風の向こうに




















 星空が空一面に広がる頃。
 ゼルガディスとアメリアはずっと町の門の所で待っていた。

「あ!ゼルガディスさんあそこに!!」

 遠くから近づいて来る一頭の馬。その背に乗っている二つの人影。
「リナさん!ゼルガディスさん、リナさんがいます!」
「だから言っただろう。ガウリイなら間に合うと」
「はい!」
 駆けだしたアメリアを、ゼルガディスは穏やかな眼差しで見送った。
 ガウリイに馬から下ろしてもらったリナは、ちょっと気恥ずかしそうにアメリアを見た。
「………戻って来ちゃった」
「お帰りなさい……お帰りなさい、リナさん」
 そのままリナに抱きつくアメリア。一瞬戸惑った後、リナはそっとアメリアを抱きしめた。

 大切な者は、ここにもいる。
 新しい、生きる世界に。

「遅かったな」
「ま、な」
 お互いにやりと笑い、ゼルガディスは親友の肩を叩いた。
 ……しばらくは惚気話を聞かされそうだが、大事な婚約者の為にもそれは我慢するしかないのだろう。
 嬉しそうなアメリアに、ゼルガディスも笑っていた。

「これからも、お友達でいてくださいね。リナさん」
「あたしこそ……よろしくね?こっちのこと、良く分からないし……」
「任せてください!ね、ガウリイさん」
「あぁ」

 微笑み、リナに手を差し伸べる。

「帰ろう、リナ。俺達の家に」
「……うん」

 ほんのりと顔を赤らめ、リナはその手を取った。






「ね、ガウリイ」
「ん?」
「いなくなったり、しないでね」
 じっと見上げるリナに、ガウリイは頷いた。
「あぁ。
 ずっと一緒にいる。約束だ」
「うん」
「リナこそ、風に乗ってどこかに行ったりするなよ?」
「行くわけないわ。だって……」
 くすりと笑う。

「あたしの居場所は、ここしかないもの」
「俺の居場所も、リナの隣だ」
「そーよ。だってこのあたしが選んだんですからねっ。他のとこに行ったりしたら、
ぜえっったい許してやんないんだから」
 そう言いながらもリナは笑っていた。
 ガウリイはそんなリナの頭をくしゃくしゃと撫でた。








 明かりのついていない家。その前で、ふとリナは足を止めた。
「どうしたんだ?」
「……なんか、懐かしくって」

 二度と戻ることはないと、思っていた場所。そこに当たり前のようにガウリイと二人戻って来た。

「お帰り、リナ」
「…………ただいま、ガウリイ」








 《終》