思 惑


〜中編〜




時は少し遡る。
彼女は現在お昼寝中、朝からの精神攻撃(笑)で疲れていたのだろう。
安らかな寝顔、栗色の髪がそれを彩る。
ほのぼのとしたワンシーン。
が、それも長くは続かなかった・・・・




「なんであんたがここにいんのよ!!!!」
「起きなかったから」
「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!!!」

  どばきぃぃぃぃ!!!

どこぞのくらげと同じセリフを吐いたノエルを殴りとばす。
え?なぜって・・・・こいつがあたしの眠りを妨げたからよ!!!!
つまり、こともあろうに乙女の部屋に無断で侵入したのだ。
たくっ、なんであたしの周りにはこんな奴しかいないのよ!!
リナちゃん悲しい(シクシク)

あたしの一撃をもろに喰らったはずなのに、ノエルはすぐに復活した。
そのうえ、発した言葉はとてつもなく痛かった。

「いてててて、リナ契約違反だぜ。」
げっ!!!
あたしは依頼料の事をすっかり忘れていた。
こ、ここは舌先三寸ごまかし攻撃!!
「当然の報いよ!」
言いつつも、頬に一筋の汗が流れる。
すかさず、ノエルは言い返した。
「その汗は何だ?
だいたい、それが恩人に対する態度か?」
「何のことよ!」
「ガウリイさんとうまくいったのは誰のおかげかな?」
「な、な、な、な、な・・・・・」
「図星か(ニヤッ)」

  カァァァァァァァァ

・・・・・やられた(ぐすんっ)
「また謀られた・・・」
力無くつぶやく。
叫ぶ気力は、無論無い。
そのせいか、ノエルはフォローしだした。
「そんな落ち込むなよ。さっき殴ったの忘れてやるから」
「ほんと?」
自然と顔が輝く。
んっ・・・誰が現金ですってぇぇぇ!!!
乙女として当然の反応よ!!!
「あぁ、その代わりといっちゃあなんだがひとつお願いがあるんだが・・」
「何でも言ってください」
こいつ相手にひとつで済むなら安いもんである・・・・・と、思っていたのだが甘かった。


「キスしてくれ」
はっ?・・・・今こいつなんて言った?
「あぁ、もう一度言ってくんない?」
「だから、キスしてくれって」
なっ、

「なんですってぇぇぇぇ!!!!!」

あたしの声が響き渡る。
「お、おまえなんて声を・・・」
もろに叫び声を聞いたのか、かなりダメージを受けているようだ。
これこそ、天罰というものである。
「あんたが変なこと言うからでしょうが!!」
「お礼代わりにくれたっていいじゃねぇか。」
とんでもないことを平然と言う。
「何処の世界に縁結びのお礼にキスする奴がいるってぇのよ!!」
「ここの世界・・・・・・って、おまえなんか勘違いしてないか?
頬にキスしてくれって意味だったんだけど・・・」
へっ?なぁんだそういうこと・・・・・って、まてい!

「どっちも恥づいわい」
「それぐらいしてくれてもいいじゃないか。」
ノエルが真顔で迫る。
「う狽チ」
ま、まぁ確かに昨日うまくいったのはノエルのおかげだし、
寝る前に<お礼でもしようかな>とも思った。
それに、この様子だと願いを聞くまで帰らないだろう。
依頼料も気になる(実は、これが一番の理由なんだけど・・・・テヘッ)
・・・・ふぅ、しゃあないか。

「一回だけだかんね」
「分かってるって!それじゃあここに」
嬉しそうに、右頬を差し出す。
うぅぅぅ、やっぱり・・・・・えぇい女は度胸よ!
覚悟をきめ、顔を寄せる。
唇が触れる・・・・

  ばたん

と思いきや、それより一瞬早く扉が開いた。

開けたのは、この場面を絶対見られてはいけない人だった。
見た目100点、頭脳―100点の大ボケ剣士・・・ガウリイ・・・・












部屋に重苦しい空気が流れた。
全員、予想外の出来事に呆然としている。
誰も動かない。
しばらくして・・・・やっと呪縛がとかれた。


「ちっ、もう少しだったのに」
部屋にものすごい殺気が生まれる。
出元は言うまでもなく・・・・ガウリイ(無表情)
ひぃぃぃぃ!?!?な、なんちゅうことぉぉぉぉ!!!!!
ノエルのどあほぉぉぉぉ!!!!!
先ほどとは比べ物にならない空気が流れる。

それを破ったのもノエルだった。
だが、それは死刑宣告に等しかった。
「まっ、しかたねぇ。お邪魔虫は消えるか!」
にゃ、にゃんですってぇぇぇぇぇ!?!?!!!!
こ、こんな状態で二人きりになったら・・・・・・
背中に冷たい汗が流れる。
あたしはおもいっきり動揺していた。
そこに、更なる追い討ちがかかった。
「あっ、謝礼は持ってきてやるよ。それじゃあごゆっくり(はーと)」
逃げ道まで塞ぐなぁぁぁ!!!お願い行かないでぇぇ!!!!!
心の底から叫ぶ。

が、通じなかっ・・・・いや、わかっていてノエルはあたしを見捨てた。
「リナ、昨日は楽しかったぜ。」
とどめに爆弾まで落として、彼は去っていった。
ちなみに、ガウリイはずっと無言だった。
こ、これはやばひ・・・
昨日のことが頭をよぎり・・・・・・流れる汗の量が増える。
とてもじゃないが顔を上げることなどできない。
あたしはガウリイが口を開くのを待った。

やっと、沈黙は破られた。
しかし、その言葉にあたしの眼は点になった



「腹減らないか?」

はぁ?

な、なんだってぇ?
「いや〜、荷物持ちってけっこう疲れるんだ。」
顔を向けるといつもの笑顔があった。
な、なんで?
戸惑いながらも、何とか返事をする。
「そりゃあこんな時間だし、お腹はすいてるけど・・・」
「じゃあ、決まりだ。リナも早く来いよ。」
そう言い残し、ガウリイは出ていった。

なにがいったいどうなってんのよ!!!!
頭の中は真っ白である。
あたしの体はしばらく動いてくれなかった。


下に降りると、ガウリイが笑顔で待っていた。
テーブルにはたくさんの料理、そして始まる食事バトル。
危ない攻撃も無くなった。
いつもの関係・・・そう、ガウリイは保護者に戻っていた。

なぜ?どうして?
・・・・あたしはますます混乱していった。