I 妹(マイ)な関係










(5)

「・・・ただいま。」

自分の部屋じゃなく、ガウリィの部屋に向かって。
部屋の中はうす暗く、誰も居ない様子だった。

三日ぶりに帰って来た部屋は、がらんとしていて・・・淋しかった。

「ガウリィ・・居ないのかな・・。」
台所を見る。
全然使われた形跡がない。
ガウリィ、ちゃんと御飯食べてたかな?ひょっとして、誰かと外で食べてたのかな。
そう思ったら、また涙が零れそうになった。
「・・・っく・・。」

「・・・リナ?」

声に振り返ると、玄関先にガウリィが立っていた。
びっくりした顔をして、手に持ったコンビニの袋を床に落とす。
「が・・・うりぃ・・・。」

良く見ると、ガウリィったらすごくよれよれ。
何だか少し頬もこけてるし。
不精ヒゲ・・・初めて見た。

謝らなきゃ、って思った。
でも、何て言ったらいいのか、言葉が浮かばないよ。

いつの間にか近付いていたガウリィが、静かに手を挙げた。
一瞬、殴られるかと思って固くした肩に、優しく置かれた手。
「・・・おかえり、リナ。」

見上げたガウリィの顔は、本当に優しそうに微笑んでいた。

「・・・・ガウリィ!」
思いきりガウリィの胸に飛び込んだ。
ガウリィは戸惑いながら、私を軽く抱き締めてくれる。
「ごめん、ごめんなさい!わたし・・・私ね・・・。」
「謝るなよ。俺だって、その・・・悪かったって思ってる。」

抱き締められて、心の底から思った。
あぁ、私、本当にガウリィの事・・・。

「・・・・好き。」

「え・・・?」
「私・・・ガウリィの事・・・好きだったみたい・・。」
ガウリィの顔を見上げると、真っ赤な顔をしていた。
そして、嬉しそうに微笑むと、私を強く抱き締める。
「本当か?」
「うん、本当に。」
「絶対だな?」
「・・・何度も言わせないでよ、馬鹿。」
途端、ガウリィの躯から力が抜けたのか、私は一気に被さる重さに、その場に倒れ込
んでしまった。
「こ、こらガウリィ!」
「・・・マジで、もう駄目かと思ったんだぞ・・?」
「そりゃ・・その、少しだけ怖かったんだから、ね?」
「・、だから悪かったって思ってるよ。」
「本当かなぁ?」

くすくす笑うと、ガウリィの顔がゆっくりと近付いてきた。
「ガウリィ?」
「・・・今度は逃げるなよ・・?」

静かに目を閉じると、唇に暖かい感触。
今度は、全然怖くなかった。

きゅるるるるる〜・・・。
「・・・腹減ったァ。」
「やだ、ガウリィ御飯ちゃんと食べてたの?」
「あ〜、リナが作ってくれないから、ずっと喰って無いぞ。」
「ばっかじゃないの?今作るからちょっと待ってて・・・・って、いい加減退いてく
れないかなぁ。」
いつまでも私の上にのしかかっているガウリィを避けようとすると、また抱き締められる。
「・・・もっかい、キスしたい。」
「ばっ!・・・あぅ・・どうぞ。」

思いきり照れまくる私に、ガウリィが何度もキスしてくれた。
あんまり何度もキスされたもんで、最後にはスリッパでしばき倒してやったけど、ね。


「り〜な〜ちゃん、学校行こう!!」

「それじゃあ、行って来ますガウリィ。」
「おう、気をつけろよ。」

いつもと同じ朝の風景。
少し変わった事と言えば。

「行って来ますのキスは?」
「・・・・馬鹿。」

ガウリィの顔面に飛んだのは、靴じゃ無くて、私の・・・キス。






<自覚編・終わり>