成 長 曲 線
ガウリイばーじょん



















「似てないけど、兄妹なのかい?」
リナと旅するようになって、宿屋や依頼人からこう聞かれることが多い。オレが自称
保護者を名乗ってるので、兄妹という関係はある意味間違いじゃない気がする。それ
に、リナみたいな妹がいたら可愛いだろうなぁとは思う。ちょっと気が強いけど。殺
伐とした傭兵稼業を少し休んで、気分転換にリナの旅に付き合うのもいいだろう。リ
ナみたいなちっこい嬢ちゃんが一人で旅するのは大変だろうし、女じゃないから一緒
にいても楽だしな。いつかは別れるんだろうけど、それまでは暇つぶしに一緒に旅し
てやるよ。


「おふたりさんは、どういった関係なんだい?」
リナと旅するようになって1年ぐらいたったころから、兄妹とは言われなくなってき
た。
オレがこいつの保護者だと言うと、怪訝な顔をするようになって来た。
リナは出会った頃から結構変わった。見た目がちゃんと女らしくなって来ている。
やってる事や考え方はそんなに変わってないから、見てて危なっかしい事が多い。出
会った頃から黙っていれば可愛い顔をしていたし、ぶりっこしてもちっこくて可愛い
少女がおねだりしている感じで何でも聞いてやる馬鹿なオヤジの気持ちもわからんで
もなかった。だが、今は同じ事をすると、半分くらいのオヤジから下心が見えてしま
う。その事をリナ本人が全く自覚しないもんだから、危なっかしくて仕方がない。
子を持つ親とか、妹を持つ兄とかはこんな気分なのかねー。


「・・恋人かい?」
リナと旅するようになって2年ぐらいたったころから、恋人と間違えられるように
なってきた。最初に言われた時は、オレとリナが?と思ったが、なるほど、ちゃんと
女になっている。まだ、ガキくさい部分もあるけどそこがそそられるといえば、そう
かも知れない。1回リナを女として認めてしまうと、結構気まずい・・。リナよりオ
レの方が気配を隠すのがうまいから、気付かれてはいないと思う。
別に女になっても、リナはリナだ。何も変わる事はない。だが、周りがうるさい。リ
ナを一人にするとナンパが拠って来る。そのナンパがあからさまにリナを一人前の淑
女扱いをする。オレがしたくても出来ない事を軽々とやってのける。今更、リナを女
扱い出来るか!そのくせ、オレがナンパされるとむくれるリナを見て優越感に浸って
しまう。
周りもうるさいが、一番の問題はオレが矛盾している事なんだよな。多分、オレはリ
ナを女として扱いたい。だけど、リナを女じゃなくて保護者として守りたい。ただの
男女の関係に落ちたくないんだ。いや、それも違うな。本当はリナとしたいし、オレ
だけを考えさせて閉じ込めたい。ただ、こんな暗い欲望を持っているオレをリナに知
られたくないんだな。・・もしかしたら、それも違うな。オレの欲望を知って貰いた
いんだ。そしてリナに受け入れて貰いたい、オレと共有して欲しい・・。


「ガウリイ!何であたしと一緒に旅をするの?」
とある町のとある宿屋で、オレの部屋の扉を開けて開口一番言うリナ。鍵をかけな
かったオレも悪いけど、男の部屋に平気で入ってくるのは無用心だぞ。
「というわけで、気になって眠れないってほどじゃないけど、指に出来たささくれ程
度には気になるから答えてよね!」
マントとショルダーガード外すと、リナって華奢だよなー。ほそっこいし、でも、胸
有るんだよな。意外と。わかりづらいけど。
「何が、というわけでかはわからんが、オレがリナと旅する理由だろ?」
「そうよ。さっさか答えて。」
「理由はいらない・・という返事じゃ納得しないんだろーなー」
「まぁね。保護者という答えもダメよ。」
オレはくせであごに手を当てて考える。答えは出てるんだよな。それをリナが受け入
れるかどうかなだけで。旅する理由か・・そんな事を気にするって事は少しはオレを
気にはしてくれてるんだな。リナも18歳だし、早くはないな。無防備にオレのとこ
ろに来たお前が悪いんだからな。つらい想いさせちまうかもしれないが、オレもヤバ
イし、後悔はさせないからな。なるべく。
「う〜ん。そうだな。リナこっち来てみろ。」
「何?ここでも聞こえるから言ってよ。」
「こっちに来てくんないと、わからないぞ。」
オレは手招きしながら、座っているベッドの前にリナを来させる。トコトコと歩いて
来るリナ。ん〜、無垢なうさぎを食べる狼の気分・・。

ちゅ。

軽く肩を抱いて、触れるか触れないかぐらいのキス。最初は、な。
「・・・ガウリイ、今、何かした?」
「お前、鈍いからなぁ。今のでわかっただろ?それがオレの答え。」
「・・・って、えー!!!ガウリイ、あたしの事が好きなのー?何でー?どうしてー
?」
「うーん。オレも趣味悪いとは思うんだけど、いや、悪い!オレが悪かったので呪文
を唱えるのは止めろ。な?」
・・何か、言い方悪かったかな。オレがタチが悪いって意味なんだけどな。リナに誤
解させちまったかな。ま、いいかっ。これからわからせてやるし。
「おい、何か顔が怖いぞ・・。でな、いつからかは覚えちゃいないが、お前のそばで
一緒に居て守ってやりたいと思ったんだよな。」
「で、オレはお前に告白というものをしたんだが、リナの返事を聞きたいんだが。」
「へっ?返事?」
「そう、お前さんは何でオレと一緒に旅をするのか?お前から聞いたんだから当然オ
レの質問にも答えるんだろうな?」
「・・うっ」
「・・わかんない・・じゃダメ?」
「だめ」
いつになく強気なオレ。ここで引くとツライからな。いろいろと。
「・・じゃ、キライじゃない・・じゃダメ?だって!本当にわかんないのよ。嫌いな
奴とはこんなに長いこと一緒にいないだろうし、だからといって好きかと言えば好き
なんだけど、美少女のあたしといえど、男女交際というものをしたことがないので、
そういう方面の好きという種類がわかんないの!!わかった!?」
・・・驚いた。こいつが、リナが、好きって言葉を使ったことに。切れ気味なのが幸
いして本音が出たんだろう。いいとこ、キライじゃないくらいは聞けるかと期待した
が、好きという言葉が聞けるとは思わなかった。
「わかった。」
「へっ?わかったの?何を?」
「リナがオレの事を好きだという事がわかった。」
「!」
「両思いだって事がわかったんだから、遠慮しなくていいんだよな。」
「・・聞くのは怖いんだけど、聞かないのも怖いので聞くけど。遠慮って・・何?う
ひゃぁ!」
両思いって所で否定しなかったな。リナ。
「こういう事v」
体をよじって逃げようとしたリナを引き寄せて、抱きしめながら軽くキスをした。
「楽しみだなー」
つい、思ったことが言葉で出てしまった。リナがビクッと体を縮めこませる。本人は
意図してやってないみたいなんだけど、本人は未だに呆然って顔してるし。これな
ら、最後までいけるかな。
オレは、リナを抱きしめる手に力を込めた。





−おわりv−









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