リナちゃんの受難












 よく晴れた青空、歌う小鳥たち。

 セイルーンに続く街道をてくてくと歩く
 天才美少女魔道士とその保護者(自称)

 特に急ぐ旅で無し、あちらこちらの
 美味しい物をパクつきながらのこの旅路。

 しかし、災難は忘れた頃にやってくる。

 トラブルにやたらめったら縁のある
 彼女なら尚更に・・・










 その日の夜は、そこそこの宿に泊まり
 いつものようにお食事をしてそれぞれの部屋へ。

 ガウリイはお風呂に行くと言っていたし、
 大分お酒も入ってた。

 昼間仕入れた盗賊情報を確かめに行くのは
 今がチャーンス!!

 急いで身支度を整えて、翔封界で窓から飛び出す。

 もたもたしてたら感の良いガウリイの事、
 すぐに邪魔されるのは目に見えている。

 高速移動呪文なら、たとえ気付かれても
 ある程度の時間は稼げると踏んで、
 目立つが機動性の高い手段を採ったのだ。









 
 「さーてと、確かこの辺よね・・・」
 今夜の宿から飛ぶこと大体一時間、
 話ではこの辺りに盗賊のアジトがある筈。

 呪文を解いて、そっと足元の森に降り立った。

 あんまり目立つ事をして、
 逃げられたら元も子もないのよね・・・。

 自分の気配を消しつつ、複数の気配のする方に近づいて行く。











 少し開けた場所に、いかにも人相の悪い男達がたむろっている。

 焚き火の明かりに照らされたそいつ等は、
 楽しそうに酒を飲みながら馬鹿笑い。

 「今日の仕事は楽だったなあ、おい」
 雑魚その1が喚くと、雑魚その2が
 「おうよ、あんないいもん持ってやがったもんな!」
 ありゃーここ最近の獲物としちゃ、一番じゃないか?
 そう言うと、がばぁっと酒をラッパ飲みする。

 ふっふっふっ、らっきぃ!!

 そのお宝はこのリナちゃんが
 有効に生かしてあげるからね♪

 期待に胸をわくわくさせつつ
 小声でカオス・ワードを紡ぎ・・・。





 べしゃっ!!





 今まさに飛び出そうとしたリナの足に
 引っかかった木の根っこ。

 思いっきり顔面から
 地面に転がったまではまぁいいとして。

 そこが腐葉土の上だった事、そして奴らが夜行性で
 今まさにお食事タイムだった事が
 リナの不幸の始まりだった・・・。










 「おい、こんなところにこんなもんが転がってたぞ」
 雑魚その1がナメクジの真上に顔面アタックを
 かまして気絶したリナを見つけたのは、
 その後すぐの事だった。
 











 「おい、本当にこいつがあの・・・」

 「間違いない、こいつがあの・・・・」

 頭の上で声がする。

 「まさかこんな所でお目にかかれるとはなぁ・・・」

 「あのお宝より、もっと値打ちもんだぜ・・・」

 声は二人分、気配も同じ。

 気を失った後、どうやら奴らに
 捕まってしまったらしい。

 悟られないように自分の状態を確認する。

 手も足も自由を奪われている。

 ロープか何かでギチッと縛られているらしい。

 おまけに口には猿轡。

 まさに可憐な乙女のピーンチ!!

 やばいなぁ・・・ガウリイはここの事知らないし。

 知っててもここに辿り着くのに
 どのくらい掛かる事やら。

 イキナリ殺されるような感じじゃないけど、
 このままだとやばい事に変わりはない。

 「とにかくお頭に知らせてこいよ」

 おおっ、見張りが一人になったら
 何とかして口を自由にしないと・・・。

 しかし、ドタドタと近づいて来る複数の気配。

 「おい、あのリナ=インバースを
  捕まえたってのは本当なのか!?」

 「これがあの・・・」

 「本当に胸がない・・・」







 ・・・ぷちっ。








 今呪文が使えたら
 こいつらズタボロにしてやるのに・・・。


 心の中で悔しがるリナの耳に、
 「お頭、コレが例の・・・」と言う雑魚その1の声が聞こえた。














 リナが転んでナメクジに頬ずりしていた頃。

 「リナの奴、また行ったな・・・」

 風呂から上がったガウリイが、
 気配の消えたリナの部屋で唸っていた。

 「あれ程一人で行くんじゃないって言ってるのに、
 聞きゃしない。今日はちょっと灸を据えてやらんとなぁ」

 ぼやきつつ支度を整え、昼に聞いたのは確か・・・
 と見当をつけると宿を飛び出した。

















 「これがあの!!」

 あたしを見た盗賊の頭の第一声はこれだった。

 「ああ、俺たちゃ本当についてるぜ。
 あのお宝の次はあのリナ=インバースが
 転がり込んできたとはな!!」

 馬鹿笑いは止まらない。

 「おい、例のブツを持って来い。
 せっかくここにリナ=インバースがいるんだからな」

 何をするつもりなのか、不安になってくる。

 抗う術が無い以上、今のあたしにはどうにもできない。

 グイッと体が引き寄せられる。

 これ以上気を失った振りをするのは得策ではない。

 目を開けて周りを見渡すと。

 あたしは目の前の光景に言葉を失ったのだ・・・。















 がさがさと茂みを掻き分けガウリイが行く。

 宿から走る事二時間、
 ここら辺だと思ったんだが・・・。

 かすかに漂うリナの気配。

 少し進むと開けた場所に出た。

 燻っている焚き火の跡。

 空の瓶が辺りに散乱している。

 少し前までここに人のいた証。

 しかし荒れた様子はまったく無い。

 「確かにリナの気配の跡があるんだが・・・
 呪文を使った形跡は無し。
 まさか捕まったりしてないだろうなぁ」

 しばらく辺りを調べてみると、
 大勢の人間が歩いた跡を見つけた。

 人数は20人位か。
 一応カモフラージュしたつもりだろうが
 俺は誤魔化されないぜ。

 「とにかく行ってみるか」
 ガウリイは跡を追う事にした。
  
















 あたしは何でこんなことを
 させられているのでせうか・・・。


 リナは現実逃避したくなる。

 しかし周りはそれを許してくんない。

 「「「おお〜っ」」」
 周りから野太い声が飛ぶ。

 奴らの視線を一身に浴び。

 あたしは・・・・・・・・・・・・・・
 ・・・・・・着せ替え人形にされていた。(泣)
 




 あそこであたしが見たもの。

 それは・・・大量のぴこぴこリナちゃん人形だった。

 洞窟と思しきフロアの壁一面に、
 綺麗にディスプレイされたぴこリナ!!

 あまり思い出したくない過去の遺物と
 ばかり思っていたのに、
 まさかまさかぴこリナ愛好会なるものが
 この世に存在しようとは!!


 そんなもん存在しなくていいやいっっっ!!


 あたしの心の叫びをよそに
 お頭はムサイ瞳をキラキラと輝かせ。

 その手にあるのは大量の服、服、服。

 もうどっさりと。

 横にいるほかの奴らは靴だのリボンだの
 ここはどこぞの衣装屋よ!!と言いたくなる位
 ありとあらゆる種類のラブリーグッズ。

 飾られているぴこリナ達も、
 一つとして同じ服を着ていない。

 「まさか本物のリナーインバースが手に入るとは・・・。
 これで私はぴこリナ愛好会総帥の座を
 手にすることができるのだ!!」

 「「「お頭ぁ!、おめでとうございます!!」」」

 子分たちの喜ぶ声が木霊する。





 『いっやあぁぁぁっっっ!!!!!!!!』





 誰があんたのもんになると言った!!
 だれでもいいからたぁすけてぇ〜。

 心の叫びも空しくズリズリと
 あたしは引きずられて行ったのだ・・・。












 不幸中の幸いと言おうか、
 あたしの縄を解く勇気のある奴は居なかったらしく
 無理やり脱がされて着せ替えられるという
 事態にはならなかったが・・・。

 いすに座らされたあたしにごっつい兄ちゃんが
 リボンをつけたりお化粧したりと甲斐甲斐しく飾り立て
 服は上から羽織るか被せられて。

 足には例の音のなる靴。

 何でこんなに色々揃ってるんだろう?と疑問だったが
、着せ替え部屋の隅に転がる
 刳り抜かれたドレスを見て理解した。

 こいつら、本物の衣装とか宝石で
 ぴこリナの衣装を作ってやんの・・・。







 
 衣装替えが終わる度にあたしは
 ぴこリナの飾られたフロアに連れて行かれて見世物にされた。

 「か、かわいいっ」

 「生きてて良かった〜」

 「リナちゃんっ!こっち向いて〜っ!!」

 口々に好き勝手言う盗賊共。








 「リナさんよ、足の縄を解くから
 ちょっとだけ歩いて見てくれないか」

 そういってお頭があたしの足を縛っていた縄を解く。

 そのまま走って逃げたいが、
 手を縛っている縄の先を握られているのでそうも行かない。

 仕方なく一歩を踏み出すと。

 「ぴきゅっ♪」

 うあっ、可愛い音。

 「「「うおおおおおっっっ」」」

 大の大人(しかも盗賊)が
 涙を流さんばかりに感激してた(汗)。

 もう一歩・・・。

 「ぴきゅんっ♪」

 「「「本物のぴこリナだ〜っっ」」」

 ひしっっ!!と抱き合って喜ぶ野郎ども。

 うひいぃぃぃっ、こんなとこにいたくな〜いっっっ。








 ・・・・そして延々とおもちゃにされて今に至る。

 ああ、早く帰りたいいいいいっっっ。









 かなりの時間、見世物にされていた気がする。

 なんかもう投げやりに歩いていたあたしを見て、
 「今日はこのくらいで」とお頭。

 ホッとしたあたしをズリズリと子分Aが
 引きずって物置に押し込みやがった。
 『あんだけ人のことちやほやしていた癖に
 この待遇は何よ!!』と文句は有るけど
 とりあえず今は置いといて。

 やっと一人になれたことだし、
 取りあえずこの猿轡を何とかしたい。

 幸い足の縄は解かれたままなので、
 狭い物置を歩いて役に立ちそうな物を探す。

 履いているのがいつものブーツなら、
 隠しナイフが仕込んであるんだけど・・・。

 今履いているのはぴこリナの靴。

 どんなに静かに歩いても「ぴきゅん♪ ぴきゅ♪」と、
 やかましい。

 さて、どうしたもんか・・・。















 「・・・ほんとなのか?」

 「本気らしいぞ。それを使えば上手く行くって
  お頭が浮かれてたからな」

 考え込んでたあたしの耳に飛び込んできたのは、
 外の見張りの声。

 小声で話してるつもりだろうが、エルフ並みに聞こえの良い
 あたしには、はっきりと会話が聴こえる。

 「そのコントロール何とかで、
 本当に言う事を聞かせられるのかよ?」

 「俺に聞くなよ。しかし、それが本当なら
 あのドラまたを思いのままに操れる」

 「そしたら俺達は最強の用心棒と
 本物のぴこリナを手に入れられるってか!」

 「しかも今日みたいに猿轡なんて無粋な物を
 しなくてもいいしなぁ」

 「そ、そしたらこう、
 可愛く腕を振りながら愛らしく歩かせたりも?」

 「おうよ!まさに究極のぴこリナ!!
 至高の宝にして最強の武器って訳だ」





 ぞぞぞぞぞっ!!!





 あたしにコントロールクリスタルを埋め込むつもり!?

 これは早く逃げないとやばいかも。

 ちょっぴし焦って口をモガモガ動かしてたら
 少し猿轡が緩んだ!

 もうちょっと・・・と更に足掻こうとしたその時。

 ドサドサッと何かが倒れる音。

 そして、扉が開かれていく・・・。








 そこに立っていたのは・・・子分Aだった!!








 「さあ、俺と一緒に逃げよう!!」

 言うなりそいつはあたしを楽々と
 抱え上げて走り出した。

 「ふぁんふぁ、ひっふぁふぃふぉーううふふぉふぃふぉ」
 (あんた、いったいどういうつもりよ)

 「かわいそうに。
  君はあんなむさいオヤジには似合わない。
  これからは俺が可愛がってあげるからね♪」

 なに〜っ!!
 こ、こいつあたしを独り占めにするつもり?

 でも、ある意味ラッキーかも。
 ここを抜け出してからこいつをプチ倒せば・・・。

  そう目論んだあたしは甘かったかも。

 出口近くに固まってこっちを睨んでいる盗賊ども。

 「おまえ!!舐めた事しやがって、
 どう落とし前つけるつもりだ!!」

 怒鳴られた途端、子分Aはガタガタ震えだした。

 あーあ、もうちょっとで逃げられたのに。

 こんぢょうなしなら初めから
 こんなことしなきゃいいのに・・・。

 のんきに考えてたら、親分がニヤっと笑いながら
 「おい、許して欲しかったらそのまま
 リナ=インバースを抱えてろよ」懐から何かを取り出す。

 ゴツイ手の中で輝く赤い物・・・
 コントロールクリスタル。

 「これを付ければもう俺達の言いなりってわけだ、
 リ・ナ・ちゃん♪」




 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!




 鳥肌もんの微笑を浮かべて、こちらに歩み寄る親分!!

 こらっ、子分A!!じっとしてないでに逃げてよぉっっっ。

 「ごめんね、でもみ〜んなで可愛がってあげるからね」
  諦め切った顔で ほざく子分A。

 「さてと」わしっと額のバンダナを毟り取った親分の、
 コントロールクリスタルを摘んだ手が近づいて来る。
  
  ああっ、今度こそ本気でに乙女のぴ〜んち!!
  だれか!たすけて!!










 ばきぃっ!!

 イキナリ目の前の男が吹っ飛んだ。

 かわりにあたしのまえに立っているのは長い金髪、
 蒼い瞳の自称保護者。

 「少しは懲りたか?」言いながらあたしを
 子分Aから奪い返して猿轡を外してくれる。

 「ちょっとはね!!」
 照れ隠しにフレアアローを放ちながら答えるあたしに、

 「ったく、あとで判ってんだろうな!!」
 怒鳴りながらも敵を倒す手は休めない。

 うわぁぁぁっっ、かーなーりー怒ってるぅぅぅ。

 冷や汗を掻きながらとにかく盗賊どもをたたきのめすっ!

 このあたしにあんな恥ずかしい格好させた罪は
 海よりも深〜いっ!!

 数分後、立っているのはあたしとガウリイのみ。

 他の面々は転がってヒクヒクしてる。

 「終わったな」
 にこりともせずにガウリイがこちらを見てる。

 「ううん、まだ」
 あんなもんをここに置いとく訳には・・・。

 「なら、ここでいいぞ」
 そう言ってガウリイは倒れている奴らをぽいぽいと、
 荷物を放り込むように近くの部屋に投げ込んでいく。

 「さて、と」パンパンと手を払い、
 こちらを向いたガウリイは真面目な表情で。









 「そこに座れ」ガウリイの手が自分の前を指す。

 あたしは大人しくちょこんと地べたに座り込んだ。

 「言う事はあるか」
 腕を組んでこちらを睨むガウリイ。
 いつもより少し低い声。
 かなり本気で怒ってるし。
 「・・・ごめん」素直にそう言った。

 心配かけたのは事実だから。
 
 「他には」

 「助けてくれて、ありがとう」
 ・・・なんか、恥ずかしい。

 ぽんっ、と頭に乗っかる手。

 そのままグリグリと頭を撫でる馴染みの感触。

 「だから一人で行くなって行ったろ」
 仕方ないなぁと言った顔で小さく笑う。

 「ん」照れくさくなって横を向いたら
 視界に入ったぴこリナの群れ。

 あれ、どうしよう・・・。

 「なぁ。アレってお前だよな」
 ガウリイがポリッと頬を掻きながら聞いてくる。

 「まぁ、昔ちょっとね」

 「あれ、どうするんだ?」

 「壊すのもなんとなくいい気持ちがしないのよね・・・」











 結局、大量のぴこリナ達は洞窟の奥に封印し。

 盗賊どもは役人に引渡し、
 少しばかりの報奨金を受け取った。

 あいつらの言ってたここ一番のお宝とは、
 限定3体のみ作られたデラックスぴこリナの事だった。

 なんか、ひたすら疲れに行っただけかも・・・。

 一応ぴこリナ達は本物の宝石とか
 ジュエルズアミュレットを付けてたんだけど、
 自分の姿をした人形から引っぺがすのもどうか・・・
 と、諦めたのだ。










 その後、盗賊いぢめに行こうとする度に。
 

 ガウリイがどさくさ紛れに拾ってきた
 着せ替え状態のあたしが映っているメモリーオーブ
 (LOVEっ!!着せ替えリナちゃんとふざけたタイトル付)
  を見せて「またこうなってもいいのか」と
 延々とお説教する日々が続いたのだ。

 嗚呼・・・あたしの受難はいつまで続く・・・・。


                  おしまいっ!!