彼の本気に彼女の憂鬱





               
〜4〜





俺はこれから、かってないほどの強敵に挑もうとしている。

はっきりいって、俺の持てる力のすべてを使おうと勝てる見込みはゼロに等しい。

だが、俺は敵に背を見せ逃げ出すわけには行かない。

愛するミリーナのため俺は戦い、そして勝つと決めたのだ!

 

「おいっ、あれ誰だ!もしかしてあいつもリナ=インバースに惚れたとか?」

「三角関係か?」

「いや、あの目つきの悪さからヤクザ………借金の取り立てかもしれないぞ?」

好き勝手に盛り上がるギャラリー。

 

目つきの悪い男―――ルークは、ガウリイの前まで進み立ち止まった。

「オレは、ガウリイ=ガブリエフ、一目惚れしたんだ。」

「誰も名前教えてくれなんて頼んでないし、それに、一目惚れなんて嘘くさいわよ!!」

恋する男―――ガウリイの瞳にはリナしか映っていないし、リナは、いきなり現れた怪しさ大爆発のガウリイの対応で忙しい。二人はルークなど、眼中にないようである。

 

俺、完璧存在抹消されてるよな…………だがしかし、ここで負けるわけにはいかない!俺の愛するミリーナが、ガウリイの捕獲を望んでいるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

ルークは相手にされない空しさを胸に秘めつつ、ガウリイに声をかけようとし、初めてまじかでリナの姿を目にした。

 

これが、ガウリイの女神………ガウリイが本気で惚れた女……これはこれは………。

「これが高校生!?どうみても中坊じゅねーか!!ガウリイ、お前ロリコンだったのか!!」

し、しまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!つい本音がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

ルークは慌てて口を押さえたが、時すでに遅し、リナとガウリイはピタリと言い合いをやめ、ルークを見た。いや、睨みつけた。心の中で絶叫を繰り返す真っ青なルークに

ドス

バキ

リナの見事な拳がみぞおちに、ガウリイのこれまた見事な手刀が首筋に炸裂した。

 

お、お見事です!リナさんと変態さんの息もピッタリです!!はぁ〜〜、生告白アメリア感動しました。常々、リナさんに「彼氏」なるモノは、あの性格と狂暴さでは出来ないと思って心配していましたが、ついについにリナさんも大人の階段を進みだすんですね!!ここは不肖アメリアなんとしてもお二人の「愛のキューピット」にならねば、私の正義が燃えてきましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

自称「愛と正義のキューピット」アメリアに火がついた……ゴォゴォと燃え盛っている。

 

ミ、ミリーナぁぁぁぁぁぁぁぁ、先立つ俺を許してくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!

いつまでも、ミリーナを見守っているぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

敵はあまりに強すぎた………………。

ルークはガクリとその場に膝をついて倒れた。

 

木の影に潜むミリーナは倒れたルークを見つめながら、チッと舌打ちし

「やはり、私の人選ミスだったようです。ここまで、使えないとは思いませんでしたが……。」

と呟いた。かなりというか、ものすごく酷すぎだと思うぞミリーナ!?

「ゼルガディスさん、行きますよ。」

顔面蒼白で、未だに呪文のようにぶつぶつと呟いているゼルガディスに声をかけた。

「ゼルガディスさん!!」

もう一度大きな声で呼びかける。やっと、ミリーナの呼びかけに気付いたのかゼルガディスは、唐突に立ち上がり後ずさりながら

「俺は、頭が……頭痛で………腰が盲腸で……足がヘルニアだ。帰らねばならん!!」

どうやら、ゼルガディスかなりパニック状態に陥っているらしい。彼曰く「俺はクールが似合う男」が台無しである。そもそも『制服大図鑑』を持っている時点でクールといえるのか怪しいものだが。

「やっぱり、壊れきってますね。何を恐れているのか解りませんが、ガウリイさんの女神は、どうみても普通の少女じゃないですか?さぁ、行きますよ!」

チンピラ数人を病院送りにし、ガウリイを地面にめり込ませ、ルークを一撃で倒したリナのどこが一体何ゆえ、普通の少女と言えるのか?恐るべし、ミリーナの感覚。

ミリーナは、がしっとゼルガディスの襟首を掴むと問答無用で引きずって行く。

 

俺がこれまで、築いてきた「クール」さと「どこか影のある男」というイメージが今日で崩れ去るのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!やめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!(以下エンドレスのため省略)

 

一方、ルークを粉砕したリナとガウリイはというと……………

「嘘じゃないオレは本気だ!ほんとにおまえさんに惚れたんだ。」

苦しげな切なげな顔で、リナに自分の思いを訴えるガウリイ。美形なだけに、その何ともいえない姿にため息をつく女生徒達。これで、落ちない女などいるのだろうか?

「あんたねぇ、だいたい昨日の彼女がいるでしょうが!!」

落ちない女はここにいた。怒り心頭、不機嫌モード全開のリナ。近寄ったら刺されそうであるが、ここに無謀な人間が一人いた。

「私の名前はリナ=インバース。年は15歳。家族は父、母、姉。成績優秀。趣味は、チンピラいじめ!柔道・空手・少林寺拳法が特技のかなり変わった女の子。」

「アメリアーーーーーー!あんた、何言ってんのよ!!」

ドカバキボコ

アメリア撃沈…………今日は負傷者の多い日である。

「こらーーーーーーー!そこメモるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

ドカ

リナの見事なアッパーがガウリイの顎に炸裂した…………今日はほんとに負傷者の多い日である。

リナは仁王立ちで、ガウリイを睨みつけ

「とにかく、とっとと消えなさいよね。だいたいあんた部外者の上に今、こっちは授業中なのよ。」

リナの言葉に

「今、授業中だったんだな………………。」

しみじみと呟く生徒達の後ろにいる、体育教師には、もはや哀愁さえ漂っていたりする。

 

「おいっ、また新しいのが来たぞ!!」

「銀髪の美人は、あの抱きつき兄ちゃんの元カノでだな。リナ=インバースに宣戦布告しに来た。」

「ふんふん命知らずな、となると銀髪美人が引きずってるモノはなんだ?」

ますます盛り上がるギャラリー。当の本人達の耳に入ったら、瞬殺まちがいなしである。

 

恋する男の回復力は凄まじい、いや、この男だけが並外れてすごいのだろう。そしてあきらめも悪かった。

「昨日の女とは別れた。」

リナの「今、授業中。」と言う言葉もなんのその、今、ガウリイにの頭の中にはとにかく「リナと付き合う」これしかない。

「はぁ〜、ほんと物分りが悪いわね!あたしはとっとと消えろって言ったのよ!!」

まったくもって噛み合わない会話を繰り返す二人。

 

ミリーナは無言でルークの横を通りすぎ、ガウリイとリナの近くまで来ると、なんとゼルガディスをリナの前に突き出した。あれだけゼルガディスは、リナに会うのを恐れていたのにである。どうやらゼルガディスこそが真の生贄だったようだ。

リナが、ガウリイとの押し問答をやめ、ゼルガディスを見た。ゼルガディスも思わずリナを見てしまった。目が合った瞬間ゼルガディスの心臓は間違いなく止まった。顔からは冷たい汗が噴き出し、背筋には悪寒が走った。リナは、一瞬驚いたような顔をしていたが、すぐさま小悪魔的な笑みを浮かべると

「ゼルちゃん、お久しぶり!」

「ゼルちゃん!!!」

ミリーナとそれまで半分死んでいたルークとガウリイの声が見事に重なった。ミリーナとルークの声には驚愕とそして戦慄が、そしてガウリイの声には嫉妬と殺意が含まれていた。

 

あのゼルガディスが……「クールで影があってステキ!」と密かに女学生の間で人気のあるゼルガディスが……どうして何ゆえゼルちゃん!!

 

………………………………い、今のは幻聴でしょうか……………。

 

ゼルちゃんだと!!オレなんて名前すら呼んでもらってないし、相手にもされてないのに………ゼルガディス許せん!!リナとオレの邪魔をする奴は友達であろうと………殺す!!

 

「お二人の関係は何なんですか?」

何とか驚愕と戦慄から立ち直ったミリーナが、いきなりズバリと斬りこんだ質問をした。とたん、ガウリイの全殺意が、ゼルガディスに向けられた。ゼルガディスの返答次第で、ここに死体と殺人者が誕生する事になるだろう。

 

う、動けん!!動いたら下手な答え方をしたら、ガウリイに確実に殺される…………。一体、俺が何をしたっていうだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

ゼルガディスは引きつった顔のまま、まるで地面に縫い付けられたように微動だにしない。張りつめすぎて、針で突いたら破裂しそうな空気が流れている中

「ゼルとは幼馴染で、長い付き合いよ。一緒に昔はよく遊んだし、ゼルが何歳までおねしょしてたとか、小学六年の時、逆上がりが出来なくて半泣きしてたとか、それから」

リナが、悪魔も真っ青な笑みを浮かべて答えていく。

「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、やめてくぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

ゼルガディスは、涙目で叫びその場にガクリと膝をついた。

「俺のイメージが…………俺の………俺の……俺の。」

「幼馴染、昔一緒に遊んだ……………。」

哀れなゼルガディスにさらに追い討ちをかけるように、ガウリイの地を這うよな低い声がした。

「ゼルガディス、お前とは話し合う必要がありそうだな。」

ガウリイは恐ろしいほどの殺気を漲らせ、ゼルガディスの襟首を掴んだ。そしてリナの前まで行くとその顔にはお日様のような笑顔が………変わり身の早い男だ。

「リナ、明日も会いに行くからな。」

そう言って屈み込み、リナの頬にキスをした。

 

―――――――その場に凍りつく一同―――――――

 

リナは、あまりの事にしばし、目を開けたまま気絶していたが正気に戻ると

「な、なななななななな…………ににににに…………。」

顔を真っ赤に染め上げて何事かを呟いているが、もはや言葉になっていない。

言うだけ言って、する事だけしてゼルガディスを引きずって去って行くガウリイには、またもや殺気が。何とか立ち直り少し遅れてその後に続きながら

「ゼルガディスさんのご冥福を祈りましょう。」

どこか遠い目をしながらミリーナ。

「今の状況で笑えないからやめてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ、ミリーナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

頭を抱えながら叫ぶルーク。

 

 

「あの変態男ぉぉぉぉぉぉ!次会ったらぜったいぶっ飛ばしてやるぅぅぅぅぅぅ!!」

やっと言葉らしい言葉をしゃべれるようになったリナが、怒り狂ったように叫んでいる。その横で、すっかり存在の薄くなっていたアメリアがうっとりとした様子で

「ゼルガディスさん……………ス・テ・キ!アメリア、恋・の・予・感。きゃーー、恥ずかしいです!!」

 

やっとこさセイルーン高校を襲った嵐は、おさまり一時の平和が戻ったような気がする………。

 

 

この波乱万丈な出会いで

『追う者と追われる者―――リナとガウリイ

 思う者と思われる者―――アメリアとゼルガディス

 一途な者とそっけない者―――ルークとミリーナ』

となった。さぁ、これからどうなるんだ?

 

 

 

 

 

 


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あとがき

ギャグが嫌いな方にはきつい一品ですかね?これ。

あぁ〜〜、シリアスがブラックが遠のいて行く〜〜(涙)

ふふふ、でもねもう少し進んだら、ガウリイの○○○○が出て

くる予定。少しはシリアスにそんでもって思いっきりグラックに!