Behind the Red Curtain 〜第十一幕〜 |
「ん………。」 見慣れない天井…。 寝心地が良すぎる絹のベッド……。 そして─── 「気づかれましたか?」 ───聞き慣れない声……。 そっか……。 あたし、ダンスホールで倒れたんだっけ……。 ……ということは── 「ガウリイっ!!!」 「彼なら、今頃サティーン専用の象の部屋にいますよ…。」 「!?」 跳ね起きるあたしをなだめるその手は……。 「ガードナーさん……。」 心配そうな表情であたしを見つめるマリンブルーの瞳…。 でも、今のあたしが一番見つめていたいのは……アイツの…スカイブルーの瞳だけ! 「契約は取り消しよ!ガウリイと一緒にこの街を出るわ!」 「ダメです!まだ安静にしていないとっ!」 ベッドから抜け出そうとするあたしの身体を、ガードナーさんが押さえつけた。 「放してっ!これは契約違反だわっ!」 「いいえ、放せません!」 「ガウリイのところへ行かせてっ!」 「あなたが傷つきますよ!!」 ……え? 「……どういう…意味よ…?」 「考えてもみなさい!引き裂かれた恋人同士が4年ぶりに再会して二人きりでいるんだ……!」 二人…きり………。 「しかも、彼女はプロのコーティザン……分かるね?君も子供じゃないんだから……。」 ガウリイがあの女の白い肌の上に、愛しそうに口付けを落す光景が脳裏を掠める───。 いやっ!! そんなの……! 今頃になってやっと自分の気持ちに気づくなんて……。 あたし今まで……なにやってたんだろ……。 でも……あたしは……。 「こんなことになって…正直、あなたには申し訳ないと思っている。」 「やめて。余計に腹が立つだけよ…。」 「……4年前のことと、あの二人のことを知りたいとは思いませんか…?」 「…え?」 4年前のこと……? ガウリイとサティーンのこと……? 知りたいと思う気持ちと、耳をふさぎたくなる気持ちが沸き起こる。 「いいえ、むしろ聞いていただきたい!これが、あの二人を引き離した私の義務でもあるんです!」 包み込むようにしてあたしの手をとるガードナーさん…。 この人も…4年間苦しんできたんだわ……。 「……どうしても、話したいの…?」 「え…?」 「……手短に頼むわよ…。」 「リナさん!」 あたしの手を取る彼の手に、力がこもったのが分かった。 そしてあたしも……覚悟を決めたいと思う…。 「その話次第で、あたしがここを一人で去るか否かを、決めるわ……。」 「あなたって……相変わらず優しいのね…?」 「ん?あんまり自覚は無いけどね…。」 咽び返るような、でもどこか懐かしいお香の香りに包まれて、俺はまだ、象の部屋にいる……。 to be continued...... |