宿命の終わるとき









第14話:蒼玉の紅いチカラ。(2)





―――――それは、遠い記憶の彼方




あの日、初めて彼女を見た時、全身が総毛立った

あの蒼い瞳がこちらを睨みつけ、栗色の毛を逆立てていた



――――――――欲シイ――――――――



瞬間、確かにそう願った






だから『賭』を仕組んだ
彼女が誰の手にも渡らないように


だから『彼』を殺した
彼女が誰の手にも渡らないように




彼女が、自分の手に渡るように……







見守る予定などどこにもなかった

けれど彼女は自分の事を忘れていた

『賭』は自分の勝利だと確信しながらも、自分は彼女にチャンスを与えた


ずっと傍にいて

ずっと隣にいて

彼女が少しでも、自分と再会したあの日の事を思い出せるように


でも彼女は、決定的な真実を思い出す事はなかった


あの黒い悪魔が来た瞬間、『賭』の期日を早めるしかなかった


いや、それは単なるきっかけだったのかもしれない



本当は自分自身、全く気付かない彼女に、もう我慢ならなくなっていたんではないか
―――?






彼女を汚した瞬間、どうしようもないくらいの『欲』が生まれた
何度手に入れても尽きない、いやむしろ増幅さえ見せる『欲』
10年近くもの長い年月を経てやっと手に入れたのに―――


彼女は逃げた


たった1つの逃げ場へ、彼女は逃れた


あの男が――確実に殺したはずの男が、彼女の心の中で生き延びている


だからこそ彼女は、自分の心の中へ逃げ込んだ


『現実』よりも、『理想』を選んだ





ムカつく





何もかも










何でも手に入れられるはずなのに、たった1人の女が手に入れられないってのはどう
いうことだ?


なぁ?





何でお前は、俺よりもカイルを選んだんだ?



ルーナ?





<つづく>