運命、そして宿命。










第10話:帰還。

意識が闇から浮上する。
そして。
あたしは、ゆっくりと目を開けた。
そこには、見なれた天井と、朝日が差し込む窓。
……ここ……家……?
あたしは、あわてて記憶をたぐりよせる。
うーんと、たしか……ドラ・スレ使った後、なんかしんねーけど倒れて……んでも、
確か誰かがあたしを支えてくれたよーな……
………なんか、イマイチ当てになんねー記憶だなぁ……
少なくとも、ここはあたしの家、ガブリエフ家だろう。
意識を失ったあたしが、1人でここまで戻ってくるのはまず不可能。
とゆーことは、誰かが助けてくれたと言う事になるが……
と、そこへ。
がちゃ。ばたん。
「お、気がついたか?」
部屋のドアを開け、入ってきたのは、おかゆを手にしている父さんだった。
「……えっと……あたし……」
「昨日お前、森の中でドラ・スレ使っただろ?
 あんな怪我でそんなもん使うから……」
昨日?
「じゃあ、そんなに時間は経ってないのか?」
「まぁな……
 でもお前、結構あぶなかったんだぞ?熱は出すし……」
熱?
「そーいえば……怪我したとき、なんか熱かったかも……」
「……あんまり無茶してくれるなよ?
 お前さん、なんだかんだ言っても、結局は女の子なんだから」
むっ。
「だからぁっ!女の子扱いすんなっ!!
 あたしがそーゆう男女差別嫌いなの、知ってるだろ!?」
「そー言われてもなぁ」
言って父さんは、頭をぽりぽりとかく。
………って待てよ?
「なぁ。
 つまり――
 あたしを森で助けてくれたのって、父さんなのか?」
「ん?ああ。まぁな」
………ふーん………
「なんでまた?」
「なんでって……」
そこで父さんは、一瞬考え込むと、
「……娘が夜の森にいるんだ、助けに行くのは当たり前だろ?」
少し視線を泳がせつつ言った。
……なるほど。
「ふぅん。そーなんだ。
 あたしはてっきり、母さんになんか言われて、それで来たのかと思った」
ぴしっ。
あたしの言葉に、父さんは一瞬硬直すると、
「……はっはっは。バカだなぁルーナ。
 俺は純粋に心配してたんだぞ」
相も変わらず視線を泳がせ、額にびっしり汗を浮かべながら言う。
……バレバレだっつーの……
「……ま、いーけどさ。
 助けに来てくれたのには変わりないんだし。
 ………ありがとな、父さん」
「……どういたしまして」
あたし達は、お互いに微笑みあい――
「………あ――――――――――――――――――っ!!!!」
あたしは、とあることに思い当たり、大声をあげた。
「うわっ!?
 ……どうしたんだよ、ルーナ!?」
「父さん!
 この辺で、フェリ……っつってもわかんないか……とにかく、なんか見るからに情
けない男の子拾った家、ないか!?」
「………はっ?」
「男の子だよ、男の子!
 んーっと、確か銀の髪を肩まで伸ばしてて、めちゃくちゃでっかい目ぇした少年
!」
「………ひょっとしてお前……覚えてないのか?」
あたしの問いには答えずに、意味不明な事を聞いてくる父さん。
「……ま、そりゃそうか……
 お前がまだ、4歳の頃だもんなぁ……」
なんかしみじみと1人言を呟いている。
「ま、とにかく。
 フェリオなら無事だぜ」
「!?
 フェリオに会ったのか…!?」
「ああ。今、隣の部屋で寝てる。
 『リザレクション』使ったもんだから、疲れたんだろ」
……『リザレクション』……?
「なんでそんなもん使うんだよ?」
「あ、言ってなかったか?
 お前の怪我治したの、フェリオなんだぜ」
………………………………
「……マジ?」
「マジ。
 ほれ、右腕、ちゃんと動くだろ?」
……そーいえば……気にしてなかったけど……
ためしに、右腕を何回か回してみる。
ぐるんぐるん。
……ばっちり治ってるし……
「……そ、か。
 ま、無事ならそれでいいか」
「ん。
 ま、とりあえず、リナが作ったおかゆ。それ食べろよ」
………母さん。
「な……なぁ。
 母さん……怒ってた、か…?」
「………おかゆに毒が入ってなきゃ、多分怒ってないと思うぜ」
……どーやってそれを見分けろと……?
父さんが部屋から出ていった後、あたしはとりあえずおかゆに口をつけた。
そして――
「……めちゃめちゃ怒ってるかもしんない……」
毒なんかよりも数百倍は恐ろしい、ピーマンの味を口の中に認めて。
あたしは思わず、呟いたのだった――

<つづく>

さぁっ!まだまだ続くぞこの話っ!!
・・・当初の予定じゃ、こんなに長くなるはずではなかったのに・・・