I 妹(まい)な関係











(3)

嵐の前の静けさって、こんな感じ?


「うひゃあああ、ガウリィさんってば、すっごいカッコイイ!」
「・・・他人事だと思って・・・。」

今日は久しぶりに、仲良し4人組(笑)で夕食会。
山程の食材を両手に抱え、前もロクに見えない状態のアメリアと私。
「そういうアメリアこそ、ゼルとどうなんよ?」
「え?え・・・・あはははは、やだ、リナってば!」
お〜お〜、真っ赤になってやんの。
・・・こりゃ、そうとう進んでるな(爆)。

ドン!ばさっ、ごろごろごろ・・・。
「ひゃあああ?!」「きゃっ!」「うみゃう?!」

何かにぶつかったみたいで、抱え込んだ荷物が辺り一面に散乱する。
あれ?
確か、私達って2人だけだったよね・・・?・・・って!!
目の前には、私達にぶつかったと思われる人が・・・あう、頭から卵・・。
「す、すいませんごめんなさい!!あぁああ、どうしましょうリナ?!」
「大丈夫ですか?本当にスイマセン!!」
「・・・・いえ、私も不注意でしたから・・・はは。」
ハンカチで顔を拭いているけど、その顔はあからさまに引きつっていた。
「あ、あの、私のウチが近くにあるんですけど、宜しかったらお風呂使って下さい!」
「え、でも・・。」「いいから早く!!」

荷物を適当に拾い集め、私達はその人を攫う様に家へと走った。


「本当にすいませんでした!」
お風呂から上がった彼女に、改めて二人で詫びを入れる。
「いいえ、本当に気になさらないで。私も良く前を見て無かったし。」
にっこりと微笑む女性を、改めて見る。
腰まである、ストレートの黒髪。
透き通る様な白い肌。漆黒の瞳。
スタイルは抜群だし、女の私から見ても、『綺麗な女性』だなって思う。
性格も良さそうだし、言う事なし!って感じかな。
・・・・男が放っておかないタイプってヤツ?
「あの・・・それより、失礼ですけど・・・貴女、リナさん・・ですか?」
「へ?あ、はい、そうですけど?」
気のせいだろうか?
彼女の口元が、一瞬だけど吊り上がって見えたのは。

「自己紹介が遅れましたね。私、ガウリィ様と同じ大学に通う、シルフィールと
申します。」


「・・・何でこうなっちゃうのよ、リナ。」
「仕方ないじゃない、元はと言えば私達が悪いんだから。」

ぶつくさ文句を言っているアメリアと二人、台所で食事の準備をする。
居間では、ガウリィ達(シルフィールも含めて)が、楽しそうに何やら話している。
「だって、折角久し振りの4人の夕食会なのに。」
「いいじゃない、人数が多い方が楽しいでしょ?」

とは言うものの。
正直、私としても面白く無い訳よ。
さっきから見てると、シルフィールってば、ガウリィとばっかり話してるみたいなんだもん。
それに、あの表情。
「いやだわ、ガウリィ様ったら。」
・・・大体、ガウリ?様』ってのは何なのだ?
やだ・・ひょっとして私、焼きもちやいてる・・のかな。

「リナ、メシまだか?」
気付いたら、ガウリィが呑気に私の横に立っていた。
アメリアはいつの間にか居ないし。
「あ、うん。今持ってくトコ。」
何となくガウリィから顔を背けてしまう。
今の私の顔、きっと可愛くない。
ガウリィは、私のそんな態度に軽くため息をついて、髪をくしゃ、って撫でてくれた。
「・・・焼きもち、か?」
「ばっ・・・!」
「心配するなって。俺はリナ一途なんだぞ?」

あぁ、もぉ。
どうしてこの男は、私の弱味を突いてくるのかなぁ。


「今日は本当にすいませんでした。」
「いいえ、こちらこそお邪魔しちゃってご免なさいね?」

夕食会も終わり、先に帰ると言うシルフィールを見送りに、ガウリィと二人でマンションの入り口まで降りて。
「送らなくて大丈夫か?」
「有難うございます、ガウリィ様。でも・・・。」
ふと、シルフィールの視線を感じる。
「大丈夫ですわ。・・・リナさん。」
「あ、はい・・?」
「今日は本当にごちそうさまでした。とっても美味しかったですよ、お食事。」
「・・有難うございます。」
やだ、何でだろ?
胸の奥で、何かがモヤモヤしてる感じ。
「じゃ、気を付けて。」「はい、では明日大学で。」

・・・・気のせいじゃ、無い。
帰り際、私を見た彼女の口元が、また少しだけ吊り上がった。

「さってと、後片付けでもするか。」
「・・・ガウリィ。」
「ん?」
「・・・・んん、何でもない。」


一方、部屋に残った二人は。
「ゼルガディスさん。」
「どうした、アメリア。」
「私・・・あの人、嫌かも知れません。」

ゼルガディスは、この先起こるであろう混乱を感じ、深くため息をついた。
「言わんこっちゃない、どうするんだ、ガウリィ。」

その夜。
私は久しぶりに、眠れない夜を過ごした・・・。