トラウマ |
<1> 「がうり、嫌い!!」 「あぁ、俺もリナなんて嫌いだね!!」 見る見る間に、目の前の少女の目に涙が溜まるのがわかった。 真っ赤な目を更に赤くさせて・・・ 「うっ、うわぁ・・・わぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」 泣き出した。 わんわん泣いて自分の家へと帰っていく。 俺は今日もリナを泣かした。 隣の家に住むリナ。 俺とは6歳も年が違う。 別に本当にリナが嫌いなわけではない。 小さくて、可愛くて、本当は大切にしたいのだけど・・・何故か虐めてしまうのだ。 リナがナメクジが嫌いなのを知っていて何度も近づけて、泣きそうな顔を見ては笑った。 ちょっと、やりすぎたと思ったときには、もう手遅れで・・・ 素直に謝るコトが出来ない俺は、売り言葉に買い言葉で、リナを傷つけてしまった。 それが、良くないことだと解っていたが・・・気が付くと俺はリナを虐めて楽しんでいた。 そのくせ、リナが他のヤツらに虐められているのは許せなかったなんて・・・ ホント、馬鹿な子供だったよな? あれから、10年―――― 「いってきまぁ〜す!」 リナは高校生になっていた。 「よ!リナ。」 「・・・・・・おはよ」 小さな声で、それだけ言うと逃げるようにリナは走っていってしまった。 俺は10年の間に完全にリナに嫌われていた。 「相変わらずね、ガウリイ。」 クスクスと笑いながら声をかけたのは、リナの姉でルナ。 俺が昔からリナをからかって遊んでいると、それ以上にえぐいことをしてリナを鍛えていたやつだった。 「まぁな〜」 ぽりぽり頭をかきながら俺が言うと 「昔から、ガウリイはリナをからかって遊んでいたから・・・あの子、貴方が未だに苦手なのよ。トラウマが出来ちゃったのね。」 クスクス 「笑い事じゃないと思うんだが?」 「元はと言えば、ガウリイの所為でしょう?」 「まぁ・・・俺もガキだったし・・・」 「好きな子ほど虐めたい、ってやつね。」 「はぁ?」 「あら、自覚無し・・・ま、ソレも良いんじゃない?」 「・・・・・・?」 ルナは笑いながら車に乗ろうとして、ふと思い出したように俺を見る。 「あ、そうそう、私今日から3日間、大学の研究所に泊まり込むのよ。」 「それで?」 「その間、リナ家に一人きりだから、よろしくね〜」 「なんで、俺が?」 「最近何かと物騒でしょ?泥棒とか、変質者とか・・・いろいろ」 「男と二人の方が危なくないか?」 「あら、ガウリイなら良いんじゃない?」 「・・・・・・おまえなぁ。」 「ま、とにかく頼んだわよ。」 「あ、おいルナ!」 叫んだが車はもう発進してしまった。 どんどん遠くなる車・・・しかしいきなり急ブレーキをふむと、勢い良くバックしてきた。 「言い忘れたけど、あたしのお願い・・・まさか”すっぽかす”なんてコトしないわよねぇ?」 その笑顔の前で、俺は頷くしかなかった。 to be continued ... |