人 魚 姫 ――蒼天の龍 碧海の華―― |
第3部《再生編》 〜プロローグ〜 海底神殿 真珠で作られた豪奢な玉座に座するルナの元に、入れ替わり立ち替わり報告の者がやってくる。 ふと見ると、三人の若い人魚達がルナの元にやってきていた。 「そろそろなの?」 「はい。もうすぐここへ到着します」 茶色の髪の少年は、それだけ言うと不機嫌そうな顔をした。 「もう、ルナ様の御前でそんな顔しないでよ。恥ずかしい」 そう呟いて少年をこづいたのは、金色の髪の少女だった。 「そうよ。まったくリナのことになるとすぐムキになって……その調子でケンカふっかけたりしないでよね」 呆れたように言うのは翠の髪を三つ編みにした他の二人より少しだけ年下の少女。 少女達二人から文句を言われ、ますます少年は不機嫌になったようだ。 その様子に、ルナの口元にあるかなしかの笑みが浮かぶ。 「三人とも、入り口であの子を待っていなさい。到着次第二人の用意を」 『はい』 三人が下がった後、ルナは一人目を閉じた。 封印されていた魔物が少しずつではあるが暴れ始めている。もはや猶予はほとんど残されていない。 最後の鍵を握るのはあの二人。 自分に出来ることは、ただ見守ることだけ。 「もう一つあったわね。彼ならきっとあの子を守りきることが出来るだろうから……」 「ルナ様、西の海域で異変が!あそこには…!!」 「“深き者どもの王”か……まずいわね……」 あの場所はそこからさほど離れていない。気がつかれたとは思いたくないが万が一ということもある。 「まだ封印がとかれた訳じゃあないわね?」 「はい。それはまだ大丈夫です。ですがこのままでは」 「時間の問題、というわけね。わかりました。 今動けるのは?」 「海洋警備隊第7隊、及び第15隊。それと碧鱗の王からリザードマン斬込隊と突撃隊が派遣されてきています」 「女王親衛隊も動けるでしょう」 「しかし……それではルナ様の警護をする者がいなくなります」 その言葉にルナの瞳に挑戦的な色が浮かんだ。 「この私が、自分の身一つ守れぬと……?」 「滅相もありません!ですが……」 「私の身の心配なら無用。今一番守らねばならぬ相手を間違えるな。 神殿の警護は万全なのでしょう?ならばそれ以外の全ての者は西の海へ!決して“深き者どもの王”の封印を解かせるな!」 「御意!!」 一斉に外が慌ただしくなる。 「魔族としても、これが最後のチャンスだと知っているはず……」 ルナは傍らに置いてあった剣をとった。 「魔族の思い通りにはさせない!」 暗闇が支配する深海の奥で、ゆっくりと何かが身じろぎした。 「そうです……今こそ目覚める時……」 闇の奥から幾つかの気泡が上っていく。 「全ての水の魔を司る王よ……今こそ失った覇権を取り戻す時……」 呼び声に答えるように、海底から微かな呪詛の声が響いてきた。 「目覚めよ……“深き者どもの王”よ!!」 To be continue... |