宿命の終わるとき |
第9話:儀式の果てに…(1) 桜が――――――舞う。 「…………やっぱり君は――― 純粋で。 まっすぐなんだね……」 聞こえなかったはずの声。 届かなかったはずの言葉。 はっきりと、聞こえた。 「――――――だったら、『賭』をしよう? ……そうだなぁ…… じゃあ、今から10年。 君も僕も、15歳になってるよね? それまでに、また会おう。 それで君が、15歳になるまでに僕のことを思い出せたら、『賭』は君の勝ち。 思い出せなければ君の負け。 ―――君が負けたときには―――」 ――――ざぁぁぁぁ…っ―――― 風が吹き、今度はここで言葉が聞こえなくなる。 桜の花びらで埋め尽くされていく視界の中、何とか見えた相手の顔は―――― 「…………ん゛ー…………」 ふぁ、と欠伸を1つして、ルーナはベッドから身を起こした。 最近、どうにも過去の夢が多い。 そりゃあ前のような悪夢を見るよりはマシだが、こうも立て続けに見せつけられると、 何かの予兆なんじゃないのかという思いさえ浮かんでくる。 「……何か起こるんだったら、頼むから、せめてあたしになるべく被害がないように 起きてくれよ……?」 はあ。とため息をつくと、ルーナは着替えを始めた。 ――相手の顔。見えた気がしたんだけどな―― そんなことを思いながら。 ……見えたはずなのだ。 相手の顔が。 だが、どうしても、どうしてか思い出せない。 何かが引っかかる。 何か、記憶に網がかかったような…… ふるる、とルーナは首を振った。 ……気には、なるけど…どうしようもないもんなぁ…… そう、自分に言い聞かせながら。 ……どうしようもないもんなぁ…… そして、ここにも1人。 自室で悩んでいる男がいた。 フェリオ=グレイ=ティル=セイルーン。 たぶん僅か13年で、表と裏との使い方を知った恐るべき子供であろう。 「………あ゛〜〜〜、もう」 ぼす、とベッドに身を投げるフェリオ。 肩より少し長い銀髪が、さらりと流れる。 「……やるっきゃねーから……やりたくねーんだよなぁ」 はあ。 言って再びため息をつく。 悩みは誰でも一緒であった。 「………うん♪やっぱり美味しいですね♪」 そして。 そんな悩みを、悩みから生まれる負の感情を。 1人占めしている奴もいた。 「パックにでも詰めて、獣王様にお届けして差し上げたいところですが。 生憎、しばらくアストラル・サイドには行けそうにもありませんねぇ……」 ゼロスは1人、ガブリエフ家が一望出来る空中で微笑むと、 「僕もそろそろ、忙しくなりそうですし。 ………今のうちに、エネルギー充電させて頂きますよ♪お2人さん♪」 悩む女。 悩む男。 それを利用する魔。 全てが交錯する時が来た。 <つづく> |