迷いの森・誘いの湖 |
第二話 『メルディ!?』 「クイッキー!くぅううううういっきー!!」 メルディを抱いたあたしが頂上へたどり着くと、 たき火を囲んで暗い顔をしていた三人と、一匹がいっせいにこちらを向いた。 それは、あたしと同じくらいの歳の人たちばかりだった。 紅い髪の、剣を持った人と、青い髪を後ろで縛っている人と、緑の髪の女の子。 「・・・メル・・ディ・・・なのか?」 青い髪の人が言った。 「はいな!メルディ、リナ達に助けられたな。」 「”な”は余計だって言ってるだろ!・・・って、そうじゃなくて・・・もうダメかと思ったんだぞ・・・。」 「心配かけて、ごめんな?」 「べ、別に心配なんて!」 「ねぇ!メルディ・・・ホントに大丈夫なの!?」 「はいな!」 「でも、すっげー高いぞ・・・下、見えねぇし・・・」 「だいじょぶよぉ! メルディ、びゅ?って落ちて、気がついたら地面いた、リナ達が助けてくれたな。」 「・・・リナ?」 緑の髪の女の子はそう言うと、あたしを見た。 「はじめまして、リナです。」 あたしがそう言うと。 「あ、はじめまして・・・私ファラっていいます。」 「俺はリッド、ありがと・・・メルディを助けてくれて。」 「クイッキー♪」 彼らはにこやかに笑うとそう言った。 一人を除いて・・・ 「・・・・・・・・」 「キールどうした、リナの顔に何かついてるのか?」 メルディが、不思議そうにキールという人の顔を見ていた。 彼は、じっと・・・警戒した目であたしを見ていた。 「・・・納得がいかない! どう考えても、こんな高い崖から落ちて助かるはずはないんだ! 運良く助かったとしても、無傷なんてあり得ない!! いったい、どうやってメルディを助けたというんだ!! それに、どうやってここまで上って来たんだ!?」 一気にまくし立てた彼は、あたしを睨んでいた。 「おい!キール、メルディの命の恩人なんだぞ!失礼だろ!」 「そうだよキール、そんなに警戒することないよ。」 「そうな・・・リナいい人よ。」 「・・・・どうして、お前達は警戒心っていうのが無いんだ!」 彼は、キレかけていた。 これは・・・メルディが言って他通り、頭が固いわね・・・ 「えっと、キールだったけ? 納得がいくかどうか分からないけど、説明してあげるわ。」 「・・・あぁ。」 そして、あたしは説明をはじめる。 「まずはじめに、ここがあなた達のいた世界と違うのは気づいているんでしょ?」 「・・・まぁ・・・多分だけど。」 「それは、きっと正解ね。 それで、さっきメルディに聞いたんだけど、あなた達の世界では、晶霊? っていうのに力を借りて術を使うんでしょ?でも、この世界は違うのよ。」 「どう違うんだ?」 興味津々に、キールは聞いてくる。 「この世界には、高位魔族の力を借りた黒魔法と、 主に、水・土・火・風の精霊の力を借りた精霊魔法と、白魔法とがあるの。 白魔法は、名前こそ違っているけど、借りる力は精霊魔法と同じよ。 それで・・・・・ かくかく、しかじか ・・・・・ってわけで、この世界は成り立ってるの。 よって、あなた達の世界の術は使えないのよ。 メルディを助けたのは、精霊魔法の中のレビテーションって術で、風をあやつって落下速度をゆるめたのよ。 本来は、飛ぶための術なんだけど、力をコントロールして少しアレンジすればこれくらい簡単よ。 あ!でも、それをするには、集中力と精神力、でもって、ある程度のキャパシティが必要ね。 これで、説明終わるけど、質問ある?」 「・・・・・・・・」 「・・・・・・・・」 「・・・・・・・・」 あっ、メルディ達三人呆れてる・・・そりゃそうよね延々30分も喋りまくったし・・・。 でも、30分で、ここまで詳しくかつ、正確に説明できるのは世界ひろしといえども、あたしくらいでしょ♪ で・・・肝心のキールは・・・? 何か考えている、あたしの話を真剣に聞いていたのは彼くらいだった。 「・・・一つ質問だが・・・」 「何?」 「キャパシティとはなんだ?」 「え?キャパシティ?・・・そうね、簡単に言うと力。」 「それって、フィブリルみたいなものか?」 メルディが、聞いてきた。 「ん?その、フィブリルっていうのが何かよく分からないから、何とも言えないんだけど・・・」 「フィブリルすごい強い力のこと!リッドにも、リナにもフィブリルある。」 『え!?』 キールやファラ、リッドも驚いている。 「・・・フィブリルは、世界が違っても持っている者がいるってことか・・・」 「ん?難しいこと、よくわからないな。 でも、リナにもフィブリルあるよ、ほら!」 メルディがあたしに触れると、また七色の光が溢れる。 「ほ・・んとだ・・・」 「ねぇ、その、フィブリルって誰でも持っているものじゃないの?」 「う?ん、フィブリル持つ者、すごく少ない・・・だからメズラシイな。」 そうか・・・ 「じゃぁ、キャパシティとは、ちょっと違うかも。」 「違うのか?」 「えぇ、キャパシティは魔力のことだから。」 「魔力?」 「そう、この世界で魔法を使うにはほとんど魔力が必要なの。 それは、産まれ持った力だから、元から持っていない人もいるけど・・・まれって事はないわ。 だいたい、どんな人でも少しくらいの魔力はあるから。 キャパシティが大きければ大きいほど魔力も大きくなるのよ。 もっと、わかりやすく説明すると・・・そうね・・・コップ。」 「コップ?」 「そう、キャパシティをコップとして。 コップが大きければ大きいほど中に入る水は多くなるでしょ? その水が魔力とすると、コップの大きさに比例して、魔力も大きくなるってわけ。 で、産まれたときから人のキャパシティ量っていうのは決まっていて、その中に入る魔力も限られてくるのよ。」 そう説明した後で、考えているキールをよそに、リッドが言った。 「う?ん、ようするに、おちょこくらいの大きさのヤツもいれば、 風呂くらいの大きさのヤツもいるってことだな?」 「・・・まぁ、そういうことね。」 聞いていないようで聞いていたのね・・・。 「なぁ・・・」 「なに?」 「”ほとんど”っていうのはどういう意味だ?」 「あぁ、魔力なんて持って無くても、呪文さえ唱えれば発動する術のことよ。」 「そんなのがあるのか!?」 「あるけど・・・でも、ただの明かりよ? ・・・・えっと、こんなの・・・・ライティング!」 白々とした光の球がふわふわと頭上で揺れる。 「おぉ!」 「わぁ・・・きれい」 「明るいな?」 「って、こんなんだけど?」 説明するのも面倒だから、呪文を唱えて出す。 すると・・・ 「・・・すごい、なぁ!教えてくれないか!?」 「い・・・いいけど・・・でも、多分あなた達の世界では使えないと思うわよ?」 「いいんだ、もしかしたら、僕たちの世界でも応用してできるかもしれない!」 そして、あたしは熱心なキールにカオスワーズを教えはじめた。 「えっと、・・・・・・・・・・・・・ライティング!」 彼の生み出した光は、ふよふよ中を漂って止まると辺りをぼんやり照らし出した。 「できた!」 「バイバ!すごいなキール!」 「すっごいよ、キール。」 喜ぶ三人。 「ありがとう、リナ!なんだか、新しい晶霊術や、応用ができそうな気がしてきたよ!」 そういって、キールはあたしの手を取り、ぶんぶん振った。 「・・・・・・・ん?どうしたのリッド?」 「!」 「な、なによ、そんなにびっくりする事無いじゃない?」 「あっ・・・ファラ・・・いや、そうじゃなくて・・・なぁ、リナ・・・」 リッドがあたしに話しかけてきた。 キールは今だあたしの手を握っている。 「何?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや・・・あの・・・あれ、何?」 少々青白い顔で彼の指さした先は崖。 「・・・崖?」 「・・・・・・いや、そうじゃなくて・・・その崖から殺気放ちながらこっち・・・というかキール睨んでる・・・金色の・・・」 きん・・いろ・・・? 「・・・あ!・・・ガウリイ!」 『ガウリイ?』 やだ、忘れてた・・・ あたしは、慌てて立ち上がると、崖に近づく。 そこには、不機嫌そうに、あたしを見上げるガウリイ。 って、ホントに自力で上ってきた・・・(汗) つづくぅv あとがき 今回は、リナとエターニアの四人組の会話でしたv まぁ、キールとの会話が多かったし、リナちゃん一人でしゃべりまくりだったけど。 学者のキールは、はじめて知ることには一直線周りが見えなくなるのですね。 だから、リナちゃんの延々30分の一人トークにも飽きずに聞いていられるのです。 ちなみに、リッドにいたっては、寝ていたでしょう。(多分) でもって、ガウ君は地道に己の体力だけで、300メートルの崖を命がけで上って来たのです(笑) しかし、上ってきた先で見たものは、他の男に手を握られるリナの姿・・・キレちゃってます。 今回は、キールとトークだったので、次回は、リッドとトークかな? でもって、多分ガウ君サイドで、おおくりします。 ※注意! リナの話している魔法云々の説明は、 らぐぢすのかすかな記憶から作り出した半分以上デタラメな話だと思います。 ですので、『なんか、本に書いてあることと違う!』とか思っても・・・気にしないで下さい。 (だって、調べるの面倒だったんだもん(爆死)) |