限界 Gourry side


〜中編〜




何の問題もなく、魔導師協会に着いた。
だが礼金は貰えなかった。
あの本、かなり貴重だったらしい。
5日待ってくれと言われた。

案の定リナが切れた。
唱えだした呪文は・・・ファイヤーボール!!!!
オレは必死で止めた。
あまりの事態に恐れをなした協会員が、滞在場所を提供すると言い出した。
その提案に、リナは暴れるのを止めた。

が、次の瞬間・・・・・・今度はオレが切れた。

リナとノエルが一緒の宿屋で、オレだけが別だとぉぉぉぉ!!!!!
そんなことになれば・・・・・

・・・・妄想中・・・・

だめだ!だめだ!!だめだぁぁぁぁぁl!!!(以下エンドレス)

オレの殺気のこもった目付きの抗議、
あんどリナの説得(手に魔力光)により却下となった。

結局、オレとリナが同じということで話がついた。
すぐに(ノエルを引き離すため・・・ふっ)宿屋へ案内してもらった。
ちょうどいい時間だったんで、1日ぶりに二人だけの食事を楽しんだ。

・・・・・そして今、オレはベッドで横になっていた。

   コン、コン

軽い音がした。
この気配は・・・・・・
急いでドアを開ける。

やっぱりリナだった。
「ガウリイ、ちょっといい?」
上目遣いでオレを見る。

  くぅぅぅぅぅう、なんてかわいいんだぁぁぁぁぁ!!!!

「どうしたんだ、リナ」
心の葛藤を隠し、笑顔で答える。
「頼みたいことがあるんだけど」
「なにを」
「ちょっと付き合って欲しいの」
おまえのお誘いならいつだってオーケーだ
「ああ、いいけど」

  にや

リナが人の悪い笑顔をする。
め、めちゃくちゃやな予感が・・・・

「おばちゃ〜ん、ガウリイがいいって」
「すまないねぇ、お客さんにこんなこと頼んじまって」
いつのまにか出現する宿屋のおばさん。
「うちの主人がぎっくり腰になったばっかりに」
「いいのよ、どうせこのくらげは荷物持ちぐらいにしか使えないんだから」
ちょっと待て・・・それってここを離れなきゃならないってことか!!!
それはまずい!!!
「お、おいっリナ!!」
「そんじゃぁ、ガウリイがんばってね。」

人の話を聞けぇぇぇぇ!!
オレはノエルを見張らないといけないんだぁぁぁぁぁ!!!


心の叫びは届かなかった。
無常にも去って行く、リナ。
側にはニコニコ顔のおばさん。
オレは泣きたかった。


・・・・・・やっと開放されたのは夕暮れ時だった(滝涙)



戻ってすぐに、リナを探した。
彼女はどこにもいなかった。
こんな時間にどこ行ったんだあいつは!
盗賊イジメにしては少し早いし・・・・・

苦悩するオレに、宿屋の娘さんが教えてくれた。

なんだと!!
リナが男とあれからすぐ出て行った?!?!?!

宿屋の入り口に向かう。
が、あることに気づき足を止める。
もう外は暗かった。
今から探しにいっても捕まる可能性は低い。
それなら・・・・

オレはカウンターに座り、強い酒を注文する。
・・・・酒でも飲まないとじっとしていられない

オレのただならぬ雰囲気に、客が散っていく。
そんなことはどうでもよかった。

・・・・リナ・・・・

オレの頭には彼女のことしかなかった。






しばらくして彼女が帰ってきた。
オレは思わず息を呑む。
リナは白いワンピースを身に付けていた。
月明かりに照らされ、まるで女神のようだった。

  ・・・・きれいだ・・・・

だが、オレの顔は更に険しくなる。
・・・・男が贈った物だと気づいて

オレが怒っているとでも思ったんだろう。
リナは一言も話さぬまま自分の部屋に戻ろうとする。

  逃がさない!!

すぐに後を追い、腕を掴む。

「つっ、放して!!」
それに答えず、彼女をオレの部屋に連れて行く。

ドアを閉め、今まで掴んでいた腕を放す。
リナが数歩ぶんオレから距離をとる。
オレはドアに凭れ、彼女を見つめる。
いつもと違うオレに押されたのか、こちらを見ようともしない。
重い空気が流れた・・・・・

耐えかねたのか、リナが顔を上げる。

「遅かったな。」
その瞬間、声をかける。
リナが固まってしまった。
・・・・仕方ないな
「今までどこにいたんだ?」
嘆息しつつ声を和らげる。
そのせいか、リナがやっと口を開いた。

「広場よ。」
その答えに腹が立った。
「こんな時間までか?しかもそんな格好で!おまえは女の子なんだぞ!!」
リナが負けじと言い返す。
「あたしはもう大人よ!!何をしようとあたしの勝手でしょ!!!」
「おまえはまだ子供だ。」

・・・・そう、まだ子供でいてくれ。でないとオレは・・・・

外れかける保護者の枷を必死で抑える。
が、それも無駄になった。

「さっきまでノエルといたの。一緒に来ないかって言われたわ。」
 なんだって!!
暗い感情が心を支配する。

少し間をおき、リナが顔を伏せた。
そして、最も聞きたくなかった言葉を発した。


「今までありがとう。別れましょう、ガウリイ。」