I 妹(マイ)な関係 |
(2) そりゃあ、子供の頃はね。 一番最初に意識する『異性』ってのが、多分『幼馴染み』だとは思うのよ。 でも。 大きくなっていくにつれ、いつまでも子供の時と同じにはいかないワケよ。 色んな人と出逢うし、友達もできる。 そんな中で、特別な存在が、ごくありきたりの存在に変わるなんて、 普通の事でしょ? だから、ガウリィは私にとって、単なる『幼馴染み』でしかないのよ。 ・・・・多分。 「ふぅ〜ん・・・案外難しいのね、幼馴染みってのも。」 「難しい?いたって単純だと思うけど?」 学校帰りに、馴染みの茶店でおしゃべりしながら。 アメリアは少し考えた様な顔をして、紅茶を啜っている。 暫く他愛無い話をしていると、「いらっしゃいませ」の声の方から、見なれた姿が 現れた。 「おりょ、ガウリィ?」 「よ。ここじゃないかと思ってな。」 ガウリィが珍しく、友人らしき人を伴って私達の席に向かってくる。 「久しぶりにゼルと飲みにでも行こうかって話になってな。リナも一緒にどうかと おもってさ。」 「飲みにって・・・あんた、私を犯罪者にでもするつもり?」 私達の会話を黙って聞いていたゼルって人が、微かに肩を震わせていた。 露骨に嫌な顔をした私を見て、慌てて手を差し出して来た。 「いや、済まない。余りにもあんたの反応がガウリィの話通りだったもんでな。 俺はこいつの友人のゼルガディスだ。ゼルでいいぜ。」 差し出された手を握り、私も一応の挨拶を交す。 「ガウリィの話通りってのが気になるけど、まぁいいわ。私がリナよ。」 一見、とっつきにくそうな印象を受けるけど、結構いいやつみたいだな。 まぁ、ガウリィの友人ってくらいだから、それも頷けるけどさ。 ふと、アメリアを見ると、ほんのり頬を紅く染めて、ゼルガディスを見詰めていた。 ・・・おりょりょ?こりはひょっとして・・・? 「仕方ないな。男二人で淋しく飲みに行くか?」 「ちょ、ちょっと待って?」 用件だけ言うと立ち去ろうとした男共を捕まえ、私はにっこり微笑んで言った。 「どうせなら、一緒に夕飯でも食べない?御馳走するわよ?」 久し振りの賑やかな食事を、私達は楽しく過ごした。 話してみると、ゼルガディスは本当にいいやつだった。 私の知らない、大学でのガウリィの話を、面白可笑しく話してくれて。 アメリアも、ゼルガディスの話を聞きながら、本当に楽しそうに笑いながら聞き 入っていた。 楽しい時間程、あっという間に過ぎてしまうもので。 気が付いたら、辺りはすっかり暗くなっていた。 「1人で帰れる」と言うアメリアを制して、ゼルガディスに送る様に頼むと、 「やれやれ」 と言いながらも、快くナイト役を引き受けてくれた。 微かに赤らんでいたのを、勿論見逃したりしてなかったりして。 「送り狼になるなよ、ゼル!」 廊下でおもいっきりコケたゼルガディスが、「お前じゃあるまいし!」と怒鳴り 返したのは、また別の話。 ・・・・案外、お茶目さんみたいだ。 アメリアはと言うと、さり気なく私に「Vサイン」なんか見せてたし・・・。 (敢えて、見なかった事にしたけど) 「やれやれ、騒がしかったなぁ。」 後片付けをしながら、ガウリィが小さくため息をついていた。 「そぉ?私は楽しかったけどな。ガウリィの意外な話もたくさん聞けたし。」 「あのなぁ・・・お前、変な誤解するなよな?」 「変な誤解って?」 「いや、あのさ・・・。」 何だか気まずそうなガウリィ。 「大学ではガウリィは女の子にモテモテ〜ってトコとか、泣かせた女の数は数え 切れないんだぞ〜、ってヤツ?」 「おいおい!」 「別にいいんじゃない?私だって、学校じゃあモテモテなんだから?」 「・・・え?!」 片付けを終え、隣の自宅に帰ろうとした私の腕を、ガウリィが軽く掴んだ。 「おい、リナ。お前・・・。」 「・・・私の学校、女子高よ?」 呆気に取られたガウリィに、軽くウィンクしながら。 「それじゃ、おやすみ。女ったらしさん。」 ドアの向こうから、『からかうんじゃな〜い!!』って声が聞こえて、私は思いっ きり吹き出してしまった。 だから、ガウリィがぽつりと漏らした、「人の気も知らないで」って言う呟きは、 勿論耳には届いていなかった。 |