運命、そして宿命。









第11話:母親の説教。

すりおろしピーマン入りのおかゆを、泣きながら食べ終えた直後。
タイミング良く、母さんがあたしの部屋へとやってきた。
そして、入った瞬間に、一言。
「おかえり」
……悪寒が、背筋を駆け登る。
この『おかえり』が、母親の愛情とゆーものを含んだ、温かみのあるものであれば良
かったのだが――
今の母さんが放った『おかえり』は、砂漠地帯の炎ですら凍らせられるほどの、冷た
い声。
「……た、ただいま」
ともあれ、『おかえり』といわれた以上、返事を返さなければならない。あたしは汗
をかきつつも、冷静を装って返事をした。
すると、さっきまで父さんが座っていた椅子に腰を下ろした母さんは、
「……さぁぁぁぁて。聞かせてもらいましょーか?
 あ・れ・だ・け!使用禁止って言った『ドラグ・スレイブ』を使った理由を」
……やっぱしそうきたか……
「いや、その、んっと……」
あたしはしどろもどろになりながらも、頭をフル回転させて、何かいい言い訳を考え
る。
まさかバカ正直に、『負けるのが悔しかったから』とは言えねーし……
ををっ、そうだ!『正義のために、盗賊団撲滅のために使った』っていおう!!
「言っとくけど、『正義のために』とか『盗賊団撲滅のために』とかって言ったら、
今日の夕食、ピーマンの肉詰めに決定ね」
……あたしが口を開く寸前に、死刑判決のごとく言い放つ母さん。
あたしになんの恨みがあるんだ……(泣)
「……わかったよ……
 あんなよわっちい盗賊団に負けるのが悔しかったから、つい使っちゃったんだよ」
「よわっちい……って……
 あんた、ドラ・スレなかったら、きっちり負けてたじゃない」
「そーは言っても!あんな弱そうな名前の盗賊団に負けるなんて、プライドが許さな
かったんだっ!」
「名前?なんてゆーの??」
母さんの問いに、あたしは深く息を吸うと、
「『盗賊一団・木端微塵☆』」
「……確かに弱そうね……特に、語尾の☆が……」
あたしも初めて聞いたときは、ネーミングセンスのなさに、改名してやろうかとお
もったくらいだ。
「ま、でも――
 だからって、ドラ・スレを使って良かったことにはならないわ。
 あたしはあんたに、必要最低限の魔法だけを教えてきた。
 『ライティング』、『リカバリィ』、『リザレクション』、『フレア・ア
ロー』……そして、『ドラグ・スレイブ』」
「…………」
「ドラ・スレは、本当のピンチに陥ったときだけ使え――そう教えたはずよね?」
無言のままうなずくあたし。
「今回のは、本当のピンチでもなんでもない。
 ただ単に、悔しかったから使った……自分勝手でワガママな、あんたの自己中よ」
「……ごめんなさい」
「結果、倒れて、助けられて……
 どれだけの人に心配かけたのか、わかってる?」
「……ごめんなさい」
「あんたには、底知れない魔力があるわ。
 あんた自身、それを把握してないのに、ドラ・スレなんか使って……
 あれだけで済んで良かったけど、下手をすれば、森全体が吹き飛んでたわよ」
「……ごめんなさい」
「もう1度」
「ごめんなさい」
「もう1度」
「ごめんなさい」
「もう1度」
「……ごめんなさい……っ!」
「よろしい。
 これにてお説教タイム終了。
 ……さぁって♪今度はガウリイに説教しなきゃねー♪♪」
なんかやけに上機嫌になった母さんは、椅子からゆっくりと立ち上がると、部屋を出
ていこうとする。
「……母さん。
 父さんに説教って……なんかしたのか?」
あたしが聞くと、母さんはこちらを振り返り、
「……可愛い可愛い1人娘を、森に置き去りにした事についての説教♪」
そう言って、今度こそ部屋を後にした――

<つづく>

今回、いつもよりさらに輪をかけて短かったなぁ・・・ι
ついに次回、離婚をかけた論争勃発!(笑)
ちなみに予定なので、変わる可能性あり。(オイ)