トラウマ |
<7> リナとのデート♪ と喜びつつ俺も一端自分の家に戻り着替えを済ませる。 玄関の鍵を閉めたところで振り向くと既に着替え終わったリナが待っていた。 「遅い!」 「悪い。で?何食べたい?」 ぷんぷんと頬を膨らます姿がなんともいえず可愛い。 笑って訪ねるとぷいっとそっぽを向いて歩き出すリナ。 「リナ?」 「”トレジャーハンター”のホットサンドとケーキセット。」 「ん?」 「美味しいの。おごって。」 ずんずん歩くリナの後ろから付いていく。 栗色の髪が揺れて、甘い匂いが流れる。 「わかった。」 「3人前だからね。」 「・・・わかった。」 「ケーキは5人前だから、ヨロシクv」 「・・・わっ、わかった・・・」 少し焦りつつ頷くとリナの機嫌はすっかり良くなっていた。 駅まで5分の道のりを歩きながら他愛もない会話をする。 昨日まではリナは俺とまともに会話さえしてくれなかったというのに・・・ まぁ、それも俺の過去の過ち、つーか悪戯?の所為なのだけれど。 それよりも・・・今から行く喫茶店『トレジャーハンター』って何処かで聞いたような? 「なぁ、リナ?」 「何?」 「その喫茶店ってさチェーン店だったけ?」 「はぁ?」 俺が聞き覚えがあるといったら、全国何処でもあるようなチェーン店か相当美味かった店くらいだ。 しかし、何かが美味しかったという記憶はないから・・・ 「チェーン店なんかじゃないわよ。知り合いのおとうさんが経営してる店。」 「知り合い?」 「そうよ。前にちょっとね。」 「男か?」 「ん?女の人だけど?」 「そうか。」 キョトンと俺を見るリナ。 どうやら、何を聞きたかったのかは理解していないらしい。 これは、俺の気持ちを気づかせるなんて至難の業かもしれない・・・。 といっても、俺自身気が付いたばかりなのだが。 「じゃぁ・・・何処で聞いたんだったっけか・・・?」 う〜んと唸っていると、ぽんっ!とリナが手を打つ。 そして、 「もしかして、ルークって奴に聞いたんじゃないの?あんたと同じ大学でしょ?」 「ルーク?なんでリナがあいつのこと知ってるんだ?」 「ミリーナに・・・あぁ、そこの店の人なんだけど。彼女に聞いたのよ。しつこく付きまとうお客さんがいるって。」 「あぁ・・・」 「彼女がお店手伝ってるとやって来て、『愛してるー』だとか『らぶらぶだーぁっ!』とか叫ぶんだって。」 間違いなくルークだと確信した。 最近大学の方でも惚気話を聞かされる。 聞いている分にはどうやら奴の片思いらしいのだが・・・本人はらぶらぶだと思いこんでいるフシがある。 「まぁ、ミリーナ自身口で言うほど嫌がってないみたいだけどね。」 「ふ〜ん。」 そんなこんなで、駅に着き電車で2駅ほど行った先にお目当ての店はあった。 落ち着いた雰囲気の、一見アンティークショップの様な喫茶店。 にこにこ顔のリナが店内を覗き、お目当ての人物を見つけたのか軽く手を振る。 カウンターの中にいた銀髪の女性もリナに気づき微笑み帰す。 あれがルークの言っていたミリーナか。 そう思いつつ、リナに続いて店内に入った。 カララン♪ ドアベルが涼しげな澄んだ音をたて、すこし分厚めのドアが微かに軋む。 「いらしゃい。リナさん」 「やっほー♪おはようミリーナ。」 「おはようございます。」 カウンター前の席に腰掛け楽しそうに喋り出すリナ。 俺もリナの隣りに腰掛けた。 「こちらは?リナさんの彼ですか?」 お冷やを出しながらミリーナが俺を見る。 知的で落ち着いた物腰。 ルークとは対照的な人物だと重う反面、奴に似ているような気もした。 「あぁ、コレね。」 「おまえなぁ・・・コレはないだろぉ?」 「うっさい!コレで十分!!」 「もしかして・・・こちらがガウリイさんですか?」 「へ?」 「そうよ。コレがガウリイ。」 くすくす笑うミリーナ。 彼女に「彼氏か?」と聞かれ恥ずかしくなったのか、今朝のことを思いだしたのかリナの機嫌がいささか悪くなる。 ここは機嫌をとらねば・・・ 「ほらリナ注文しないのか?」 「する。」 「いつものですか?」 「うん。5人前ね。」 「はい。」 「あ、食後にケーキセット7人前もね♪」 「はい。」 「・・・・」 「もんくある?」 「いえ無いです。でも増えてないか?」 「気のせいよ。」 「そ、そうか?」 準備を始めたミリーナの作業を何とも無しに見ながらリナを探るようにちらりと盗み見る。 美味しそうな香りが漂うにつれ次第に機嫌が良くなってきているようだった。 「ガウリイさんは、何にいたしますか?」 俺を見つめミリーナ。 「ホット」 「かしこまりました。」 そういえば・・・と彼女に声を掛けようとしたところで店のドアが勢い良く開きドアベルが鳴り響いた。 「ミリーナぁ♪」 to be continued ... |