I 妹(まい)な関係








<恋愛編>

(1)

つい、最近まで。
『幼馴染み』っていうのは、ずっとそのまま変わらないって思ってた。
でも、片方が男で。
   片方が女だった場合。
変わらない関係って、無いのかも知れないって、知った。

今、私の側にいる『幼馴染み』は。
いつの間にか、私にとって大切な・・・『彼氏』になっていた。



「ガウリィ・・・。」

頬をほんのり紅く染め、リナが静かに瞳を閉じる。
心持ち、顔を上に向かせて。

「リナ。」

くくぅっ!
ついにリナを手に入れる瞬間がやって来たのか!

「大丈夫、優しくするからな・・(多分(笑))」
「・・・馬鹿。」

ゆっくりと、その小さな躯を引き寄せ、顔を近付けていき・・・。

「りぃな〜〜〜〜〜?」
「朝っぱらから変な声だしてんじゃあな〜〜〜〜〜〜〜い!!!」

すぱぱぱぱ〜〜〜〜ん!!

・・・俗に言う、『夢オチ』ってやつかい(涙)。



「ほら、いつまでも拗ねてないで。さっさと御飯食べちゃってよね。」

まったく。
タオルで顔を冷やしながら、ぶつくさ文句言っているガウリィ。
一体どんな夢を見ていた事やら・・・何となく解るトコが怖ひかも(汗)。
『幼馴染み』から『恋人』ってゆ〜関係に昇格してから、ガウリィは遠慮と
いう言葉を忘れたみたいに、その・・・積極的に私に接してくる様になった。
まぁ、私の立場(この4月から3年生になったのだ)とかは一応考えてくれ
てるみたいで、露骨に迫ってくる、って事はないんだけど・・ね。
正直、『身の危険』ってモノを感じる時が多々ある訳で。

それだけ、私の事好きなのかな〜とか感じるのは、嬉しいんだけどさ。

「り〜な〜ちゃん、学校行こう。」

アメリアの元気な声が玄関先から聞こえる。
「それじゃ、ガウリィ。行って来ます。」
「・・・おう。」
あ、まだ拗ねてやんの。
まったく、仕方ないんだから。
・・・ちゅ。
「り、な?」
「後かたずけよろしくね。」

抱き締めようと広げたガウリィの腕をすり抜け、ガウリィに向かってウィンク一つ。
あはは、このスリルが結構クセになるのよね〜。

我ながら、いい性格してると思うわ。


「・・・おい。」
「んあ?」
「いい加減、そのにやけたツラ何とかしてくれないか?俺まで変な目で見られる。」
「いやぁ、済まんな。ちょっと思い出し・・・うははは。」
微かに紅い頬を擦りながら、へらへら笑うガウリィを見て、ゼルガディスは深〜い
ため息を漏らした。
「まったく・・・これが『女たらし』で有名だった男の姿かね。」
「おいおい、誤解を招く様な言い方止めろよな。俺は女を誑し込んだ事なんか、一度
もないぞ?」
・・・自覚が無いってのも、少々問題だと思うのだが。
まぁ、『俺は今、モーレツに幸せだぁああ!!』って宣言している男に、何を言っても
無駄なのは解っているつもりだけどな。

・・・それにしても、だ。
ゼルガディスは、ふと一人ごちた。
こいつ、本当に解ってるのか?
確かに半端な女共は近寄らなくなってきたみたいだが、今だこいつに惚れ込んでいる女
が1人いる事を。
俺の勘としては、絶対このまま順調に進まないと思うんだが、な。

アメリアのお節介なトコが移ったかな?と、苦笑するゼルガディス。
だが、彼の勘が外れていない事が解るのは、もう少し先の事だった。


相も変わらず、波乱含みの関係がスタートしそうな気配だけが、切々と感じられる今日
この頃であった。