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今日は雨だ。 雨といっても春の雨は柔らかくて優しいから好き。 あたっても少しならいいけど、調子にのってあたっていると身体の芯から冷えてしまう。 あたしは無様に風邪をひいた。 「りなぁ〜家、帰りなよ。余計悪化するよ。」 「う〜ん・・・」 あたしは、風邪っぴきなのに、無理して学校に来ている。 別に無理する事もないとは思ったけど、習性で来ちゃうのよね。 何故か学校って特別なんかない限り必ず来ちゃうのよね。当たり前といえば当たり前だけど、我ながら真面目だと思うわけよ。サボった事ないんだもん。 「大学部のガウリイさんに送ってもらったら?」 「・・・う〜〜」 ガウリイとは家が隣の幼馴染だ。 ちっちゃい頃は漫画のように窓からお互いの家を行き来したものである。アメリアなんかに言わせると“燃えるシュチエーション!!”なのだそうだ。アメリアは特殊な環境だから別だけど、結構みんな幼馴染っているもんじゃない?家が隣とは限んないけどさ。 「りーなぁー。これ以上ここにいると、リナは悪化する。周りにいるわたしは風邪がうつる。わたしは、今度の土曜日には万全の体調でいなければいけないのよ!!もし、わたしが土曜日に出掛けられなかったら・・いいえ、今週わたしは土曜日のための準備で大変なのよ!駄目よ!!そんなの正義じゃないわ!!リナ!すぐ帰るのよ!!わたしのために!!!」 足を机の上にのせて、顔の前で握りこぶしを震わせ、興奮気味にまくし立てる。 パンツ見えるわよ・・・。 ・・・ズキズキ。うー本格的に頭痛くなってきた。別にさっきのアメリアの所為とは言わないけど、きっかけではあるわね。でも、今張り倒す元気はない。 「あー。帰りますー。大切なゼルちゃんとのデートだもんね。あたしは、ひとり誰もいない家に帰りますー。」 「大丈夫?車で送って行こうか?それともガウリイさん呼ぶ?」 「いいわよ〜。近いんだし。大人しく寝てるわ。幸い、授業も生徒会も忙しくないしね。明日、辛かったら来ないから、そしたらお見舞いにでも来てよ。ゼルちゃんと。」 「はーい!わかったわ。でも、本当に辛くなったらいつでも行くから電話してね。」 「あんがとー。じゃぁ、先生にいっといてね。」 アメリアは超お嬢様ってやつだ。とはいっても、本人は高慢な所なくて、気さくでいい子なんだけどね。でも、学校の先生なんかは気を使っちゃってたまんないらしい。金持ちも大変やね〜。 校舎の外に出ると、雨はしとしとと降り続いていた。 あたしは、水色の傘をさして歩く。水色の傘はガウリイから貰ったものだ。 なぜか、ガウリイはあたしを構う。 「リナ!」 「ガウリイ。どうしたの?まだ昼だよ。授業は?」 「アメリアから電話を貰った。リナが体調悪くて帰るから送れって。リナが電話くれたらすぐに迎えに来たのに。」 「別にいいのに。ガウリイは過保護なのよ。」 「リナの事が心配なんだよ。オレは授業なんてどうにでもなるから、送ってくよ。」 「・・・じゃ、お願い。」 はぁ〜。 あたしは、ガウリイに気付かれないようにこっそりため息をつく。 正直、うざい。 あたしとガウリイは幼馴染というだけであって、家族でもないし恋人でもない。それに、あたしは16歳、ガウリイは21歳。ハッキリおかしいと思う。 あたし達が付き合ってるっていうのであれば、おかしくないが、そんな事は全くない。ガウリイはあたしが知ってるだけで今まで10人くらいと付き合ってる気がするから、もしかしたら2・30人とは軽く付きあってんじゃないか?今、彼女が何人いるか自分でも分かってないんじゃないかとにらんでる。 そんな、いいかげんな男と誰が付き合いたいもんか。あたしだって、乙女の夢がある。 「あれー、誰もいねーぞ。」 「当たり前。今は平日の昼間よ。」 あたしは、鍵を取り出し玄関を開ける。ガウリイは勝手知ったる他人の家って感じで、あたしより先に家に入る。 「久しぶりだなー。リナの家に入るの。何年ぶりかなぁ〜」 「さぁ?10年は来てないんじゃない?」 「そうだっけ?それにしても全く変わってない気がするなぁ〜」 「そりゃ、改装したわけでもないし、そうそう変わんないわよ。」 「ふ〜ん。」 言いながら、居間のソファなんぞでくつろぎ始める。・・・こいつ、いつ帰るんだ?送ったんなら、さっさと帰って欲しい。 「・・・送ってくれてありがと。あたし、雨に濡れたみたいだしお風呂入って寝たいんだけど。」 暗に帰ってくれって言ったんだけど、こいつには通じなかったみたいだ。 「ああ、オレ、台所であったかいものでも用意しとくから、ゆっくり入って来いよ。」 「・・・・平気だから、帰ってくれって言ってるのよ。」 「?何でだ?体調悪いんだろ?家族の人が帰ってくるまで傍にいてやるよ。」 ・・・・・・いいかげん、こいつの無神経さには頭がくる。体調の悪いあたしを気遣って、帰ってくれればいいのに。 「・・・あたし、お風呂行くから、出るまでには帰ってよね。体調は平気だから。」 嘘。体調はどんどん悪くなってる気がする。それが、体調の悪化によるものなのか、ガウリイの態度によるイライラからくるものなのかはわかんないけど。 ・・・・・・・早く、寝よう。 お風呂で軽くシャワーを浴びると身体が火照って気持ちいい。このまま寝てしまえば、明日には元気になってるだろう。気分も軽く、何か飲もうかなと思って台所に行くと、ガウリイがいた。 「ガウリイ・・・何してんの?授業あんでしょ?帰れば?」 「何言ってんだよ?飲み物用意しとくって言っただろ?」 そう言って、あったかいミルクティを差し出す。 お風呂上りに、あったかいものっていらなくない?たとえ、風邪をひいてたとしても、いや、ひいてるからこそ、いらない。でも、せっかく入れてくれたものなので貰う。 「ありがとう。」 「おう!飲んで暖かくして寝ろよ。」 ・・帰らないの?あたしには、今のセリフ、別れの挨拶に聞こえたんだけど・・・ すっかり、居間に落ち着いたガウリイに呆れつつ、ミルクティをすする。 「今週、ゼルがアメリアとデートすんだってな。」 「ああ、そう言ってたわね。」 ああ、外はまだ雨だなぁ。 「リナは誰かと付き合ったりしないのか?」 いきなし、何を聞いて来るんだ。こいつ。 「別に好きな人いないもん。無理して付き合うことないでしょ?」 だいいち、あたしあんま男と付き合いたくない。身近にいた男が女たらしだから、男に夢を抱けないのよね。あっ、でも父ちゃんみたいな人ならいいなぁ〜。 「お前、結構もてるって聞いたぞ?好みとかないのか?」 「ほとんど初対面みたいな人に告白されてもうれしくない。」 あたしが通っている学校は同じ敷地に大学まである。あたしは生徒会やってて、いろんな所に出入りしてるせいからかなぁ。大学部の人からも告白されたことはある。悪いけど、うっとおしい・・・。話した事なんてほとんどないような人なのに、好きなんて信じられない。 あたしは、だんだん頭が痛くなってきた。それ以上に胸がムカムカする。 なんで、ガウリイはこんな事を聞いてくるんだろう。あたしが体調悪いって本当に分かってんのかしら。ティーバックに牛乳入れただけのミルクティだって、おいしくない。何の繋がりもないのにあたしの世話をやくガウリイにイライラする。 いいかげんにして欲しい。 「ガウリイ、前から言いたかったんだけど、もうあたしの世話焼かないで。あたしとガウリイは他人なんだから。」 「幼馴染じゃないか?」 「幼馴染は、あたしだけじゃないでしょう?あたし、ガウリイの事よくわかんない。彼女ころころ変えるし、何考えてんのかわかんない。イライラする。」 あたしは、普段から考えていることをぶつけてしまった。ぶつけてしまったら、すっきりすると思ってたのに・・。残ったのは、居心地の悪さだけだった。 「リナ・・?」 「あたし、寝る!じゃあね!」 あたしは、その場を逃げ出すように、2階の自分の部屋に駆け込んだ。 ・・・疲れた。くらくらする。ムカムカする。こんな想いをさせるガウリイなんて大っ嫌いだ。 「リナ・・いいか?入るぞ?」 あたしは布団に包まって横になってた。横になってもイライラは収まらず、目を閉じて、じっとしてた。 「リナ?大丈夫か?つらいんじゃないか?」 うっとおしい。さっさと帰って欲しい。 「オレがリナをイライラさせちまったのか?謝るから、顔をあげてくれ。」 こいつは、何でそこまであたしに気を使うのか?ここで無視したらあたし、悪人じゃん。 「何よ?」 ちょっと、不機嫌な顔を布団から出して、ついでに起き上がる。イライラは収まってないけど、頭痛いのは消えた気がする。 「リナ、何でそんなに怒ってるんだ?この頃、会うといつも怒ってるだろ?」 「怒ってなんかないわよ。あたしがガウリイに怒る筋合いはないでしょう?」 「・・・・お前、本気で言ってるのか?」 「当たり前じゃない。ガウリイが何をしようとあたしには関係ないでしょう?」 あたしは、ガウリイが何をしても口を出す事は出来ないって思ってる。なら、あたしの事をほっといてくれればいいのに。 「関係なくはない!!オレはお前を大切に思ってる!!」 あたしが、小学生の時にガウリイに彼女がいる事を知った。それから、とっかえひっかえ彼女を変えるガウリイを見てきた。色んな女の人と腕を組んで歩く。多分、それ以上の事もやってるんだろう。考えたくはないけど。 「お前は違うのか?オレの事を関係ないって言い切れる間なのか?」 あたしは、悲しかった。 「あたしは、ガウリイが何言ってるのか理解出来ない。」 「!!!!」 突然、ガウリイがあたしを乱暴に抱きしめ、噛み付くようにキスをして来た。 最初は押し付けるように、一旦唇を離し、呆然とするあたしを見て、今度は深く口付けをして来る。 「・・っ・・ぅ」 泣きそうだ。息が苦しい。 やっと、解放された唇からは透明な糸がガウリイと繋がっている。ひどくいやらしい。 「オレは、お前が好きなんだよ。」 そう、言ってまた深く口付けを交わす。 嫌だ。 あたしは顔を背けようとするけど、ガウリイの手でしっかり固定されてしまい動けない。 「リナ・・」 あたしは、何も言えずにただ、ガウリイの顔を見るだけだった。あたしはどんな眼でガウリイを見てるんだろう?嫌悪?歓喜? 「リナ!!」 ガウリイは、あたしを押し倒し、上にのしかかってくる。・・重い。 「リナ・・・好きだ・・」 嫌だ・・。悲しい・・。ガウリイ・・助けて・・・ 「リナ、オレ本気だからな。」 事が終わった後、呆然とシーツに身をゆだねるあたしの髪の毛を撫でて言う。 あたしは、昔、ガウリイに髪の毛を撫でられるのが好きだった。 髪の毛を撫でられる時だけが、ガウリイとすごく近くにいれる気がしてた。 触らないで欲しい。撫でないで欲しい。あたしの中で、髪の毛を撫でていいのは1人だけだから。 「リナ・・・好きだ。」 ガウリイは、あたしを抱きしめキスをして帰っていった。 あたしは、呆然として身体を動かすのも億劫だった。 身体を動かすと、下半身がズキズキする。・・・痛い。 何も考えたくない。あたしが好きだった人はもういない。 あたしは、本格的に風邪をひいた。 「リナー!お見舞い来たわよー!具合どう?」 アメリアは、昨日、言った通りお見舞いに来てくれた。かわいい奴である。 「うん。昨日は苦しかったけど、今は結構調子いいわ。ところで、アメリア1人?ゼルは?」 「来れないんだって。大学、忙しいみたい。」 ゼルは見た目と違い、律儀なうえ、アメリアのお誘いなので、絶対来ると思ってた。 「ふーん。忙しいくせにアメリアとはデートしてあたしのお見舞いには来れないのねー。いやーねー。」 「何?すねてんの?仕方ないじゃなーい。わたしが、約束を取り付けるために、どれほど苦労したことか!!!リナも知ってるでしょう?」 そうだ。アメリアはなかなかデートしてくれないゼルに業をにやして、かなり強引な手も使ってゼルが絶対土曜日にデートするように仕向けたのだ。例え、権力を使ったとしても、多少脅迫めいたことをしても、恋する乙女には許されるのである。正義の名のもとに。 「じょ〜だんよ〜。アメリアがお見舞いに必須のケーキを買ってきてくれたんだもん。よしとするわvv」 「うふふv」 「何よ。気持ち悪いわね?」 あたしは、お見舞いのケーキを早速食べながら言う。体調悪い時って、甘いものダメなはずなのに、ショートケーキはいけるから不思議だわ〜〜。 「き・の・うvガウリイさんと恋人同士になったんだって?」 「・・何・・それ?」 「また、またぁ〜v昨日、ガウリイさん、リナに告白したんだって?そんで、OKしたんでしょう?ゼルがディスさん、ガウリイさんから告白して恋人同士になったって聞いたらしいわよ。」 う〜む。合ってるような違うような・・・ 「よかったわね!わたしも嬉しいわ!リナとガウリイさんって、傍で見ててやきもきさせられたんだから!」 「別に、アメリアがやきもきしなくても・・」 「もぉー!リナ、分かってないわね!ガウリイさんが、涙ぐましいアピールをしてるのにリナったら全く気付かないんだから!」 「?何が?」 「あー!もう!ガウリイさんが、偶然を装って生徒会で遅くなるリナを待つ事は当たり前でしょう。それに、ガウリイさんがリナにあげる物ってリナを守るものなんだって。ずっと一緒にいられないからって。いろいろしてるのよ。」 へー。一連のうざい行動はアピールだったのか。初めて知ったわ。 「それにね、ガウリイさん、リナと一緒にいる時ってすっごく幸せそうよ?リナの事すっごく大事にしてる感じ。ガウリイさんすっごくもてるのに、リナ一筋よね!!」 両手を胸の位置で組んで、ぽわぁ〜と眼を潤ませて力説する。このポーズって人、選ぶんだけど、アメリア・・似合ってるわ。 「何言ってんの?ガウリイ、女とっかえひっかえじゃない。よく、違う女と一緒にいるし。」 「リナこそ、何言ってんの?ガウリイさん、彼女作った事ないらしいじゃない?有名よ?あの容姿だから、絶えず女は寄ってくるらしいけど。告白されてもその場ですぐ断るらしいし。」 「・・何・・それ・・?あたし、知らない・・」 ガウリイ、彼女いないの?もしかして、彼女じゃないけど、深読みOKのガールフレンドって事? 「う〜ん。リナが知らないのも無理ないわ。わたし、ガウリイさんにリナには誤解されたくないから言わないでくれって言われたもの。他の人も、リナとガウリイさんが幼馴染って分かってるから話題にしないし。」 あたしは、初めて聞くガウリイに、驚きを隠せない。せっかくのケーキも食べることを忘れる。 「それに、ガウリイさん、意外と女に冷たいわよ。ゼルガディスさんに聞いたんだけどね。前に大学でガウリイさんの彼女面した人がいたんだって。彼女は、ガウリイさんと付き合ってるって、周囲に自慢してたらしく、周りは、ついにガウリイさんにも彼女が出来たかって思っていたらしいの。」 「うん・・」 「そんな時、たまたまガウリイさんと彼女が一緒に出席した飲み会があって、周りの人が真相を聞こうとふたりにつめよったらしいのよ。で、何って言ったと思う?」 「何って言ったの?」 「ん、もう。ちょっとは考えてよ。・・んっと、でね、彼女は“えー、付き合ってるっていうかぁ〜。やだぁ〜”とか言って、言葉を濁しながら照れてる風を装ったんだって。当たり前よね。本当は付き合ってないんだもの。本人の前で肯定は出来ないでしょう?周りは彼女が照れてるんだから、当然ガウリイさんが肯定するものだと思ったらしいのよ。」 「うん・・」 「そしたら、ガウリイさんが “名前も知らない奴と付き合うわけないだろ。話し掛けられて返事をしただけなのに、迷惑だ。”って言ったらしいの。周りはシーンとなっちゃって、彼女は怒りか恥かしさかで真っ赤になっちゃったらしいわよ。彼女としては、公言しちゃえば、なしくずし的に付き合えるっていう思惑があったみたい。」 「へー・・」 「ガウリイさんの言い方もきつかったから、そんな言い方しなくてもとは言われたらしいけど、結局、嘘をついていた彼女が悪いわけだし、自慢しまくってたみたいだから、反感買ってて、周りもおかしいと思ったのよねーって反応になったみたい。」 「・・・へぇ・・」 そんな事あったんだ・・。でも、あれ? 「女に冷たいって・・。あたし、ガウリイが腕組んでんの見た事いっぱいあるわよ。一緒に歩いているのも。」 見るたびに違う女だったし。 「それって、ちゃんとふたりの表情まで見た?ガウリイさん嫌がってなかった?女から引っ付いてくる事ってよくあるらしいわよ。」 「そんな、ちゃんと見るもんでもないし・・。」 ・・・に、しても。 「何?リナ?じっとわたし見ちゃって。もう、ケーキはないわよ。」 「・・・アメリア、やけにガウリイを庇うじゃない?」 おかしいわ。今まで、黙ってたことをベラベラ話すなんて裏があるとしか思えない。 「あのねぇ・・・。この際だから言っちゃうけど、わたしもゼルガディスさんも苦労してるのよ!!!」 「はぁ?」 何でいきなり、アメリアとゼルの苦労??? 「ほらっ!分かってない!!」 「えっ・・何?」 「リナ、高校入ってガウリイさんにそっけなくなったでしょう?」 「えーと・・そうかな?」 ・・そうかも。高校部入って、大学部と近くなって姿を見かける機会も増えて、幻滅したから・・。 「リナが冷たい・・理由が分からない・・って、ゼルガディスさんに泣きつくわ、愚痴るわ、あげくに、お前らはいいよなーってひがむのよ!!その上、わたしに原因を探ってくれとか、男を近づけないでくれとか言うし。わたしから見たら、絶対にガウリイさんの素行が誤解されてるって丸分かりなのによ!!!」 「あ・・アメリア?なら、そう言えばよかったんじゃない?」 「言わない事が誤解されるもとなんですよっ!!って、何回も言おうとは思ったわ。だけど、私たちは、散々迷惑をかけられたんだから、ガウリイさんも苦しんで貰おうというコンセプトの元に言わなかったのよ!!」 「もしかして、ゼルも?」 「そうよ。」 ・・・・何も言えない・・・ でも、何か、思ってたのと違うなぁ・・うーん・・ 「と言うわけで、誤解も解けた事だし。あー肩の荷が下りたわ〜〜。でも、リナ。誤解してるのによくOKしたわね?・・やっぱり愛?」 「愛じゃないわい!・・・うーんとね、OKはしてないわ。告白はされたような感じだけど。」 「え―っでも、恋人同士になったっ・・て・・って、もしかして・・」 「うわーっ!わぁあああ〜〜!」 「リナ・・・。その反応、正直過ぎ・・・」 うっ・・あたしのバカ・・ 「ガウリイさんもついに抑えが効かなくなっちゃったのね・・。しみじみ。」 「ううううっ・・」 「まっ、結ばれたって事は好きってことなんでしょう?じゃあ、誤解も解けたし、万事OKじゃない?」 「うーん・・。そうなのかなぁ・・。」 「・・・・リナ、本当にやっちゃたのね。結ばれたって所で否定しないし。キスかえっちかどっちか分からなかったからカマかけたんだけど・・。展開早いわ・・。」 げしっ!! 「アメリア〜〜!!!」 ううっ・・・まだ、ズキズキする・・ でも、昨日感じてたような悲しさは消えた気がする。ずーっと身体の奥で感じていたぎゅっと渦巻くような苦しいようなしこりのようなものがなくなった気がする。 不思議。 「うふふ〜。」 アメリアが不敵に笑う。あたしの蹴りをくらって転がったはずなのに、復活早いわね。さすが、超合金娘。 「何、笑ってんのよ?」 うー。何か、分かんないけど恥かしい。照れくさい。 「嬉しいんでしょう?」 「ええぇぇっ?」 「両想いになれたんだもんね。おめでと。」 「ううう〜〜〜///」 「本当は細部に渡って詳しく聞きたいんだけど、ガウリイさんが来るって言ってたから、帰るわ。無理しないでね。お大事にv」 「あっ、うん。またね。」 アメリアが帰ってった後に、気付いた。無理しないでねって・・・う――/// 「・・リナ・・起きてるか?」 アメリアとほとんど入れ違いにガウリイが来る。 久しぶりにガウリイを見た気がする。話した気がする。 懐かしい・・。 「・・・ガウリイ、アメリアから聞いたよ。何で言ってくれなかったの?」 「えっ?アメリア言っちまったのか?言わないでくれっていったのに・・・。」 「あたし、ガウリイが違う人になったみたいで嫌だった。どんどん嫌いになってた。 アメリアから聞かなかったら、ずっと誤解したままだったよ?」 「リナ・・・オレのこと嫌いだった・・の・か?嫌いなのに抱かれたのか・・・?」 「女ったらしのガウリイは嫌い。昔の優しいガウリイは好き。ガウリイの口から聞きたい。ガウリイはどっちなの・・・?」 「・・・オレは、多分どっちでもない。リナに対してだけは、たらしにも優しくもなれる。」 「あたしに対してだけなの・・?」 「リナじゃなきゃ嫌だ。」 ガウリイはあたしを抱きしめて髪の毛を撫でる。 ・・・・気持ちいい。 「・・昨日まではね、嫌だった。ガウリイと居ると悲しくて堪らなかった。ガウリイは、あたしの事を子どもだと思ってるんだって。だから、優しくするんだって。嬉しいけど悲しかった。嫌だった。女に見て貰いたいけど、女になったら他にいるガウリイの彼女の1人になっちゃうんだって思うと悲しくて堪らなかった・・・。」 「リナ・・」 「あたしは、ガウリイの1人だけになりたい。そうじゃなかったら、いらない・・・」 「オレには、ずっとリナ1人だけだ。今までもこれからも。」 「うそ。ガウリイ、彼女いたんじゃないの?今までは無理だよ・・」 「嘘じゃないぞ。オレ、お前が初めてだから。」 「・・ぇえ?・・っえええ?ええええ!!!」 「そんな、盛大に驚かなくてもなぁ〜。誰とも付き合ったことないんだから、当然だろう?」 「うそっ・・うそ!うそだよ!!だって、ガウリイ、彼女いたじゃん?あたし、ガウリイの家の前とか道端とかで、女の人と一緒だったり腕組んでたりしてんの見たもん!!」 「〜〜あれはなぁ、不可抗力なんだ。今はそうでもないけど、中学とか高校はなぜか、思い込みが強いストーカーっぽい奴に好かれたんだよ。女って、男がやったら批判されることでも許されるんだよな。それで、無視するとひどいっていうんだ。ほんと、嫌だった・・」 思い出したくもないんだろうか。顔をしかめてむっとする。 うーん。そうかも。それぐらいの年の子って、自分に酔うっていうか、相手の事を考えずに突っ走るからなぁ。(例、アメリア)それが、許せるかはその子次第なんだけど。 「じゃあ、ホントなの・・?その・・彼女いなかったの?」 「疑り深いなぁ〜。ん〜〜言うのヤなんだけど、昨日リナとした時も耐え切れなくて感情にまかせちまったしな。もっと、優しく抱いてやりたかったんだけどな。」 あれって、襲われたみたいなもんだと思うんだけど・・・・ 「だいたいなぁ〜リナがいるのに、他のやつなんかに惹かれるかよ。」 ガウリイはそう言って、あたしに優しくキスをする。触れるだけのキス。 そういえば、昨日、ファーストキスとバージンを失ったんだなぁ。 でも・・・その相手が、ガウリイであったのが嬉しい。 ガウリイが変わってなかったのが嬉しい。初めてをあたしと一緒に経験してくれたのが、嬉しい。 「嬉しい。」 そう思っちゃうあたしって、わがままかな? 「リナの笑った顔久しぶりに見た気がする。」 「あたしも、ガウリイの顔久しぶりに見た気がするわ。」 あたしは、ちょっと不思議な顔をするガウリイに微笑んで胸に顔を埋める。 あたたかい。 泣きそうになる。昨日とは違う感情。 あたしが昔好きだった人は、幼馴染から恋人になった。 ーおわりー |