I 妹(まい)な関係









(5)


信じる事が、試される時?


昨日の夜。
私達に宣言した通りに、彼女・・・シルフィールさんが尋ねて来た。
私はそそくさと逃げる様に自分の部屋に戻ったので、その後どうなった
とか、いつ帰ったとかは知らない。
隣なんだから、それ位は解るだろうと思うだろうけど。
・・・隣の物音を、聞きたくなかったから。
私はさっさとベットに潜り込み、ただひたすらに時間が過ぎるのを待った。

そして、翌朝。


「ガウリィご免!寝坊したっ!!」

結局、昨日は一睡も出来なかった。
おかげで、朝方うとうとしたのが、一気に寝入ってしまったみたいで。

ガウリィの家の玄関を開けると、何故かいい匂いがしてきた。
ありゃ?ひょっとして、待ち切れないで何か作ってるのかな?

「あら、お早うございます、リナさん。」

部屋から顔を出したのは・・・・。
ガウリィの上着だけを軽く羽織り、私のエプロンをした・・・シルフィールさん。

「ガウリィ様なら、まだお休みですよ。昨日はちょっと夜更かししてしまって・・。」

よ・・夜更かしぃいい?

シルフィールさんの制止も聞かずに、ガウリィの寝室へ飛び込むと。
裸(少なくとも、上は)のガウリィが、幸せそうに眠っていた。


・・・・・・・う、そ。


「・・・・んん〜・・・おう、リナお早う・・。」

むくり、と起き上がると、掛布団がめくれてガウリィの躯が見える。
・・・・あ、パンツは履いてた(爆)。
「・・・あれ?俺何でこんな格好してんだ?」
「ガウリィ様〜、お目覚めですかぁ?」

これぞまさしく三つ巴ってヤツですか?

幸せそうな表情のシルフィールさん。
何事か理解出来ず、呆気にとられるガウリィ。
顔面蒼白の私。


「リナさん、そろそろ学校へ行く時間じゃないですか?」
「お、おいシルフィール!」

何も言えない私に、彼女の勝ち誇った様な声。
口元に・・・あの嫌な微笑み。

胃がキリキリする。胸がムカムカして気持ち悪い。
「リナ?おいどうしたんだリナ!」

ガウリィの声が、やけに遠いなぁ・・・・。

情けなくも、私はその場で倒れ込んでしまった。


「・・・んで?しっかり警告を無視した揚句がこれか。」
「ガウリィさん!これは絶対悪ですっ!!」

矢継ぎ早にゼルとアメリアに責め立てられても、返す言葉も無かった。

リナは、あの後高熱を出して、ベットの上でうんうん唸っている。
「あ〜見えても、リナはとっても繊細なんですよ!それなのにそれなのにぃいいい!!」
血管ぶち切れそうな勢いで、俺に拳を震わせているアメリア。

・・・おひ、リナが聞いてたら怖いぞ、それって。

「今回ばかりは、流石にフォロー出来ないからな。」
「解ってる。・・・それにしても、本当に油断してたな、俺。」
まさか、あの大人しそうなシルフィールに嵌められるとは。
女って・・・恐ろしいぜ。
「どうするんだ、これから厄介だぞ?」
「取り合えず、リナの誤解を解くさ。」
それが一番大変だとは思うけどな。
「いいえっ!!こんな事になったのは、全てガウリィさんがふがいないからですっ!!
そんな人に、リナを任せるなんてできません私!こうなったからには・・・きゅう。」

エキサイトしたアメリアの首筋に、ゼルが思いきり手刀を振り降ろした(汗)。
「お・・・おひ?」
「大丈夫だ。これぐらいでこいつは参らん。」「いや、そうじゃなくて・・・・。」
こいつ・・・こんなヤツだったっけ?
「兎に角、お前の蒔いたタネだから、後は何とかしてくれ。そうじゃないと、その度
俺らは大変なんでな。」
「あ、あぁ、解った。」

アメリアを抱えて去るゼルを見送り、つくづく俺は納得した。

・・・やっぱ、あいつ変わったわ。



「・・・・ガウリィ・・・?」
「いいから大人しく寝てろ。今何か作ってきてやるからな。」
立ち上がろうとした俺の服を掴み、リナが小さく呟いた。
「・・・側にいて。」
布団で顔を隠しているが、わずかに震えている布団が、リナが泣いている事を
示している。
「リナ・・・俺の話しを聞いてくれるか?」
「・・・・・うん。」
俺は、小さく震えるリナを布団越しに抱えながら、ゆっくりと話しだした。

「あんなトコ見せといて、何にも無かったって言っても信じられないかも知れないけど。
俺、本当にシルフィールとは何もないからな。絶対に。」
「・・・・・・・・・。」
「何回でも言うけど、俺が本当に惚れてるのはリナだけだ。リナだけしかいらないし、
リナしか抱きたく無い。・・・ここまで、解るか?」
「・・・・・・・・・ん。」
「こんな、熱出させる程不安にさせといて、俺を許せないと思うけど・・・頼むから・・
別れるなんて、考えないで欲しい。俺の側から、離れないで欲しいんだ。」
「・・・・・・・・・。」

ゆっくりと。
布団から顔を出したリナの顔は、一生懸命涙を堪えていた。
「・・・俺の話、都合いい言い訳にしか聞こえないか?」

ふるふる。
頭を横に振る。

「信じて・・・くれるか?」

小さく、頷く。
そして、細い腕を俺に差し出し、ゆっくりと首筋に廻してくる。

「私・・・。」「うん?」
「私・・・あんなトコ見たのに・・・すっごくショックだったのに・・・なのに・・
ガウリィと別れたいとか・・・思わなかった。」
「・・・それで?」
「でも・・・あの人の言ってる事とか・・表情が・・すっごく嫌で・・・だから・・。」
「だから、苦しくなった?」
こくん、と頷く。
「・・・・ガウリィ。」
「何だ?」

「お願い・・・私以外の人と一緒に居ないで・・・私だけのガウリィで居て・・・。」

一瞬、自分の耳を疑った。
あの超がつく程照れ屋のリナが、目一杯、俺に『好きだ』って言ってくれている。
うわぁ・・・・まずい、すっげ〜嬉しい!
今、めちゃくちゃリナが欲しいかも!

「り、リナ・・・っ!」

ぱたん、く〜く〜く〜(爆睡)。


・・・・なる程、こういうオチかい(怒)。


涙を浮かべたまま眠るリナの顔を見て、俺は冷酷なまでに沸き上がる感情を感じた。


俺のリナを傷つけた事。

・・・たっぷりと後悔してもらおうか、シルフィール。