ファミリー
― プロポーズの行方 ―








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「がうり・・・あえ、買って」
 愛娘ウナが露天を指差す。
「ウナがパパって呼んでくれたら、なんだって買ってやるぞー?」
 俺は見を屈めてウナの顔を見る。ウナは困った顔をした。
「ぱ・・・」
 言いかけたウナをリナがとめた。
「ウナ、ガウリイはガウリイでしょ?」
 と、露天で何かを買って来るリナ。
「リナぁぁぁ」

 頼むからいい加減認めてくれよぉぉぉ〜・・お前、母親なんだぞぉ?
 

「何?」
 むすっと俺を見上げる。
「ウナは誰が生んだんだ?」
 リナに買ってもらったわたあめを手に、上機嫌で飛び跳ねる姿を横目に
俺は心なしか小声になる。
「あたし」
「相手は?」
「あんた」
「じゃあ、ウナのパパは?」
「居ない」
 リナはきっぱり、そう言いきった。
「居ないって・・・お前なー・・それ、母親のセリフかぁ?」
 呆れた。
「あら、ママも居ないわよ?あの子には・・・」
「・・・・・・」


 はぁーーーーっ



 何がいけなかったんだろーな。
 俺とリナが知り合ってかれこれ、7年が過ぎようとしている。
 俺はずっと保護者としてリナを護ってきた。
 そのリナを酒の勢いで抱いて、初めて惚れているのに気付いた。

 俺はさ・・・ちゃんとプロポーズしたぞ。


 ――― 一生、傍に居てください!結婚しよう! ―――



 タイミングが悪かったのかもしれない。
 それを言った時、既に彼女の腹ン中にはウナが居た。


「それ、妊娠させた責任?」
 リナはあっけらかんと言ってのける。
「違う!」
「ふーん・・・で、なんのメリットがあんの?あんたと結婚して」


 あのリナのセリフに一瞬、詰まってしまったのもいけなかったのかもしれない。


「リナとその子を護ってやる」
「護る?保護するってこと?じゃあ、このままじゃない?」
 リナは顔色一つ変えず、続ける。

「あんたはあたしの保護者で、あたしとこの子を護りたい」
 そのリナのセリフに頷いたのがいけなかったのか・・・?



 その後、リナは言ったんだ。



――― 今までと一緒じゃない ―――と・・・


 不覚にも俺はその時、

「あっ・・・なるほど」と・・・納得してしまった。
 それ以来、俺たちの関係は形容し難いものとなってしまったのである。


 
 


 続いたりする。