I 妹(まい)な関係









(6)


「シルフィール。お前さん、俺と付き合いたいんだろ?」
「は、はい!勿論です!」
「俺に惚れてるんだよな?」
「そうです。・・・どうしてそんな事聞くんですか?」
「いや・・・。それじゃあ、だ。」

俺は、自分でも驚く程の微笑みを彼女に向けた。

「俺の言う事は何でも聞いてくれるよな、当然?」



みっともなくぶっ倒れてから、3日経った。

あの時、ガウリィに看病してもらったみたいなんだけど、実はあんまし覚えていな
かったりする。
ただ、何かその・・・とんでもない事言ってしまったみたいで(汗)。
余りにも幸せそうに、『好きだ』『リナだけだ』『愛してるよ』な〜んて言いまくる
ガウリィには、流石に閉口したけど・・・ま、いっか。

不思議と、シルフィールに関しての事に、私はまったく怒っていなかった。
ガウリィが、「1週間・・いや、4日でいい。待っててくれないか?」って、真剣な
顔をして私に言った時、本当は嫌だったのに、何故か素直に信じる事が出来た。

ガウリィは裏切らない、って。

「こ〜ゆ〜のを、『肉を斬ったら骨が出た』って言うのかしら?」
「それをいうなら、『肉を斬らせて骨を断つ』でしょおが。それに、『雨降って地固まる』ってのが、この場合適切なのよ。」
こひつ、受験大丈夫なのか?
「でも、ガウリィさんって、相変わらずリナ以外では何考えてるのか解らない人よね。」
「・・・そぉなの?」
「う〜ん・・・よくは解んないけど・・・ゼルガディスさんも時々怖いって感じる時
あるって言ってたよ?」
ガウリィが怖い?あのゼルが?
「今回の事に関しては、『シルフィールも気の毒だな』って。・・・どうしてかなぁ?」



家に向かう途中で、ガウリィと並んで歩くシルフィールを見た。
私が咄嗟に立ち止まると、何故か凄い勢いで彼女が私目掛けて突進してきて、一気に。
「ごめんなさい許して下さい私が全部悪かったんですぅうううう!!!」
「・・・・はい?」
「もう2度とこんな事しません!ガウリィ様にも近付きませんから許して
下さいぃいいいい!!」
「あ・・・あ、あの?」

あれからたった3日しか経っていないのに、良く見た彼女はすっかりやつれていた。
しかも、妙に怯えた様にガウリィをちらちら見ては、私に謝り倒している。

「え〜と・・・。」
「もぉ何も言わないで下さいぃ!私は消えますからさようならぁああああ・・・・・!」

土煙をあげて走り去る彼女を見て、満足そうに微笑むガウリィ。

・・・・ゼルが言ってたのは、この事なのかしら?
それにしても、何やったんだ、こひつわ。


「だから、ちょっと思い知らせてやっただけだ。」

私の髪をいじりながら、いとも簡単に言って退けるガウリィ。
ちょっとって・・・アレは尋常な雰囲気じゃあなかった気がするけど。

確かに・・・私の知らないガウリィが、まだまだ居そうである。


「ま、でも。少しはシルフィールに感謝しないと、なぁ。」
「どうしてよ?」
「そりゃあ、俺達の絆が、より深くなったって事で。」

気がつくと、いつの間にか私を押し倒すような恰好のガウリィが、目の前に迫ってきていて・・。
「ちょ、ちょっとガウリィ?この体勢は何かしら(汗)。」
「何って、リナに迫ってるトコ。」
「そうじゃなくて!!!って、わぁああ、ちょっとタンマっ!」
「・・・駄目か?」

言うが早いか、素早く唇に触れたかと思うと、ゆっくりと手を私の服から侵入させようとしている。
余りにも真剣な眼差しに、一瞬心臓が跳ね上がって・・・・じゃなくて!

「嫌、駄目、ぜっっっっっったいに駄目ぇえええ!!」
あ、危うく流されるトコだった!!
「えぇええええ?ここまできてかぁああ?!」
ここまでって、どこまでやねん!
「どうしても、駄目か?」
あう、そんな上目遣いで見ないでよぉ。
「ど、どうしても駄目っ!」
「・・・・ちっ、上手くいくと思ったのに。」
おひ。
そういう独り言は、小声で言ってよ。

ぶちぶち文句を言いながら、私から離れるガウリィ。
た・・・助かった、のかな?
「なぁ?」
「は、はい?」
「それじゃあ、いつになったら許してくれる?」
「う、うぇえええ?」
「なぁなぁ、リナちゃんってば♪」

・・・こいつ、絶対解ってて言ってる。
全く・・・本当にずるい男なんだから。


私は、ガウリィに近付き、耳元で小さく呟いた。
ガウリィは、私の言葉に優しく微笑むと、「仕方がないか、惚れた弱味だ」って言ってくれた。


「もう少し、大人になるまで待っててね、ガウリィ。」

<END>