宿命の終わるとき












第19話:記憶の底に在ったもの(3)




桜の木の下。
そこで少女は、1人の少年と出会った。




「……知ってる?
 桜の花びらは、本当は真っ白なんだよ」
「でも、ピンク色だよ…?」
少女は、自分より少し背の高い少年に問うた。
すると少年は、舞い落ちる花びらを手で受けとめながら、
「それは、桜の木の下に―――死体が埋まってるからなんだ。
 その血を吸った桜は、花びらが紅く染まってしまう」
「……桜の木の下に埋まってる人達は、苦しくないのか!?」
少女の言葉に、少年は興味深げに目を見開く。
そして、やがて目を細めると、少女と目線を合わせるため、しゃがみこんで口を開い
た。
「……やっぱり君は――純粋で。
 まっすぐなんだね……」



桜が――――――舞う。



「――――――だったら、『賭』をしよう?
 ……そうだなぁ……
 じゃあ、今から10年。
 君も僕も、15歳になってるよね?
 それまでに、また会おう。
 それで君が、15歳になるまでに僕のことを思い出せたら、『賭』は君の勝ち。思
い出せなければ君の負け。
 ―――君が負けたときには―――」


風。

吹き荒れるその叫び声は、しかし少年の声を掻き消すまでには至らなかった。


「―――君のその純粋さが、永遠に僕の……俺のモノになるように」


風が、散って積もった桜を吹き散らす。


桜の花弁に隠されていたのは―――鮮やかな緋色に染まった、青銀髪だった。


「お前が『僕』と、あらためて『初めまして』で出会って……成長と共に、世の汚さ
を知って……でも、それでもお前はきっと純粋なままで」


胸を長剣で一突きにされている。


血の海にひらひらと舞い落ちた桜の花弁が、血を吸って鮮やかな紅に染まる。


「そうしたら、それ以上お前が汚されないように……俺が、お前を、殺す。お前を俺
のモノにするために」


―――カイルが、殺されてる。

誰に?

―――銀髪の、少年に。

それって誰?


「……あ……悪い。
 風のせいで…よく、聞こえな……」
「――だから、今日は――」



―――――フェリオ。



「見逃してあげるよ」




――――あの時殺してくれてれば、こんなに苦しまなくて済んだのに。




<つづく>