I 妹(マイ)な関係










(3)

変化は、案外身近から訪れる。


アメリアが綺麗になった。
ほんのちょっとした出合いが、彼女に変化をもたらした。
それは。
『恋心』


最近、1人で帰る事が多くなった。
アメリアったら、「ゼルガディスさんとデートなの?」とか言っちゃってさ。
でも、まぁ仕方ないかな。
あんな幸せそうな顔されちゃ、何も言えないし、さ。

「最近元気ないな、どうしたんだ?」
「ん〜、何だか少し淋しいかな〜ってさ。」
心配そうなガウリィの問いに、私はついつい愚痴ってしまった。
「淋しい?」
「だってさ。好きな人が出来た途端に、そっちばっかになっちゃってさ。何だか
『女の友情はどうした!』って叫びたい心境なワケよ。」
「ぶはっ!何だよそれ?」
呆れた様に吹き出すガウリィ。
「仕方ないってのも判ってるのよ?でも・・・う〜ん、何て言ったらいいのかな。
私にもよく判んないんだけど・・・。」
ガウリィが小さく微笑みながら、私の頭を優しく撫でた。
「やん、髪が痛むってば!」
「・・・アメリアを取られた感じなんだろ?」

・・・あや?そうなのかな?

「あ、でも、変な勘ぐりしないでよ?アメリアとはそ〜ゆ〜仲じゃないからね!」
私の突拍子もない言葉に、ガウリィはまともに吹き出している。
あやや、自分でも可笑しいや。
「別にいいじゃないか。リナには俺がちゃんと居るし。」
「・・・ほえ?」

『トクン』

「よっしゃ、それじゃあ元気のナイお姫さまの為に、俺が一肌脱ぎましょうか?」
「何よ、それ?」
「明日、夕飯御馳走してやるよ。それで少しは元気だせよ、リナ。」
「え、嘘ホントに?うわぁ、ガウリィにしては珍しい気の配り方っ!!明日はきっと
嵐だね!」
「お前なぁ・・・。」
ガウリィの苦笑した顔をみながら、ほんの少しだけ、気分が浮かんだ感じがした。

胸の奥で、微かに聞こえた『トクン』って音が、何を意味してるのかは、今の私には
まだ判らなかったけど。


よく考えると、これって一種の『デート』になるのかな?
何だか、ちょっとだけこそばゆい感じ。
帰りにアメリアが『頑張ってね?』なんて変な勘ぐりしてたけど、そんなんじゃない
って〜のよ。
「それにしても、遅いなぁ・・。」
ガウリィのヤツ、女の子を待たすなんて、けしからんぞ!
今日は思いっきり食べちゃるんだから。

暫くすると、見なれた姿が遠くから現れた。
「遅っそ〜い、がうり・・・・。」
振り掛けた手が、一瞬止まる。
ガウリィの周りを、複数の女性が取り囲んでいた。

『ズキン』

「なぁ〜に、ガウリィ。この子が貴男の言ってた『幼馴染み』?」
派手な服を着た女性が、私を一睨みすると、微かに鼻の先で笑った。
「私達の誘いを断るなんて、どんな可愛い人とデートかと思ったら・・・子供じゃな
い。」
きゃはは、という笑い声が、一斉に沸き上がる。

何よ・・・何でそんな事言われなきゃいけないの?

『ズキン・ズキン』

「そんな子放っといてさ、私達と飲みに行こうよガウリィ?」
「・・・・・そうしたら?」

やっとの事で出た言葉に、ガウリィが驚きの表情で私を見る。
「リナ?」
「予定があったんなら・・・一言言ってくれれば良かったじゃん。別に私に・・・気ぃ
使わなくたって・・・っっ!」
唇を噛み締めても、どういうワケか涙が溢れそうになっていく。

そうよ、別に関係ないじゃない。
ガウリィが誰とどうしてようが。

「・・・・・・っ!」

どうしようもなく哀しくて、私はその場を走り去った。


「リナ、待てよ!」
追い掛けて来たガウリィに掴まれた腕を、思いきり振払う。
「離して!何しに追い掛けて来たのよ!」
「リナ、誤解だ。俺の話を聞いてくれ。」
「関係ないじゃない!ガウリィの事なんか、何も関係ない!!」
「リナ!!」

急に目の前が暗くなったかと思ったら、ガウリィが私に被さる様に側の壁に押し付け
て来た。
低い、低い声で。
「お前に関係なくても、俺にはあるんだよ。」
ガウリィの表情が、怖いぐらい真剣なモノで。
私は思わず、ガウリィから逃げ出そうとした。
でも・・・出来なかった。
乱暴に肩を引き寄せられた途端、唇に熱い感触が振って来た。

ガウリィが私に・・・キス、してる?

唇が離れて、ガウリィが私を見詰めた時。
・・・感じたのは、変わる事への・・・怖さ。
「い・・いや・・・いやぁあああああ!!」


ガウリィを突き飛ばし、私は力の限りガウリィから逃げた。