刃の先に










<中>


「おぉ!やはり引き受けて頂けますか。」
「・・・あぁ。」
「それで、何時?」
「早い方がいいだろう。・・・今夜、やる。」


こんこん。
「・・・開いてるわよ。」
部屋に入ると、リナが静かにベットに腰掛けていた。
「返事、してきたぞ。」
「そ。」
「ゼルガディス達は?」
「色々準備があるからって・・・。」
俯いたままのリナにそっと近付き、微かに震える肩に手を置く。
「はは、まさかガウリィに殺される事になるなんてね。」
「リナ・・。」
「でも、ま。赤の他人にやられちゃうよりはマシか?なんちゃってね。」
無理して微笑むリナを抱き締める。
リナは静かに俺にもたれ掛かってくる。
「・・・すまん。」
「大丈夫だって。ちょっと・・・怖いだけだから。」
おずおずと背中に廻された腕が、しっかりと俺にしがみついてくる。
俺は、リナを抱く腕に力を込めた。
「必ず・・・成功させるさ。」
「当たり前よ。失敗したら、化けて出てやるんだから。」
俺の顔を覗き込む、いたずらっぽい表情が堪らなく愛おしかった。

「リナ・・・俺に勇気をくれないか?」

リナがそっと瞳を閉じる。
俺は静かに、リナの唇に触れた。



「ファイヤー・ボール!!」
リナの攻撃を躱しながら、俺はひたすらにチャンスを待っていた。
物陰から伺う視線は、確かにあの男のモノ。
ここでボロを出す訳にはいかなかった。
「ガウリィ!!あんた一体どういうつもりなの?!」
「悪く思うなよ。これも依頼でね・・・っ!」
まさしく命を賭けたやり取りだな。
リナもある程度本気で俺に向かってくる。
だが、あくまで『ある程度』なのだ。

俺が攻撃を仕掛けやすい様に。

「・・・本気でいかせてもらうわよ、ガウリィ。」
「望む所だ。」

黄昏よりも 昏きもの 
血の流れより 紅きもの

ドラグ・スレイブの詠唱が始まった。

・・・・我と汝が力もて 等しく滅びを与えんことを 

「ドラグ・・・。」

リナが構える。
いつもとは違う構え。

横では無く・・・頭上高く

「・・・・スレイブ!!」

『信じているからね、あんたの事』

微かに唇がそう動いた・・・気がした。

俺を翳めて発動されたドラグ・スレイブを躱し、リナの懐目掛けて。

俺は剣を突き出した。


剣はリナの腹部を、真直ぐに貫いた。


「お見事でした、ガウリィ殿。」
俺は、リナの躯を静かに抱きかかえると、その場を後にしようとした。
「ガウリィ殿、ではその遺体をこちらへ渡して頂けませんか?」
「・・・・俺の受けた依頼はリナを殺すことだけで、遺体を渡すとは言って無いぞ。」
「そ、それは・・。」
「依頼は済んだ。・・・これでいいだろう?」
「・・・・解りました。では、後程報酬をお渡ししに参りますので。」
「あぁ・・・そうしてくれ。」

何か言いた気な男を置いて、俺はゼルガディス達の待つ宿へと帰った。


必ず・・・後悔させてやる。