Behind the Red Curtain
〜第四幕〜






















「心配には及びません!」

ガウリイの疑問に、陽気に応えるガードナーさん。
自分の作戦を理解してもらえたのがよっぽど嬉しいのだろうか…?

「お二人がこの街を離れたあとは、ガブリエフ公爵は忘れ物を取りに国元に一時帰国したとかナントカ
 テキトーに言ってごまかしておきますから♪」

おひおひ……。
そんなんでごまかせんのか…?

「さあさあ、商談もまとまったようですし、私の屋敷で衣装を選んで、お二人には今夜早速、店の方に──」

「ちょぉぉぉっと待ってっ!」

あたしは、ひとりで話をまとめていっちゃうガードナーさんを呼び止めた。
「まだ引き受けたとは言ってないわよ?」
「え?」
ガードナーさんが目をぱちくりさせて振り返る。

「そうだそうだ!第一俺の意思を何も───」
「そうじゃなくって!」

ガウリイの言葉を無理やり遮って割り込むあたし。
そう!いま大切なのはガウリイの意思ぢゃないっ!……悪いけど…。

「報酬よっ!!」

ばしぃぃっ!っとテーブルを叩きつける。
空のコーヒーカップが宙に舞うのはご愛嬌ってことで♪

「報酬…?……ああ!報酬ですね!」
再びの美しい笑顔。
さてさて♪この笑顔はどれくらいの金額を提示してくれるんでしょうかねぇ〜♪♪

「お好きな金額をおっしゃってください。」

「へ?」

あたしは思わずバカみたいに口を開けっ放してしまった。
「ほ、ホントにいいの……?」
「ええ♪」
こ、これって、笑顔で巧に相手を騙す詐欺じゃぁないわよねぇ……。

「じゃ、じゃあ、金貨…5000は…?」
いま、後ろでガウリイがため息をついたのが分かった。
ちょっと現実離れした金額だったかしら……?

「………それだけでいいんですね…?」

「え?」

いま、なんて……?

「それじゃあ、5000ということで───」
「あ゛ーーーっ!!いまの取り消し取り消しっ!!10000でどぉっ!?」

絞れるっ!!この男は絞れるぞぉっ!!
ん〜!商人の血が騒ぐぜぇい♪

「分かりました。10000で契約成立です。」
「おまかせくださいっっ!!!」

にこやかな笑顔のまま差し出されたガードナーさんの右手を、あたしは力強く握り締める。
10000っつったら、家一軒は建てられるんじゃないかしらっ?

こうして、上機嫌のあたしとガードナーさん、そして何となく足取りが重いガウリイの3人は、
ガードナー屋敷を経て、ジャルダン・ド・ミースへ向かったのである───。




                                                 …to be continued