Behind the Red Curtain
〜第八幕〜





















「リナっ!!リナっっ!!!」

呼んでも呼んでも、彼女の姿は見当たらない。
どうして俺は手を放してしまったんだ…!
くそっ!!
空から舞い降りた“彼女”しか見えていない男たちに揉まれて、あんなに目立つリナを見つけられないなんて…。

それにしても……。

俺は、男たちの羨望の眼差しを一身に受ける彼女に目をやった。
白い肌に緋色の髪…俺と大して変わらない長身に、しなやかな肢体……。

まさか、君がここのトップコーティザンだったとはな……。

「綺麗になったな……サティーン……。」

俺は無意識のうちに、正直な想いを口にしていた。



「Cause that's when those louses go back to their spouses!」
(男たちなんて最後は皆それぞれの家に帰っていくじゃない!)

ふと我に返ると、彼女の歌は佳境に達していたようで──

「Diamonds──!」(だから──!)

4人の男たちの抱えあげられてホール中を見渡す彼女。

「Are a......」(ダイアモンドは──!)

一瞬、彼女のブルーの瞳が俺を捉えたような気がしたのは、おれの自惚れだろうか…?

「Girl's!Best!──」(女の──!)

夢か現か……俺を指さして、自分を抱える男達をこちらへ向かわせる彼女──。

「Friend!!」(ベストフレンドっ!!)

そして彼女は、男たちの山をかきわけて、俺の目の前に降り立った……。
それと同時に歌が終わり、曲が次のダンスナンバーに変わる。
目の前に佇む彼女の表情を窺うべく、ゆっくりと顔を上げると───。


「私をご指名だったかしら?」


それは“あのとき”と同じ言葉……。

艶やかな大輪の薔薇のように微笑む彼女は、まさに『スパークリング・ダイアモンド』の異名
に相応しい美しい笑みを浮かべていた。

君は、俺のことなんて、忘れてしまったのか……?

そう問い返そうとして、俺の頭に“依頼”の内容がよみがえる。

『トップコーティザンと、偽物の恋に落ちること……。』

そして俺は腹をくくった。
リナを喜ばせるために……。
そして、過去を振り切るために………。

「ああ……。」

俺は彼女の挑発的な問いに、ただ一言、そう応えた。

                       
                                                     to be continued......


Notice!:作中に登場する歌、「Sparkling Diamonds」に関する全ての権利は20th FOXに帰属します。
      詳しくは、映画「Moulin Rouge!」をご覧になってください(^^;