I 妹 な関係










(5)


「ちょ・・ちょっと姉ちゃん、これってどう言う事ぉ?」
「いいからいいから。・・ほら、いいわね?」


「ルナ!!リナを何処にやった!!」

空港の待ち合いロビーで、姉ちゃんに言われるままに姉ちゃんの変装をして立つ
私の背後から、ガウリィの凄まじく大きな声が聞こえて来た。
・・・本気で、怒った声。

「リナなら搭乗手続きを済ませて、もうゲートの向こうに行ったわよ。
・・・少し遅かった様ね、ガウリィ。」
「ふ・・っざけんなよルナ!」

姉ちゃんは、私の側の席で、これまた変装して後ろ向き。
そ知らぬ顔で、腹話術もどきを演じている。

「あら、別にふざけてなんかいないわよ?仕事が思ったより早く終わったから、
早く帰る。それだけじゃない?」
「リナは・・リナは行くって言ったのか?」
「いいえ。でも、『行かない』とも言わなかったけど。」


「ゼルガディスさん、どうやら間に合いましたね。」
「・・・それにしても、あいつが本気で怒ったトコなんか、初めて見るぞ。」
「そりゃあ!リナとの愛ゆえですよっ!!」
立ち上がって、ガッツポーズを取ろうとしたアメリアを何とか押しとどめ、ひたすら
出歯亀に徹する二人の姿は、結構注目の的だったりする・・・。


「大体ねぇ?単なるお隣の貴男にそんな事言われる筋合い、ないんじゃなくて?」
「そ・・・それは・・。」
「ほら、やっぱり何も言えないでしょ?・・・こんな状況でさえ、はっきり言えない
うじ男くんに、リナは渡せないなぁ。」

ね・・・姉ちゃあああん。
そこまではっきり言わなくても・・・相変わらず厳しい(汗)。

でも。
姉ちゃんの言う事は一理だよね。
ガウリィだって、本気で私の事好きなら・・・言って欲しいよ、はっきりと。
例え、姉ちゃんが相手でも。

「さて、無駄話はこれまでよ。リナは連れて行きますからね。悔やむなら・・・
はっきりしない自分を悔やむことね。それじゃあ、さようなら。」

・・・言ってよ、お願い言って!
たった一言でいいから・・!


「・・・リナは、俺の女だ!!」

ガウリィの大きな声。ざわめく人の波。

「リナは俺の女だ!絶対何処にも行かせない。行かせてたまるかっ!!」

ロビーの人達の視線が、一斉に集中する。
恥ずかしい・・・けど。

「あら、でもリナが『行く』って言ったら・・・貴男どうする気だったの?」
楽しそうな、姉ちゃんの声。
「リナが何て言っても、俺は絶対に手放さない。リナのいない生活なんて、死んだ
ほうがマシだからな。例え家族でも・・・あんたでも、リナは絶対に渡さない!!」

姉ちゃんが、静かに微笑んだ・・気がした。

「・・・ねぇ、ガウリィ。昔、私とした約束、覚えてる?」
約束?ガウリィと姉ちゃんが?
「あぁ、勿論覚えてるさ。『何があっても、リナは俺が護る』・・・今もそのつもりだ。」

「そして、『絶対俺の嫁さんにする』・・・だったわね。・・・ふふ、覚えてたんだ。」

よ・・・・嫁さんって・・・・うっそぉ?!


「・・・だってさ、リナ。貴女どうする?」
「・・・・・・・・・・・・・へ?」

姉ちゃんだと思い込んで話していた人物が、実は私だと知ったガウリィの顔ったら。
「る・・・ルナぁ!てめっ、謀ったなぁああ!!」
真っ赤になったガウリィの顔。
あぁ・・・私の大好きなガウリィだ。
「惚れた女と私の区別もつかない様な男についても、不幸かも知れないわよぉ?
・・・それでも、行かない?」

小さく首を傾げた姉ちゃんの表情からは、『あんたもはっきりしなさいね!』っていう
優しい微笑み。

「わ・・・私、ね。」

はっきりと、自分の気持ちを打ち明けよう。
姉ちゃんに報いる為に、ガウリィに答える為に。

「私・・正直言って、姉ちゃんに『一緒に行こう』って言われた時・・・迷ったよ。
今の私には、やりたい事って何なのか、はっきりした答えがなかったから。・・・でも!
それすらはっきりしてないのに、一緒に行っちゃったら、それって・・逃げてる事と
変わらない気もする。
それに・・・私、やっぱりガウリィと離れたくないよ、姉ちゃん!」
「・・・・!リナ。」
「それで・・・後悔しない?」
「しない様に頑張る!」

はふ、と。
姉ちゃんが漏らしたため息は、どことなく淋しそうだった。

「・・・だ、そうよ。男冥利につきるわね、ガウリィちゃん?」
いつの間にか、ガウリィに近寄っていた姉ちゃんは、それこそ天使の様に微笑んで・・・。

どごしっ!!

「・・・・・・・・・っ!!」

が・・・ガウリィのお腹に、思いっきり拳をめり込ませていた。

「あら?昔はあんなに弱っちかったのに、女の前で倒れないぐらいには、鍛えたみたいねぇ?」
「る・・・ルナ・・・お前さんなぁ・・・・(涙)」

呻くガウリィの顔に触れたかと思うと・・・・えぇええええ?!!

「る・・な?」
「まったく。こんないい女を目の前にして、よりにもよって妹の方に惚れるかな、
あんたってば。」
「・・・・悪いな。」
「ま、いいけど。・・・それじゃあ、また、ね。」
「あぁ・・・また、な。」


颯爽と去って行く姉ちゃん。
誰よりも怖くて、誰よりも私達を大事にしてくれる人。
「・・・姉ちゃん、また来てよね!!」
振り返らずに、手を振る姉の姿は・・・・凄く格好いい『女』だった。


「リナ・・・・。」
「・・・・え〜と・・・・ご免なさい。」

ゆっくりと近付いて来たガウリィの手が、私の頬を優しく撫でる。
ガウリィの顔を見ると・・・・あ、唇に紅い口紅の跡(怒)。
「ガウリィちゃ〜ん。口紅が残ってますよぉお?」
「!あ、いやこれは不可抗力で・・・(汗)。」

「感動ですぅうう!!これぞまさしく『愛の形』っ!!
あぁガウリィさん、私感激しましたぁあ!!」

・・・・・はい?

良く見ると、涙をだっくだく流したアメリアと、頭を思いっきり抱え込んだゼルガディスが
柱の陰から現れて・・・・えぇえええええ?!!

「・・・済まん、ガウリィ。その・・・いいモン見せて貰った。」
「あぁあああ!今日この時を、私一生忘れませんっ!!」

・・・・・・・・謀られたぁああああ!!



その後。
空港を無傷で出られたのは、何故かリナ1人だったのは・・・推して知るべし(爆)。