運命、そして宿命。








第7話:5つ目の魔法。

足に力が入らない。
あたしの膝が、地についた。
……ヤバイ。ひぢょーにヤバイ。
よりにもよって、利き手の右腕をやられるとは……
神経もやられたのか、右手にも力が入らず、短剣はあたしの足元――というか、膝元
に落ちている。
しかも右肩からは、左手で押さえてるにもかかわらず、血がだくだく出まくってる
し……
……っていうか……熱い……?
自然と息が荒くなる。
少しでも動くと激痛が走りそうなので、身動きなんて出来やしない。
………よーするに。
1度勝った相手に、負けたのだ……
……………くやしいっっっ!!!くやしすぎるぅぅぅぅっっ!!!!!
こーなったら……!
「――ルーナぁっ!?血ぃいっぱい出てるよっ!?」
声がした。
痛みをこらえ、なんとか首だけをそちらに動かすと――
芋虫フェリオが、目を覚ましていた。
「……ウィ、ドシーク……!
 フェ……リオ、だけでも……放せ……」
「ほ。その傷で話せるなんて、たいしたもんだ。
 ……ま、その精神力に免じて、そいつは逃がしてやるよ」
ウィドシークが手で合図すると、シルバーがフェリオの縄を解いた。
「ルーナぁぁぁぁっ!」
叫びながら、フェリオが駆け寄ってくる。
「いいんですか、ウィドシーク様?」
「平気さ。あんな子供に、何が出来る?
 まぁ、回復魔法を使うかもしれんが――そんな暇ないしな」
確かに。
『リザレクション』なんて唱え始めたらすぐにバレるし、『リカバリィ』じゃこの傷
は治せない。
あたしは、談笑するウィドシーク達に気取られぬように、フェリオに耳打ちした。
「いい…か……?
 今すぐ、この場所…から……走って逃げろ…
 例え『なにか聞こえても』、絶対に…戻って、くるんじゃないぞ……」
「え……でもルーナ、その傷、放っておいたら死んじゃうよぉ……?」
あたしに合わせて、小声で言うフェリオ。
「いいから……お前は逃げろ……」
「でも、でもぉ……!」
「……あたしは死なない……何があっても。
 この森を…抜け出したら……絶対に、どこかで…会お…う……
 ……約束だ」
あたしの言葉に、泣きそうなかおをしていたフェリオは安心したのか、
「……うん……わかった…!
 絶対に、絶対に会おうね!ウソついちゃヤダよっ!」
そう言って。
フェリオは走り去っていった。
……ごめんな、フェリオ。多分無理だ。
この傷じゃあ、死ぬことはないとはいえ、おそらく右腕は再起不能。
それに……このまま負けるなんてこと、誰が許そうと、あたし自身が許せない。――
いや、許さない。
そのためにも。
あたしは、あの魔法を使わなければならない。
母さんに、『まだ使っちゃダメよ』と言われた魔法。
この傷で使ったら、どうなるのかはわからないが……ここにいる奴らを、一掃するく
らいの事は出来るはず。
あたしは深く息を吸うと、途切れ途切れに『カオス・ワーズ』を呟き始めた。
「……?なんのマネだ?」
「魔法ですね。
 聞いた事のない呪文ですが……」
「シルバーでも聞いた事のない魔法?団の中で一番の物知りであるシルバーが?
 ……おもしれぇ。どんな魔法なのか、おがませてもらおうぜ」
笑いながら、あたしに注目するウィドシーク達。
前に奇襲かけたときも、剣しか使わなかったし……おそらく、魔法に関しちゃまだま
だ、とでも思っているんだろう。
だが、それが奴らの運の尽きっ!
あたしの呪文が完成し――
あたしは、力を解き放った!

「『ドラグ・スレイブ』!!」

ちゅっどぉぉぉぉぉぉぉぉんっっ!!!

奴らの叫び声が、轟音にかき消された。
……なんつー破壊力だよ……
泉は枯れ、木々達は吹っ飛んでなくなっている。
おそらく、生き残りの盗賊は、ゼロ。
……勝ったか……
そう思った瞬間。
力が抜けたのか、意識が薄れ、体は崩れ落ち――
完全に意識がなくなる直前。
あたしの体は、何かに抱え込まれていた。
……なんだ、これ……?
どっかで、こんな風に抱えられた事のあるような……
……誰かの……腕……!?
思い当たった瞬間。
あたしの視界は、完全にダーク・アウトした。

<つづく>


よくよく考えてみたら、1話1話がかなり短いんじゃないでしょーか?私のって。
・・・って思ってみるものの、どーしても変なところで切っちゃって、結果、こんな
短くなるんですよー・・・はうー・・・