。
 でも……人間は……信じられない………よ………………







 あれ?
 何だろ……

 のどを何かが滑り落ちていく。
 ………おいし………


 ぼんやりした頭。目の前の物もよく分からない。
 唯一分かったのは、太陽の金色と、優しい空の蒼。

 そっと頭を撫でられる。
 ちっちゃい頃……よく姉ちゃんがしてくれたみたいに。

 姉ちゃん……


 …………来て………くれた……の?………




 そのまま、またあたしは眠ってしまった。
 優しい手に誘われるように………