分 岐 点















光の剣をなくして、リナと新しい魔力剣を探す旅をしていた。
そして、ブラストソードを見つけた。
これで、リナを守ることができる。
そんなことを言ったら、リナは、
『あたしは人に守られるほど弱くない!』
とかいって怒るんだろうけどな。
俺だってリナが弱くないってことはわかってるけどさ。
好きな女を守りたいって思うのは男として当然だろ?

いつのまにか、お前は子供じゃなくなってたんだな。
釣り竿のおっさんに言われたことを信じてみたくなって、少しばかりおせっかいしてみた。盗賊ごときに遅れをとるようなやつではないってのはわかってたんだがな。
盗賊を片付けて、初めて向き合って、驚いた。
あのおっさんは一体いくつなんだ!?ってな。
気配というか、リナの言う野生の勘で、こいつがあのおっさんのいってた娘だってことはわかったからな。
これも何かの縁だろうと、しばらくこいつのことを見ていようと思った。
あのおっさんが手塩をかけて育てたっていうこの娘を。
正直、俺はリナのことを『おせっかいな釣り竿のおっさんの子供』
としかみていなかったよ。あの言葉を聞くまでは。
『たとえ勝てる確率が1パーセントほどだとしても、そーいう姿勢で戦えば、
その1パーセントもゼロになるわ。あたしは絶対死にたくない。だから、戦うときは必ず、勝つつもりで戦うのよ!』
言葉自体はわりとありふれたものだろう。
あのおっさんがいいそうなことだ。
しかし、リナはこの重みを理解していることが、瞳をみてわかった。
死線をくぐり抜けてきたからこそ、相手との圧倒的な力の差を身に染
みてわかったはずなんだ。だからこそ俺もあのゼルガディス
さえもあきらめかけていた。それでもリナは勝つと言った。
リナの瞳は、生の輝きで溢れていたわけではなかった。
恐怖、不安…そんな負の感情も読み取れた。
それは、怖い者知らずな子どもの目じゃなく、歴戦の魔道士の眼だった。
何ごとにも逃げずに戦って、乗り越えてきた者の眼だ。
やっと俺は『リナ』を認識したよ。
リナを見続けたいと思ったんだ。
このときは尊敬してるだけだと思ったんだがなぁ…。
コピーレゾとの戦いでリナが大怪我して、初めて気付いたよ。
リナへの想いに。
けど、リナにはまだ重いだろうと思ってたんだよ。
いくら歴戦の魔道士でも子どもは子どもだからな。

ブラストソードを見つけたあと、旅をする理由がなくなって、もしかしたらリナに別れを告げられるかもしれない。審判を待つのが耐えきれなくなって自分から切り出した。
内心、ドキドキしながら平然と聞くと、リナは困った顔をした。
正直座り込みそうになったよ。リナが別れるということを考
えていなかったことに心底ほっとした。
お互い、別れたくないと思っているのなら理由なんかいらないよな。
それをリナに伝えた瞬間。
ほんの一瞬、リナが艶やかに微笑んだ。
それは子どもなんかじゃない。立派に一人の女の笑みだった。
もう、伝えても大丈夫だと思った。

女神が舞い降りた。
風でリナの柔らかな髮が踊る。
俺は眩しくて目を細めた。
俺は数メートル前にいるリナを見上げて、言葉を待った。
「ガウリイっ!」
逆光のせいで表情はよく見えないはずなのに、ほんの少し顔を赤らめている様
がよく視えた。
「あたしは、あんたを、ガウリイ=ガブリエフを愛してるわっ!!」
…やられた。
リナは1度後ろを振り返り、二手に別れた道をみた。
そして右の道の前に立ち、再び俺と向き合った。
「ガウリイ、もしあんたがあたしのことをただの被保護者
としかみていないのなら、
このまま左に行きなさい。あたしはもう保護者はいらないわ。」
俺はだまって次の言葉を待った。
「けど、もしあたしのことを1人の女としてみてくれているのなら、右の道を選んで。」
左の道は、整えられた街道。きっとのどかな旅ができるだろう。
一方右は、険しい山道に続く獣道。
俺はゆっくりと一歩を踏み出した。
リナは俺に背を向けた。
…まったくリナらしいな。
リナはまっすぐ前を見つめていた。
後ろには興味はない。というように。
けど、俺が気付いていないとでも思ってるのか?
握りしめられた手がかすかにふるえていることに。
俺がこのまま左に行けば、お前はどうするんだ?
きっと、しかたないか。と小さく笑って、独りでこの山に挑むんだろうな。
お前の抱えるたくさんのものを、その小さな背中に背負って。

ったく、俺が言おうと思った矢先にこれだもんな。
お前にはかなわないよ。

「そんなの考えるまでもないだろ?」
そっと、その小さな背中を包み込んだ。
1人で背負わなくてもいいんだ。
リナ、お前の背中は俺が守るから。だから。
「リナの行く道は俺の道だよ」
「……。」
照れてるのか?
反応のないリナの顔をのぞみ込もうと手を緩めた瞬間、リナが飛び出し、
そのまま走り出す。
振り返り、そしてとびっきりの笑顔で言った。
「行くわよ!ガウリイっ!!」
リナ=インバース。
お前には一生振り回されるんだろうな。
俺はその顔をみながら思った。
この顔をいつまでも見ていられるのなら、安いものか。
置いていかれないよう、俺はリナを追い掛け走り出した。

いつか、あのおっさんにも挨拶にいかなきゃな。





終わり。