A couple pass each other







2.再会(ガウリイ編)

リナと別れてから、オレは楽しいと感じる事がない。
生きている、ただそれだけだった。
死んでしまおうかと考えたこともある。
たが、もしかしたらまた彼女に会えるかもしれない。
そんな淡い期待がオレを生き長らえさせていた。

「いるんだろ、出てこいよゼロス」

オレは不意に感じた、懐かしい闇の気配を感じて言った。

「いやぁバレちゃいましたか。さすがはガウリイさん」

そう言ってゼロスが姿をあらわした。

「久しぶりだな、と言いたいところだが何しに来た?」
「いやぁ、なかなかおいしい負の感情が流れてきたので
 発生源に来たらあなたがいたというワケです」

こいつ、オレの感情を喰っていたのか・・・・。

「まさかあなたとリナさんが別れているとは思いませんでしたよ」
「そんなのおまえには関係ないだろう」

オレはそう言うと、ゼロスに背を向けて歩き出した。

「関係ありますね。僕はリナさんのこと好きですから」

いけしゃあしゃあと言うゼロスにオレは苦笑した。

「魔族にしては面白い冗談だな」
「なぜそう思うんですか?」
「もし本当に好きならこの半年の間に行動を起こしていたハズだ。
 第一、おまえさんほどの魔族が人間に惚れるハズがない」
「ガウリイさんにしてはマトモなこと言いますね」
「あのなぁ・・・」
「なかなかいいところをついてますが、ちゃんと理由があります。
 獣王様からここのところ立て続けに仕事を頂いていたので。
 それにリナさんは人間の中でも特別ですよ。
 闇を照らすまばゆい光、あなたもそれに魅せられたんじゃないんですか?」

オレは正直驚いていた。
魔族、それもかなりの高位魔族であるコイツが
どうやら本気でリナに惚れてるらしいことに。
そして、本音をみせないコイツがそれを見せたことに。

「まぁ、あなたがリナさんと別れたのは好都合です。
 遠慮なく僕が頂きますよ」

オレはゼロスを思いっきり睨みつけた。

「おお、怖わ。それじゃ僕はこの辺で」

ゼロスはそう言って、闇に溶け消えた。
このままじゃリナがゼロスの物になってしまう。
リナのことだからゼロスになびくとは思えんが
力づくで、ということもある。
それだけは嫌だ!!!
オレはリナを探し出す決意をした。







あれから早くも一週間が過ぎた。
当初は楽観視していたが、まったくと言っていいほど
彼女の手がかりはつかめなかった。
今日も酒場にいって情報収集するがこれといって収穫はなかった。
噂によるとここのところ彼女はぱったりと消息を絶っているらしい。
オレの頭に不吉な予感が走る。
首を振ってオレはそれを打ち消すとマスターに酒を注文した。

「お客さん、もうやめといた方が・・・・」
「いいから、注いでくれ」
「はいはい」

そう言ってマスターは酒を注いだ。

「女にでもふられたのかい?」
「なぜそう思うんだ?」
「さっきから女の誘いを断りつづけてるからさ」

そう言うマスターにオレは何も言えなかった。

「おいガウリイ、ガウリイじゃないか!?」

オレは背中から聞こえた懐かしい声に振り返ると
白装束に白いマント、白いフード。
白ずくめの格好をしたゼルガディスがいた。

「ゼルガディス〜、久しぶりだなぁ。
 まぁ、ここに座れよ」

そう言ってオレは隣りの席を指差す。
ゼルは言われるまま隣りに座った。

「ホントに久しぶりだなぁ、あの時以来か?」
「ああ」

あの時というのはダークなんとかという魔王と戦った時のことだ。

「リナは元気にしているか?」

ゼルの何気ない質問にオレは押し黙る。

「聞くだけ無駄か。アイツが元気じゃない姿なんて想像も出来ん」
「・・・・・・。」
「どうした?・・・・まさか何かあったのか!?」

表情を険しくて、ゼルは聞いてくる。
オレは正直に全部話すことにした。



「バカな、おまえたちが別れるなどと信じられん」

オレが一通り事情を説明すると
ゼルは信じられないという風に首を振る。

「ガウリイ、今さっきオレはリナが元気じゃない姿は
 想像できんと言ったな」
「・・・・・・。」
「たけどな、オレは過去に一度だけ見た事がある。
 おまえがフィブリゾにさらわれたときだ。
 あのときのリナは見ているこっちが痛いぐらいに落ち込んでいた」
「・・・・・・。」
「そしてリナがロードオブナイトメアに乗っ取られた時
 おまえは言ったじゃないか、『おまえがいる場所はオレの傍だ』と。
 そんなおまえたちが別れるなどオレは納得できん」
「だってリナから別れようって言われたんだぜ・・・・」

オレがそう言うとゼルはオレの胸倉を掴んだ。

「ガウリイ、貴様いつからそんなに腑抜けになった!!!??」
「ゼル・・・・」
「あのリナのことだ、なにか訳があったんじゃないのか!?」
「もしそうだとしても、オレから別れていたさ・・・」
「何故!!?」
「オレがリナを壊しちまいそうで、汚してしまいそうで、だから・・・」
「本物のバカだ、おまえは!!!」
「・・・・・・。」
「なんでそうまでして想いを押し殺す!!?
リナもリナだが、旦那はもっとバカだ。
 まったく、見ているこっちがじれったくなるぜ!!
 抱きたければ抱けばいいんだ!!!」
「簡単に言うがなぁ・・・・」
「そして逃げ出した結果がこれか!?」

オレはゼルの辛辣な言葉に反論することは出来なかった。
ゼルは本気でオレたちの心配をしてくれている。
普段、冷静沈着なヤツだけにそれがよくわかった。

「わかっている、オレが間違っていたんだ。
 オレはもうアイツ無しじゃ生きていけないし
 なによりゼロスなんかに渡すわけにはいかない」
「ガウリイ・・・・」
「それに今もうリナを探しているところなんだ。
 いまだに何もわかっていないがな」
「確かにここ最近はリナの噂を全然聞かなくなったな。
 オレはてっきり旦那が盗賊いぢめを阻止してるもんだと思っていたが」
「・・・・・・。」
「ともかくリナが見つかるまでオレも一緒にいてやるよ。
 二人掛りの方がいろいろと便利だろう」
「すまない」
「リナと旦那には借りがあるからな。礼などいらないさ」

ゼルはそう言って、席を立った。

「明日は早いんだろう?さっさと寝た方がいいんじゃないのか??」
「そうだな」

オレも席を立ち、宿屋に向かって歩き出す。

「オレはここの宿屋だ。明日の朝、さっきの酒場の前で落ち合おう」
「ああ」

そして、オレはゼルと別れた。
自分が取った宿屋につくまでオレはずっとリナのことを考えていた。

待ってろよ、絶対に探し出してやるからな。

その晩、オレは久しぶりに深い眠りに落ちた。




 【CONTINUE】


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ごめんなさい。
今回はリナの出番無しです。
そして次はリナ編なので今度はガウリイが出てきません。