Behind the Red Curtain
〜第十二幕〜





















「俺のこと…勇気の無いやつだとか思ってるんだろ?」
「いいえ…。私も今夜は、そんな気分じゃないから…。それを悟ってくれたんでしょ?」
「さあ…?自分でも分からん。」


俺はサティーンをベッドに座らせ、自分は窓の傍の椅子に腰掛けてグラスを傾けていた。
タキシードのジャケットを脱ぎ、白い蝶ネクタイを外して、ドレスシャツの第一ボタンを開けているせいか、
気持ちもだいぶ落ちついてきた気がする。


「ねぇ…ガウリイ?」
「ん?」


俺はシャンパンを一口含む。


「どうして私を抱かないの?」
「!?!?!?」


そして勢いよく吐き出した。


「んなっなっ……!?」
「確かに、今日の私はそんな気分じゃないわ……でも、あなたは…?」

ど、どう答えるべきか……?

「だ、だから、君の体調を察して───」
「うそつき。」

言いかけた言葉を、悲しそうなサティーンに遮られる。


「もう私に魅力を感じないのね……?」


ベッドにその魅惑的な身体を横たえながら潤んだ瞳を投げかける彼女は、
……そ、そのぉ……信じられないくらい…い、色っぽいわけで…。


「そ、そんなことは…だ、断じてないっっ!」


な、情けねぇなぁ……。
俺…狼狽しまくってる……。


「んふふ……ひっかかったわね?」


「へ?」
ベッドに寝そべる彼女の悪戯な笑みが目に飛び込んできた。

な、なんだ……。

「脅かすなよ……。」
「ふふ…ごめんなさい。」

そう言って浮かべた彼女の美しい笑みは、ダンスホールで見せた媚びるようなものではない……。

オレが愛した…サティーンの笑顔だ……。


「あなた…変わったわ…。」

「え…?」
その一言に、昔の自分が頭の中によみがえる。

そうか…君が知ってるのは、最低だったころの…オレだもんなぁ…。

「…ねぇガウリイ…昔話しない?」
「……オレ達の?」

俺はグラスから唇を離した。

「あれから、4年経ったもの……。」
「4年か……。」


「どうして、私を残して行ったの……?」
「……………。」



───4年前

ちょうどその頃、オレは傭兵家業に違和感を感じはじめていた。
数えきれないほどの人間を殺し、身体中に血の臭いが染みついて離れなくなっていた頃…。
何を食っても、どんなにうまい酒を飲んでも、血の味しかしなかった頃……。

周りの人間が全て敵に見えて、誰にも心を許せなかった…あの頃……。


オレは、君と出会ったんだ───。



                                 
           
                                 
            to be continued......