I 妹(マイ)な関係










(4)

「リナなら、来てませんよ。」
「・・・そうか、済まないなアメリア。」

あの後、家に帰るのがどうしようもなく怖くて、アメリアの家に駆け込んだ。
アメリアには「ガウリィと逢いたく無い」と告げただけで、詳しい事は何も
話してない。
「・・・本当にいいの?ガウリィさん心配してたよ?」
「いい・・・逢いたくない。」


「おい、一体何があったんだ?」
ゼルガディスが心配して、俺の様子を伺いに家にやって来た。
粗方、アメリアから何か聞いたのだろう。
「三日も休んでるから、女共が騒いでるぞ。・・・って、何だよそのツラは。」
俺の顔をみて、ゼルガディスは呆れた顔をする。
ここ三日間、何も喰わずに居たからな。よっぽど酷いツラでもしてんだろな、俺。
「・・・リナの事か?」
「まぁ、な。」
ゼルガディスが深くため息をつくと、俺の前にどっかと座り込み、苦笑しながら
話し出した。
「何があったかは・・まぁ、女共の話を聞いた範囲で何となく判るがな。んで?
ついに告白でもして振られたか?」
「・・・・・・。」
「まさか、いきなり押し倒した訳じゃあ無いだろうな?」
「・・・それに近いかもしれない。」
「おいおい!そりゃ、いくら何でも強引だろぉが?」

そう、いきなりだった。
あの時のリナの『ガウリィなんか関係ない!』と言った言葉が、無性に腹立たしくて。
いつまでも気付かないリナに、どうしても判って欲しくて。
言葉より先に・・・手が出ちまった。

「自分でも馬鹿だと思うさ。今までの苦労を、一瞬で崩しちまったんだからな・・。」

やれやれ、と言った風にゼルガディスのため息。
「ま、これでいくら鈍い女だって、少しは気付くだろうさ。
俺がとやかく言う事じゃないだろうがな、取り合えず明日からは顔出せよ。リナの事
なら
アメリアが何とかしてくれるだろうからな。」
「・・・そうだな。」
「お前達が妙な事になってると、俺がアメリアに怒られるんでな。」
ゼルガディスの言葉に、俺は思わず吹き出してしまった。
そんな俺を見て、ゼルガディスがにやりと笑った。


山程のお菓子と飲み物を持って、アメリアが部屋に入って来た。
「さて、それじゃあお話しましょうか、リナ?」
「アメリア?」
ばりばりとお菓子の袋を空けながら、私の目の前に広げる。
「ガウリィさんと、何かあったんでしょ?私でよければ話聞いたげるから、話してよ。」
「べ、別に話す事なんか・・。」
「リナ!」
ぺちん!と頬に軽い痛み。
アメリアが私の頬を・・ぶった?
「リナは見て無いから判んないだろうけど、ガウリィさん、本当に辛そうな顔してたよ?
あんなガウリィさん、見た事なかったんだから。
それに、そんなリナ見てるの、私だって辛いんだからね。・・・だから、話してよ。
私、何もしてあげられないけど、そんな二人見るの・・・嫌なんだから・・・。」
今にも泣き出しそうなアメリアを見る。
あぁ・・・本当に心配してくれてるんだな、って思ったら、何だかすっごく嬉しくて。

私は、あの日の事をアメリアに全部話した。


「・・・んで?リナはどう思ったの?」
「どうって・・・。」
アメリアの尤もな問いに、私はどう答えていいか躊躇した。
そうよ、私あの時どう思ったんだっけ?
「えと、ただ・・あの時女の人に囲まれたガウリィを見たら、何だかすっごく・・その・・
ゼルに話聞いてたからさ、別に何とも思って無かった筈なのに、どうしてか判んない
けど
・・・嫌だったの、かな?」
「それで?」
「・・・そ、それで、女の人達に馬鹿にされたのが悔しくて、帰ろうとしたらガウリィ

追っかけて来て・・・その・・・あんな事・・いきなりだったんだもん。」

真剣なガウリィの顔。
唇に触れた、熱い感触。
どれも、初めての事。

アメリアが深くため息をついた。そして、一言。
「鈍すぎ。」
「・・・!なぁんですってぇえええ?!」
びしぃっ!と私を指差しながら、アメリアが腰に手を当て立ち上がった。
あの・・・何だか怖いんですけど。
「リナってば、今の今まで本当に気付かなかったの?ガウリィさんがリナの事好きだっ
て事に!」
「・・・・え?」
「それに、リナだって好きなんでしょ?ガウリィさんの事。」

ガウリィが私を・・・?私が・・・ガウリィを好き・・・?

「え・・と・・・?私って・・ガウリィが好き・・・だったのかな?」
今度こそはっきりと、アメリアが脱力してその場に崩れ落ちた。
「そうじゃなかったら、こんなに悩んだりしないんじゃない?」
私はガウリィが・・・。
急に、目頭が熱くなって。
気がついたら、私はぽろぽろ涙を流していた。
「あ、あれ?」
「・・・本当ににぶちんなんだから。」

自分の気持ちに気付いた途端、無性にガウリィに逢いたくたった。
そっか、そんな単純な事だったんだ。

私はガウリィが好き。
初めて『自覚』した気持ちは、とてもやるせなく切ない感じがした。